第 8 章 安全運転評価システムの利用動機づけ を高める方策の検討を高める方策の検討
8.5 実験結果と考察:アンケートデータ
8.5.1 質問内容
SDESに関する質問項目として,5段階評価の質問a ∼ dおよび自由記述の質問a-2 ∼ c-2を設定した.
a) SDESを利用して楽しいと思ったか a-2) 質問aについて,選択の理由 b)SDESは安全運転に役立つと思うか b-2) 質問bについて,選択の理由 c)システムを実際の運転で利用したいか c-2) 質問cについて,選択の理由
d)SDESについて,各項目の運転評価がどのように行われているか(どのような運転が 各項目の点数に影響するか)が理解できたか
0 1 2 3 4 5 6
(a) Fun (b) Usefulness (a+b)/2
Self-determination (c) Motivation
Questionnaire score Group 1
Group 2
図8.3: Questionnaire score a∼c
質問aおよびbはドライバのSDESに対する興味,価値観を問うものである.本実験に おいて,SDESは自車両が停止するたびに成績を表示するため,実験参加者は自らの意思 によらずSDESを使用することになる.しかし,その過程で興味や価値を感じているほど,
「自らの意思でSDESを活用した」という感覚,すなわち自己決定感は高いと考えられる.
また,質問cはSDESの利用動機づけに関する項目である.質問dはドライバのシステム に対する理解度を問う項目であり,指標IF ∼IDのそれぞれについて個別に質問した.
上記に加えて,ドライバの安全運転に対する意識(自己決定感)に関する質問A ∼ D
(5段階評価)を設定した.
A)安全運転を楽しんでいる
B)安全運転の技術を磨くことに興味がある
C)事故や違反が嫌なだけではなく,自分にとってメリットがあるので安全運転をしている D)安全運転の技術を高めることに意義を感じる
質問A, Bは普段の運転におけるドライバの安全運転に対する興味を,質問C, Dは価値観 を問う項目であり,これらの点数が高いほど安全運転に対する自己決定感が高いと考えら れる.
8.5.2 SDESに対する自己決定感と利用動機づけの関係
図8.3に質問a ∼cの点数を示す.なお,以降の考察では質問a, bの平均点(a+b)/2を
「SDESに対する自己決定感」とみなす.これらについて群間で比較したところ,いずれも 有意な差は見られなかった.しかし,いずれの項目も2群の方が点数が高く,実験参加者 ごとのばらつきも少ないことから,アドバイス機能の有無がSDESに対する自己決定感と
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Motivation toutilize SDES
Self-determination for using SDES Group 1
Group 2
3 persons r = 0.86
図8.4: Self-determination for SDES and motivation to utilize SDES
利用動機づけに違いをもたらした可能性がある.この点については次節で詳細に考察する.
図8.4に示す散布図は,SDESに対する自己決定感(a+b)/2(x軸)と利用動機づけcの 点数(y軸)を実験参加者ごとにプロットしたものである.両者には正の相関 (r= 0.86) が見られ,SDESに対する自己決定感が高いほど利用動機づけが高くなっており,8.3.1節 の仮説1を支持する結果といえる.
質問cにおいて,1群では3名の実験参加者が「利用したくない」(1点)または「あま り利用したくない」(2点)と回答し,2群では1名が2点と回答した.これらの実験参加 者は「評価基準がわからない/運転を評価するということに抵抗感がある」(質問a-2),
「評価され続けると疲れる」(質問c-2)などと報告しており,SDESに対して興味や価値 を感じていなかったと推察される.
一方,1群では4名,2群では6名が質問cで「利用したい」(5点)または「少し利用 したい」(4点)と回答しており,これらの実験参加者は「高い点が取れると嬉しい/ゲー ムのように感じた」(質問a-2),「安全運転の基準がわかる/自分の運転の良くない点がわ かる」(質問b-2),「安全運転につながる/自分の運転に対する過信を抑えられる」(質問 c-2)などと報告した.すなわち,これらの実験参加者は,SDESに対して楽しさや有用性 を認めていたといえよう.
8.5.3 アドバイス機能が利用動機づけに与える影響
1) アドバイス機能の活用状況
図8.5は,走行S1 ∼ S3の間でアドバイス機能のスイッチ(図8.1のスイッチ2)を操 作した回数を各指標ごとに示したものである.実験参加者ごとにばらつきはあるものの,
0 5 10 15 20 25 30
2-1 2-2 2-3 2-4 2-5 2-6 2-7 2-8 2-9
Number of times
Experimental participants (Group 2)
IF IB IA ID
図8.5: Number of times using advisory function
0 1 2 3 4 5 6 7
Average (d) Understanding of SDES
Questionnaire score Group 1
Group 2 *:p<.05*
+ +:p<.10
IB IA ID
IF
図8.6: Questionnaire score d
2群のすべての実験参加者がアドバイス機能を活用しており,SDESに対する理解度に影 響したと考えられる.
2) アドバイス機能が理解度に与える影響
質問dについて,各指標ごとの点数および4指標の平均点を図8.6に示す.これらのそ れぞれについて,群(システム)を要因とする分散分析を行ったところ,2群の方が4指 標の平均点が,有意水準10%で高くなっていた (F(1,16) = 3.23, p < .10).また,指標 IDの点数も有意水準5%で2群の方が高かった (F(1,16) = 4.97, p < .05).他の3指標で は有意な差は見られなかったが,いずれも1群の方が理解度のばらつきが大きく,改良型 SDESを用いた2群の方が理解度が高い.
また,2群では4指標のいずれにおいても理解度が2点以下の実験参加者は存在しなかっ たが,1群では指標IF で2名,IBで2名,IAで1名が2点または1点と回答した.
これらは,アドバイス機能がSDESに対するドライバの理解を高めていたことを示す結 果であり,仮説2を支持している.
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Self-determination for using SDES
Understanding of SDES Group 1
Group 2
2 persons r = 0.77
2 persons
図8.7: Understanding and self-determination for SDES
3) 理解度とSDESに対する自己決定感の関係
SDESに対する理解度(4指標の平均)(x軸)とSDESに対する自己決定感(y軸)の 関係を図8.7に示す.両者には正の相関(r = 0.77)があり,理解度が高いほど自己決定感 が高くなる傾向にあることがわかる.ここで,1群では理解度が低く自己決定感も低い実 験参加者が数名存在するのに対し,2群は全体的に理解度が高く自己決定感も高いことに 注意されたい.
以上より,仮説3も支持された.仮説1, 2に関する上述の結果と合わせると,アドバ イス機能がSDESに対する理解度を高め,利用動機づけを高めていたといえる.ただし,
8.2.1節で述べたように,SDESに対する自己決定感は,安全運転に対する自己決定感の影
響を受けている可能性がある.このことについて次節で考察する.
8.5.4 安全運転に対する自己決定感とSDESに対する自己決定感の関係
安全運転に対する自己決定感(質問A ∼Dの平均)6(x軸)とSDESに対する自己決 定感(y軸)の関係を図8.8に示す.これらについても正の相関(r= 0.72)が見られるが,
1群と2群で傾向が異なっている.1群だけで見ると正の相関が見られるが (r = 0.89), 2 群では見られない(r= 0.16).
両群で傾向が異なる理由として,SDESに対する理解度の違いが影響していると考えら れる.すなわち,アドバイス機能を用いた2群は,SDESに対する理解度が高いため,安 全運転に対する自己決定感によらずSDESに対する自己決定感が高かったと推察される.
このことを考慮すると,仮説4はおおむね支持されたといえる.
6平均点は両群でほぼ同じ(1群:3.53, 2群:3.50)だが,1群の方が実験参加者ごとのばらつきが大きい.
0 1 2 3 4 5 6
0 1 2 3 4 5 6
Self-determination for using SDES
Self-determination for safe driving Group 1
Group 2
2 persons r = 0.72
2 persons
図8.8: Self-determination for safe driving and for SDES
Self-determination for safe driving
(A~D)
Understanding of SDES
(d)
Self-determination for using SDES
(a, b)
Motivation to utilize SDES
(c) .441*
.549**
.859***
R2= .74*** R2= .74***
*p<.05, ** p<.01, *** p<.001
図8.9: Relationship among self-determination, understanding, and motivation
8.5.5 総合的考察
図8.9は,1)安全運転に対する自己決定感(質問A ∼Dの平均点),2) SDESに対する 理解度(質問dの4指標の平均点),3) SDESに対する自己決定感(質問a, bの平均点),
4) SDESの利用動機づけ(質問c),のそれぞれについて関連を示したものである.1)およ
び2)を説明変数,3)を目的変数とする重回帰分析を行ったところ,決定係数はR2=.74 であり,0.1%水準で有意であった(F(2,15) = 21.12, p < .001).説明変数の標準偏回帰係 数はβ=.441, .549であり,それぞれ5%, 1%水準で有意であった.また,3)を説明変数,
4)を目的変数とする単回帰分析を行ったところ,決定係数はR2 =.74であり,0.1%水準 で有意であった(F(1,16) = 44.87, p < .001).標準偏回帰係数はβ =.859であり,0.1%
水準で有意であった.なお,安全運転に対する自己決定感がSDESに対する理解度に与え る影響についても調べたところ,決定係数がR2 =.25と低かったため,両者の関係につ いては示していない.
図より,SDESに対する自己決定感が高いほどシステムの利用動機づけは高く,システ
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ムに対する理解度に加えて安全運転に対する興味や価値観もSDESに対する自己決定感に 影響していることがわかる.これらは8.5.2∼ 8.5.4節の結果を説明するものである.