第 4 章 衝突回避減速度に基づく前方衝突警報 システムが運転行動に与える影響 *システムが運転行動に与える影響*
2) 本研究で提案する DCA-FCWS
4.2.2 TTC に基づく FCWS (TTC-FCWS)
本実験では,DCA-FCWSの有効性を評価すべく,FCWSを提示しない条件(システム 無し条件)との比較に加えて,代表的な衝突リスク評価指標であるTTC (=−xr/vr)に基 づくFCWS(以下,TTC-FCWS)との比較を行う.先行研究[3]においても,TTCに基 づくFCWSとの比較が行われたが,TTCが閾値(4.0[s])を下回った場合に警報音を提示 するのみで,TTCの視覚情報提示を行っていない.
図4.2 (c)に,本実験で用いるTTC-FCWSの表示系を示す.中央の橙色のバーはTTC
の値を表すが,バーの伸びる方向および警報閾値のラインをDCA-FCWSと合わせるた め,下端と上端をそれぞれ12, 0[s]とした.先行研究と同じく,TTCが4.0[s]を下回って いる間,警報音が提示される.
2改良型DCAではドライバの反応時間内は自車両が現在の加速度を維持すると仮定するため,減速を開 始すると同時にDCAの値が急激に低下する(3.3.2節のシミュレーション結果を参照のこと).
Preceding vehicle Parallel-running vehicle
This area turns yellow when theinter-vehicular distance is too long
(a) (b)
図4.3: Experimental conditions
4.2.3 実験条件
実験参加者は20代および30代の男性12名,女性4名の計16名(20∼36歳,平均年齢 26.1歳)であり,実験前のインフォームドコンセントにより実験参加の同意を得ている.
実験コースは全長約6.0[km],幅7.0[m]の片側2車線で一方通行の直線道路であり,路面 摩擦係数は0.6と設定した.自車両はコースの左側車線を走行し,前方に先行車が走行す る.また,先行車にやや遅れて並走車が右側車線を走行する(図4.3 (a)).
実験参加者は4.2.5節で後述する3種類の走行条件ごとにコースを3回走行する.その 間,先行車は以下に示す四つのパターンで減速する.
・パターン1: 停止状態から80[km/h]まで加速した直後に0.6[G]で急減速
・パターン2: 停止状態から50[km/h]まで加速した直後に0.6[G]で急減速
・パターン3: 50[km/h]の等速走行が60秒以上続いた後に0.6[G]で急減速
・パターン4: 50[km/h]の等速走行が60秒以上続いた後に0.4[G]で急減速
各減速パターンはランダムな順番で2回ずつ発生し,計8回の危険事象を評価対象区間 とする.ただし,自車両が先行車から離れすぎている場合には減速パターンが発生しない ように設定した.評価対象区間以外では,先行車は0.1 ∼ 0.3[G]の範囲で加減速を行う.
先行車の最高速度は80[km/h]である.1走行条件につき,先行車は発進と停止を計18回 繰り返すが,先行車が停止状態から一定速に達するまでの加速方法は以下のように統一 した.
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・0 ∼50[km/h]: 1.5[m/s2]
・50 ∼80[km/h]: 1.0[m/s2]
なお,加速中に先行車から離れすぎた場合には,先行車停止状態からやり直しとなる.
4.2.4 教示内容
実験参加者には以下のように教示した.
1)左側車線を走行し,先行車に追従すること 2)危険な事象に対しては適切な回避行動を行うこと 3)並走車に割り込まれない程度の距離で走行すること 4)運転に支障がない範囲で,できるだけ暗算課題を行うこと
上記の3)について,先行車から離れすぎている場合には図4.3 (b)に示すようにメータ 画面右端を黄色に光らせ,「この表示が出た場合には加速して先行車に近づくこと」と付け 加えた.4)については,2秒おきにランダムに発声される1 ∼9までの数字を2回ごとに 足し算し,その和を口頭にて答えさせる暗算課題を課した.
4.2.5 実験手順
シミュレータ環境と前節で述べた実験条件に慣れるための練習走行を行った後に,以下 の3条件について実験走行を行う.1走行条件につき,走行時間は約25分である.
条件1(システム無し条件): FCWSを提示しない 条件2(TTC提示条件):TTC-FCWSを提示する 条件3(DCA提示条件):DCA-FCWSを提示する
順序効果の低減を図るために,実験参加者を4群に分けて,群ごとに実験順序を変えた.
実験参加者 1 ∼ 4 : 条件1 → 条件2→ 条件3 実験参加者 5 ∼ 8 : 条件1 → 条件3→ 条件2 実験参加者 9 ∼ 1 2 :条件2 → 条件3→ 条件1 実験参加者 1 3∼1 6 : 条件3 → 条件2→ 条件1
FCWSを提示する条件2, 3では,走行前にFCWSについて実験者が説明を行い,FCWS に慣れるための練習走行を行った.ただし,FCWSの説明は「衝突の危険性が高いほど バーが上に向かって伸びる」,「赤い線を超えると警報が鳴る」などFCWSの動作につい て説明するものであり,TTCおよびDCAの物理的な意味,FCWSの具体的な活用方法 などは説明していない.練習走行では,表示系および警報の動作について自動走行による デモを見せた後に,実験参加者自身の操作で走行を行わせた.各条件での走行ごと,およ び実験終了後に4.4節で述べるアンケートを実施した.