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第 5 章 衝突回避減速度の視覚情報提示法に関 する実験的考察する実験的考察

5.5 実験結果と考察:走行データ

0 2 4 6 8

w/o Bar WSD

Number of collisions

* *

Condition:

*:p<.05

図5.2: Number of collisions

0 1 2 3 4

Pattern 1 Pattern 2 Pattern 3 Pattern 4

Number of collisions

w/o Bar WSD w/o Bar WSD w/o Bar WSD w/o Bar WSD Condition:

Pattern:

図 5.3: Number of collisions of each pattern

突リスク評価は,常に正しいとは限らない」と付け加えた.ただし,練習走行中はすべて 正報とし,欠報は発生しない.実験の最後に5.6節で述べるアンケートを実施した.

76 5 衝突回避減速度の視覚情報提示法に関する実験的考察

0.00 1.00 2.00 3.00

w/o Bar WSD

Reaction time [s] ** *:p<.05

*

Condition:

(a)

0.00 4.00 8.00 12.00 16.00

w/o Bar WSD

Brake-on TTC [s] *

*

*:p<.05

*

Condition:

(b) 図5.4: Reaction time and brake-on TTC (All data)

いない4.すなわち,パターン2, 4は衝突の危険性が比較的高く,システムの有無により 衝突回数に差が生じたが,パターン1, 3はシステムの有無によらず衝突の危険性は低かっ たといえよう.

図5.4 (a), (b)に反応時間およびブレーキオン時のTTCの値を示す.ここで,「反応

時間」とは先行車が減速を開始してから実験参加者がブレーキを踏み込むまでの時間,

「ブレーキオン時のTTC」とはブレーキ踏み込み時のTTCとし,ブレーキペダルとア クセルペダルを踏み間違えた場合については除外した.二つの結果に対して分散分析を 行った結果,ともに走行条件の主効果が有意であり(F(2,22) = 136.00, p < .001および F(2,22) = 123.68, p < .001),多重比較の結果,システムB, W提示条件における反応時 間がシステム無し条件と比較して有意水準5%で短くなっていた.また,システムB, W提 示条件におけるブレーキオン時のTTCの値がシステム無し条件と比較して有意水準5%で 大きくなっていた.この結果は,システムの提示によって実験参加者の回避タイミングが 早まったことを意味する.なお,反応時間,ブレーキオン時のTTCともにシステムW提 示条件の方がシステムB提示条件よりも安全側の値となっているが,これらは欠報時の データを含んでいることに注意しなければならない.次節以降で,システムの正報時にお ける結果と欠報時における結果のそれぞれについて考察する.

5.5.2 システムの正報に対する結果

反応時間とブレーキオン時のTTCについて,システムB, W提示条件における正報時 のデータ(各減速パターンにつき3試行)を図5.5に示す.図5.5 (a)と図5.4 (a)を比較 すると,欠報時のデータを含まないことでシステムB, W提示条件ともに反応時間がさら に短くなっていることがわかる.ブレーキオン時のTTCについてもシステムB, W提示

4システムB提示条件において1名の実験参加者(同一人物)がそれぞれ1回だけ衝突した.

0.00 1.00 2.00 3.00

w/o Bar WSD

Reaction time [s]

Condition:

*:p<.05

* *

*

(a)

0.00 4.00 8.00 12.00 16.00

w/o Bar WSD

Brake-on TTC [s]

* *

*:p<.05

*

Condition:

(b) 図5.5: Reaction time and brake-on TTC for true alarm

0.00 1.00 2.00 3.00

Pattern 1 Pattern 2 Pattern 3 Pattern 4

Reaction time [s]

Condition:

Pattern:

w/o Bar WSD w/o Bar WSD w/o Bar WSD w/o Bar WSD

** *

* *

* *

*:p<.05

* * *

図5.6: Reaction time for true alarm

条件とも値が大きくなっている.また,両指標ともシステムW提示条件の方がシステム B提示条件に比べて安全側の値となっている.

図5.6は減速パターンごとに反応時間を示したものである.前節で述べたように,先行 車が0.4[G]で減速するパターン2, 4は衝突危険性が高く,0.2[G]で減速するパターン1, 3は危険性が比較的低い.前章では衝突警報の閾値をODCA = 4.0[m/s2]としていたが,

システムB, W提示条件における正報時のデータ(各パターンにつき36試行)を分析し たところ,仮にこの条件に基づいて衝突警報を提示する場合,パターン2, 4ではすべて の試行でブレーキ踏み込み前に警報が提示されるという結果であった.一方,パターン 1, 3においてブレーキ踏み込み前にODCAが警報閾値を超えていた試行はいずれもシス テムB提示条件の3試行(36試行中)のみであった.このことからも,ドライバにとっ てパターン2, 4とパターン1, 3では知覚される衝突リスクの量が大きく異なり,減速行 動を開始するタイミングも異なっていたと考えられる.そこで,図5.6 のデータに対し て走行条件と減速パターンの2要因の分散分析を行ったところ,交互作用が有意であり (F(6,66) = 11.35, p < .001), 走行条件の単純主効果は全てのパターンにおいて有意であっ

78 5 衝突回避減速度の視覚情報提示法に関する実験的考察

た.多重比較を行ったところ,パターン2, 3においてシステムW提示条件の反応時間が システムB提示条件に比べて有意水準5%で短くなっていた.パターン1, 4については両 条件間で有意な差は見られなかったが,システムW提示条件の方がわずかに短い.

システムBではパターン1, 3における反応時間のばらつきがパターン2, 4に比べて大 きくなっている.これは,パターン1, 3では衝突危険性が低いためにバーの伸びが小さく,

それに気付くまでに時間がかかった実験参加者が数名いたことに起因する.一方,システ ムWではODCAの値が小さくても色変化枠が表示されるために気付きやすく,いずれの 減速パターンでも実験参加者による反応時間のばらつきは少ない.

以上より,正報時には,システムB提示条件に比べてシステムW提示条件の方が衝突 回避タイミングが早まっていたといえる.メータディスプレイ内にバーを提示するシステ ムBでは,メータディスプレイの方を見て提示情報を確認する必要があるが,WSDを模 したシステムWでは視線を移さずとも確認することができる.すなわち,システムB 比べてシステムWでは衝突リスクの認知に要する時間が短くなり,結果としてブレーキ を踏み込むタイミングが早まったと考えられる.

5.5.3 システムの欠報に対する結果

システムB, W提示条件における欠報時の反応時間およびブレーキオン時のTTC(各 減速パターンにつき1試行)を図5.7に示す.図5.7 (a)と図5.4 (a)を比較すると,シス テムB, W提示条件ともに反応時間が増加してシステム無し条件よりも長くなっている.

ブレーキオン時のTTCについても同様に,システムB, W提示条件とも値が小さくなっ ている.この二つについて分散分析を行った結果,ともに走行条件の主効果が有意であり

F(2,22) = 6.72, p < .01およびF(2,22) = 12.57, p < .001),多重比較の結果,システム W提示条件における反応時間がシステム無し条件と比較して有意水準5%で長くなってい た.また,システムW提示条件におけるブレーキオン時のTTCの値が他の2条件と比較 して有意水準5%で小さくなっていた.

反応時間について走行条件と減速パターンの2要因の分散分析を行ったところ,交互作 用は認められなかった.しかし,すべての減速パターンにおいてシステムW提示条件が 最も反応時間が長く,システムB提示条件でもシステム無し条件より長くなっていること が図5.8に示されている.

図5.9は各減速パターンにおける反応時間について,システム無し条件での最大値,お よびシステムB, W提示条件の欠報時のデータを実験参加者ごとに示したものである5.各

5パターン3において実験参加者6のデータ(システムB提示条件)が欠測となっているが,これは実験 参加者6がブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えたのでデータを無効としたためである.

0.00 1.00 2.00 3.00

w/o Bar WSD

Reaction time [s]

Condition:

*:p<.05

*

(a)

0.00 4.00 8.00 12.00 16.00

w/o Bar WSD

Brake-on TTC [s]

Condition:

*:p<.05

* * *

(b) 図5.7: Results for missing alarm

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00

Pattern 1 Pattern 2 Pattern 3 Pattern 4

Reaction time [s]

Condition:

Pattern:

w/o Bar WSD w/o Bar WSD w/o Bar WSD w/o Bar WSD

図5.8: Reaction time for missing alarm

減速パターンごとに見ると,「欠報時のデータ >システム無し条件の最大値」となってい る実験参加者がシステムB, Wともに存在することがわかる.つまり,視覚情報提示シス テムを活用している状況でシステムに欠報が発生すると,システムが無い場合よりも衝突 回避タイミングが遅れてしまう恐れがある.また,パターン4を除くすべての減速パター ンにおいて,システムWの方がシステムBに比べて「欠報時のデータ>システム無し条 件の最大値」となった実験参加者の数が多くなっている.このことと図5.7, 5.8の結果を 合わせると,システムWの方が欠報時に回避行動が遅れる可能性が高いといえる.

FCWSの欠報が運転行動に与える影響について調べた研究[7]では,警報に対するドラ イバの信頼が高いほど警報への依存傾向が強くなり,欠報時において回避行動の遅れが大 きくなる可能性が示されている.上述のように,システムWの方が正報時において衝突回 避タイミングが早く,システムBに比べて有用性は高い.2.3.1 2)項で述べたように,シ ステムに対する信頼は基礎・能力・方法・目的の四つの次元から成るといわれており[17], システムの有用性は「終始一貫して,安定的かつ望ましい行動や性能が期待できること」

という能力の次元に関わる.すなわち,システムWの方が能力の次元において信頼が形 成されやすかったと考えられる.

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1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00

#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 Ave.

Reaction time [s]

w/o (Maximam) Bar (Missing) WSD (Missing) Pattern 1

Experimental participants

1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 Ave.

Reaction time [s]

w/o (Maximum) Bar (Missing) WSD (Missing) Pattern 2

Experimental participants

1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00

#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 Ave.

Reaction time [s]

w/o (Maximum) Bar (Missing) WSD (Missing) Pattern 4

Experimental participants 2.00

2.50 3.00 3.50 4.00 4.50 5.00

#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 Ave.

Reaction time [s] w/o (Maximum) Bar (Missing) WSD (Missing) Experimental participants

Pattern 3

図 5.9: Comparison of reaction time

この結果は5.3節における仮説と反するものである.システムWでは欠報が発生して もドライバが自らの判断で回避行動を取ることができると予想されたが,システムWの 方がドライバのシステムに対する信頼が高いためにむしろ危険な状況に陥る可能性がある ことを本節の結果は示している.これについては,次節で述べる主観評価の結果と合わせ て考察する.