第 7 章 衝突回避減速度を用いた安全運転評価 システムが運転行動に与える影響システムが運転行動に与える影響
2) 安全運転評価システム (SDES)
7.4 実験結果と考察:アンケートデータ
7.4.1 質問内容
本節では,実験終了後に行った質問紙によるアンケートの結果について考察する.2日 目のみの質問項目として5段階評価の質問a ∼ dおよび自由記述の質問c-2を設定した.
以下に質問内容を示す.
a) SDESの安全運転成績を上げたいと思ったか b)SDESを利用して楽しいと思ったか
c)システムの利用により「安全運転をしよう」と思ったか c-2) 質問cについて,選択の理由
d)システムの利用により安全運転が身に付いたと思うか
また,実験1日目,2日目で共通の質問として以下に示す5段階評価の質問e ∼ hと,
自由記述の質問g-2, h-2を設定した.
e) SDESの成績評価は妥当だと感じたか f )システムは役に立ったと思うか g)システムが煩わしいと感じたか g-2) 質問gについて,選択の理由 h)システムを実際の運転で利用したいか h-2) 質問hについて,選択の理由
0 1 2 3 4 5 6
Day 1 Day 2
a b e
Questionnaire score
図7.27: Questionnaire score a, b, e
0 1 2 3 4 5 6 7
(Group 1)FCWS FCWS
(Group 2) SDES
(Group 2) FCWS
(Group 1) FCWS
(Group 2) SDES (Group 2)
c d
Questionnaire score
*:p<.05* + +:p<.10
図7.28: Questionnaire score c, d
質問a, b, eは2群のみの項目であり,質問a, b, eおよびc-2以外はFCWSとSDESのそ れぞれについて個別に質問した.
7.4.2 SDESが運転行動に与える影響
質問a, b, eの結果を図7.27に示す.いずれの質問においても点数は高く,2群の実験参 加者がSDESの評価を妥当と感じて積極的に安全運転の成績を上げようとしていたことが わかる.このことは7.3.1項の結果と対応しており,適切なフィードバックにより成績を 上げたいという動機づけが生じて,自発的な安全運転が促されたといえる.
図7.28に質問c, dの結果を示す.両質問ともSDESの点数が高く,SDESが安全運 転に対する意識を高めるとともに運転技術の向上に役立っていたことがわかる.2群で は質問dにおいてSDESの点数がFCWSに比べて有意水準10%で大きくなっていた ( F(1,11) = 3.48, p < .10 ).
122 第7章 衝突回避減速度を用いた安全運転評価システムが運転行動に与える影響
また,2群の実験参加者12名のうち4名が質問c, dでFCWS,SDESともに5点と回 答し,うち2名が質問c-2において「FCWSが作動する前に予測できるようになりたいと 思った/SDESで自分の運転の良し悪しがわかったので,もっと良くしたいと思った」な ど,FCWSとSDESがともに安全運転の意識を高めていたことを述べている.
一方,1群の実験参加者のうち4名が「過信してスピードを出しやすくなる」,「システ ムに頼ってしまおうという気持ちが生じた」など,FCWSに依存していたことを報告し たのに対し,2群ではそのような回答はみられなかった.両質問のFCWSの点数について 群間で比較したところ,質問cにおいて2群の点数が有意水準5%で大きくなっており( F(1,22) = 4.63, p < .05 ),両群間でFCWSに対する意識に違いがあったことを示唆して いる.
7.3.2項で述べた自由走行区間における運転行動の違いを踏まえて以上の結果を考察す
ると,SDESの提示が2群の実験参加者のFCWSへの依存を抑制していた可能性が考え られる.ただし現時点では一仮説にすぎず,SDESがドライバのFCWSに対する意識に 影響する可能性については今後検証する必要がある.
7.4.3 SDESについての評価
図7.29に質問f ∼ hの結果を示す.各質問においてシステムや群による違いはほとん ど見られないが,質問gやhにおいてSDESのばらつきがやや大きくなっている.SDES について,2群の実験参加者のうち2名が2日目の質問hで「あまり利用したくない」(2 点)と回答した.これら2名の実験参加者は質問h-2で下記のように回答した.
参加者2-3: 「実際の運転では自分に比較的自信があり,現状で満足している」
参加者2-6: 「評価を気にしすぎて疲れる」
さらに,参加者2-6は質問gにおいて「少し煩わしいと感じた」(4点)と回答し,質問g-2 で「成績が気になってしまう」と回答している.参加者2-3も1日目の質問g-2で同じ意 見を述べている.他にも3名の実験参加者が,質問g-2やh-2で「運転中は成績表示を見 る余裕がない」,「評価が低いとその理由を余計に考えてしまう」など成績の確認を負担に 感じていたと報告した.
一方,これらの実験参加者以外の多くがSDESを肯定的に評価した.2日目の質問hで
「利用したい」(5点)と4名が回答し,その理由として質問h-2で下記のように回答した.
参加者2-2, 2-5:「自分の運転がより良くなる(運転技術の問題点を知ることができる)」
0 1 2 3 4 5 6
(Group 1)FCWS FCWS
(Group 2) SDES
(Group 2) FCWS
(Group 1) FCWS
(Group 2) SDES
(Group 2) FCWS
(Group 1) FCWS
(Group 2) SDES (Group 2)
f g h
Questionnaire score
Day 1 Day 2
図7.29: Questionnaire score f∼ h
参加者2-7, 2-8: 「安全運転を心がけるようになる」
これらの実験参加者はSDESの成績を見て自身の運転の問題点を知り,安全運転の技術を 高めようとしていたといえる.