第 4 章 衝突回避減速度に基づく前方衝突警報 システムが運転行動に与える影響 *システムが運転行動に与える影響*
2) 本研究で提案する DCA-FCWS
4.4 実験結果と考察 : アンケートデータ
62 第4章 衝突回避減速度に基づく前方衝突警報システムが運転行動に与える影響
これらの実験参加者については,枠が出ないようにPDCAを低く抑える運転行動が先 行車との車間距離の維持に貢献し,結果として衝突回数の減少につながった可能性が高い といえる.4.2.1 1)項のDCA-FCWSを用いた先行研究[3]の実験においても,一部の実験 参加者がPDCAを低く抑えるような運転行動をしており,本研究で提案したDCA-FCWS でも同様の効果が得られたものと考えられる.ただし,これら4名を除く12名の実験参 加者の衝突回数の平均は,システム無し条件:2.42, TTC提示条件:2.92, DCA提示条件:
1.75であり,上述の4名と比較してDCA提示条件での衝突回数が多くなっているが,両 グループのDCA提示条件における衝突回数に統計的な有意差は認められなかった.
Q.2-c: どちらのシステムが危険をより正しく知らせているか
Q.2-d: どちらのシステムの方が警報のタイミングが適切か
Q.2-d-2: dについて,選択の理由
Q.2-e: 現実の運転では,どちらのシステムを利用したいか
Q.2-e-2: eについて,選択の理由
なお,質問Q.2-b ∼ eについては,−2: TTC-FCWS ∼ 0: どちらともいえない ∼ 2:
DCA-FCWSの5段階とした.
4.4.2 FCWSについての評価
図4.9は,質問Q.1-c, dの結果について,評価の対象ごとに全実験参加者の平均を示し
たものである.質問Q.1-cに関して,DCA-FCWSの警報とTTC-FCWSの警報との間に 有意な差が見られた.すなわち,多くの実験参加者がDCA-FCWSの警報の有用性を評価 しており,このことは4.3.2節においてDCA提示条件での警報反応時間がTTC提示条件 に比べて長いという結果を反映したものと考えられる.
質問Q.2-aについて,16名のうち12名の実験参加者が「違いを感じた」(7名)または
「少し違いを感じた」(5名)と回答しており,多くの実験参加者が両FCWSの違いを感じ ていたといえる.図4.10は,質問Q.2-b∼eの結果について,質問項目ごとに評点の人数 分布を示したものである.質問Q.2-b, eについては回答が二極化しており,質問Q.2-c, d については評点2が多い.すなわち,表示系のわかりやすさ,実際に利用したいか,とい う観点では実験参加者によって評価が分かれているが,リスク評価の適切さという観点で
はDCA-FCWSが優れているという回答が多いことがわかる.
4.4.3 自由記述
1) FCWS提示の有無について
質問Q.1-bについて,システム無し条件での走行を最後に行った8名の実験参加者のう
ち2名が,システム無し条件での走行について以下のように回答した.
実験参加者13: 「システム有りの場合に比べて先行車および並走車に注意できた」
実験参加者15: 「システム有りの場合に比べて走行しやすかった/システムを潜在的に 煩わしく感じていたのかも知れない」
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1 2 3 4 5 6
TTC_alarm DCA_alarm
Questionnaire score
Question:
About:
c d
* *:p<.05
c d
1 2 3 4 5 6
TTC_bar DCA_bar DCA_frame
Questionnaire score
Question:
About:
Question:
About:
c d c d c d
(a) (b)
図4.9: Questionnaire score Q.1-c, d
0 1 2 3 4 5 6 7 8
b c d e
Frequency
Score:
Question:
-2 -1 0 1 2 -2 -1 0 1 2 -2 -1 0 1 2 -2 -1 0 1 2
図4.10: Questionnaire score Q.2-b∼e
実験参加者15は質問Q.1-aについて,システム無し条件では「危険を感じなかった」と 回答しており,他の2条件よりも低い評点になっている.これらの実験参加者については,
TTC提示条件およびDCA提示条件におけるFCWSの提示を煩わしいと思い,FCWSを 提示しない方が運転しやすいと感じていたといえる.
2) FCWSの比較
図4.9における質問Q.1-dの結果より,実験参加者の多くは適切な運転行動を取ること ができたと考えられる.実際,質問Q.1-d-2ではTTC提示条件,DCA提示条件ともに多 くの実験参加者が警報またはバーに対する反応(警報が鳴ったらブレーキを踏む,バーが 出たらブレーキを踏む,など)を報告している.
その中で,DCA提示条件で以下のような回答が得られた. 実験参加者4, 9, 14: 「バーの色が青色になるようにした」
実験参加者3, 5, 11, 15: 「枠が出たら車間距離を取った」
これらの実験参加者は,FCWSが提示する情報に基づいて独自に決定した具体的な基準 に従って運転していたことになる.
一方で,TTC提示条件では以下のような回答が得られた.
実験参加者4: 「システムを利用せず,自らの距離感などで停止した」
実験参加者15: 「警報の鳴る頻度が多く,そのつどブレーキをかけた」
これらの実験参加者はTTC-FCWSが提示する情報が適切でないと感じており,FCWSが 提示する情報に対して運転行動の目安となるものを見出せなかったと考えられる.
つづいて,質問Q.2-e-2の結果について述べる.質問Q.2-eでTTC-FCWSを選択した 実験参加者(評点−1,−2)からは,以下のような回答が見られた.
実験参加者5, 7, 10: 「表示内容が単純でわかりやすい」
実験参加者13: 「(DCA-FCWSの)バーの色を判断する余裕がない」
さらに,実験参加者5は質問Q.2-d-2において,「DCA-FCWSは複雑すぎて運転者の補助 に向かない」と回答している.
一方で,質問Q.2-eでDCA-FCWSを選択した実験参加者(評点1, 2)からは,以下の ような回答が得られた.
実験参加者1: 「DCA-FCWSでは衝突することはなかった/警報のタイミングも良い」
実験参加者4: 「自分でも危険な状態なのか安全な状態なのか判断でき,運転しながら技 術向上に励める」
実験参加者9: 「運転が楽だった/バーの色が変わる表示もわかりやすかった」
実験参加者15: 「TTC-FCWSはむしろ危険」
この中で実験参加者15は,質問Q.2-d-2において「TTC-FCWSの警報ではタイミングが 遅すぎる」と回答している.
以上より,「現実の運転ではどちらのシステムを利用したいか」という質問Q.2-eにおい
てTTC-FCWSを選択した実験参加者は,TTC-FCWSの表示系が単純である,あるいは
DCA-FCWSの表示系が複雑であるという理由でTTC-FCWSを選択していると考えられ,
リスク評価の適切さという観点では選択していないことがわかる.
それに対して,DCA-FCWSを選択した実験参加者はDCA-FCWSのリスク評価が適切 であることを選択の理由としている.すなわち,4.4.2節で述べたようにDCA-FCWSの 警報は有用性が高いことに加え,DCA-FCWSの表示系には運転行動の目安となるものが
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存在し,これらの活用により衝突を回避できたことが,質問Q.2-eにおける回答結果につ ながったと考えられる.とくに,実験参加者4はDCA-FCWSについて「運転しながら技 術向上に励める」と回答しており,DCA-FCWSの有用性を高く評価している.