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第 5 章 衝突回避減速度の視覚情報提示法に関 する実験的考察する実験的考察

5.6 実験結果と考察:アンケートデータ

この結果は5.3節における仮説と反するものである.システムWでは欠報が発生して もドライバが自らの判断で回避行動を取ることができると予想されたが,システムWの 方がドライバのシステムに対する信頼が高いためにむしろ危険な状況に陥る可能性がある ことを本節の結果は示している.これについては,次節で述べる主観評価の結果と合わせ て考察する.

82 5 衝突回避減速度の視覚情報提示法に関する実験的考察

0 1 2 3 4 5 6 7 8

b c d

Fr equency

Score:

Question:

-2 -1 0 1 2 -2 -1 0 1 2 -2 -1 0 1 2

図5.10: Questionnaire score bd

5.6.3 自由記述 1) 視認負荷について

質問bにおいてシステムWを選択(評点1, 2)した9名の実験参加者のうち,7名が質 問dでもシステムWを選択している.これら7名の実験参加者について,質問d-2では 以下のような回答が得られた.

実験参加者1, 4, 6: 「速度計の方を見なくて良い(前を見ていられる)」

実験参加者2: 「衝突の危険性が楽にわかる」

実験参加者3, 9: 「先行車の接近に気付きやすい」

実験参加者12: 「視野に入りやすい」

これらの実験参加者は,WSDを模したシステムWの方が視認負荷が少なく運転しやすい と感じたために,質問dにおいてもシステムWを選択したと考えられる.

一方,質問bでシステムWを選択し,質問dでシステムBを選択(評点1,2)した 2名の実験参加者は質問d-2で以下のように回答した.

実験参加者5: 「システムWは視界に入りすぎる」

実験参加者8: 「システムBの方がブレーキの踏み込み量がわかりやすい」

これらの実験参加者は,システムWの方が視認負荷は小さいと感じたものの,システムB の方が運転の妨げにならない,あるいは情報を読み取りやすいと感じていたと考えられる.

以上より,いくつか課題はあるが,多くの実験参加者がWSDを用いたシステムWにつ いて「表示を確認するのが楽だった」と回答しており,それを理由として質問dでも「シ

ステムWを利用したい」と回答したといえよう.これらは,システムWの方が衝突リス クの認知に要する時間が短く,システムBと比較して衝突回避タイミングが早いという 5.5.2節の結果とも整合する.

2) システム欠報時の危険性について

質問cでは,4名の実験参加者(以下,グループI)がシステムBの方が危険と回答(評−1,−2)し,質問c-2で以下のように回答している.

実験参加者1: 「システムBは注意が分散される」

実験参加者3, 6, 10: 「システムBはメータの方を見る必要がある/システムWでは前 方を見ているので,目で判断できる」

一方で,質問cでシステムWの方が危険と回答(評点1, 2)した5名の実験参加者(以 下,グループII)からは,以下のような回答が得られた.

実験参加者4, 5, 12: 「システムWは,より見えやすい分,システムを過大評価してし まう」

実験参加者7: 「枠に頼りすぎてしまう」

実験参加者11: 「システムBの方が表示系を見すぎることがない」

実験参加者11は質問dでシステムBを選択しており,質問d-2で「システムBのリスク 評価に間違いがあってもシステムWほど危険ではない」と回答している.

システムBの方が危険と回答したグループIの4名は,システムWでは前方を向いた まま表示を確認できるため,欠報時においても安全性が低下しないと感じていたといえる.

これに対してシステムWの方が危険と回答したグループIIの5名は,システムWは視認 負荷が少ないためにかえってシステムへの過度の依存が生じてしまうと報告している.

図5.11(a), (b)は欠報時におけるブレーキオン時のTTCのグループごとの平均を示す.

グループIの実験参加者は,システムWの方がシステムBに比べ欠報時においても安全 性が損なわれないと感じていたにもかかわらず,欠報時におけるブレーキオン時のTTC にシステム間で有意な差は見られない.一方,グループIIにおいてはシステム間で有意水 準5%で差が見られ,主観評価通りにシステムWの方が危険という結果になっている.こ の結果は,グループIIの実験参加者がシステムWに過度に依存したことで欠報時に回避 行動が遅れてしまったことを示唆しており,5.5.3節の結果を説明するものといえる.

84 5 衝突回避減速度の視覚情報提示法に関する実験的考察

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

Bar WSD

Brake-on TTC [s]

Condition:

(a) Group I

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00

Bar WSD

Brake-on TTC [s] **:p<.05

Condition:

(b) Group II 図 5.11: Brake-on TTC for missing alarm (Group I and II)