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(f) GPLはシュリンクラップ契約やクリックオン契約に比較して契約の効力に疑問を 抱かせるような問題は少ない(すなわち、契約が有効と判断される可能性が高い)。
(e)及び(f)の、日本においてGPLは有効な契約と認められる可能性が高く、したがっ てソースコードの提供等を判決において命じることが可能と考えられる点については、当 リーガルタスクグループも同様の見解である。
しかしながら、(a)は、FSFないしMoglen 教授の見解を誤解したものである。
(a)のMoglen 教授が「GPLは契約ではなくライセンスである」と述べたという点であ
るが、これは“Enforcing the GNU GPL”中の”Licenses are not contracts”(ライセンスは契 約ではない)という文章を指していると思われる。しかし、この”Licenses”はGPLのことで はなく、商用ライセンスを含む「ライセンス一般」を意味していることが文脈上明らかで ある[105]。Moglen 教授は、この文章に続いて、「著作物の利用者は、そのライセンスの制 限を守ることが義務付けられているが、それは利用者がそう合意したからではなく、ライ センスが許容している範囲を超えて行為する権利を有していないからである」と述べてい る。さらに続けて、「フリーソフトウェア運動は、プログラムの入手、インストール、使用 等の行為は利用者が当然保有すべきものと考えており、ライセンスの対象とされることさ え望まない[106]。なので、GPLソフトウェアを利用する者はみな、ライセンスなど不要なの であり、ライセンスの承諾はいらないのである。」と述べている。
要するに、Moglen 教授がこの部分で述べているのは、「ライセンス条件の範囲内でプロ グラムを使用することは、ライセンス契約に合意しなくても可能である」ということであっ て、「ライセンスと契約は法的に異なるものである」とか、「GPL は契約ではなくライセン スである」といったことは一切述べていない。
“Enforcing the GNU GPL”には、Moglen 教授が「GPLは“enforceable”(執行可能)で ある」と考えていることが繰り返し明記されている。そして、法廷闘争に至ることなく、
事前の交渉により、度々違反者に対して “enforce”したとも述べられている。
[105]
”Licenses”と複数形になっていることや、”the License”のように定冠詞も付されていな いことからして、これがGPLを意味していないことは明らかである。
[106]
GPLv3第2条は「本許諾書は、本プログラムを改変することなく実行することは何ら
の制約を受けることなく可能であることを明示的に確認する」と定め、「実行」に関して は、「著作権を許諾する」という表現は用いられていない。また、同9条も「本プログラ ムの受領又は実行については、本許諾書の承諾を必要としない」と定め、「受領·実行」に ついては許諾が不要であるとしている。
これは、上記の考え方に基づくものである。FSFの考え方によれば、プログラムの実行 に関する権利はいわば天賦の権利として認められるべきものであり、ライセンスで許諾し うる権利に含まれるべきではないのである。
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また、「ライセンスなくしては何人も再配布することはできないから、GPLソフトウェア を再配布しようとする者はGPLを間違いなく承諾したと考えることができる」とも述べら れている。このことは、契約が申込みと承諾により成立するわが国の民法が準拠法となる 場合にも、GPLが契約として成立すると考える根拠となり得る。
一方、“Enforcing the GNU GPL”の冒頭には、“enforceability”に関する議論がマイクロソ フトのGPLに対する批判に端を発したものであるとされ、その批判に対し「GPLに基づく 権利行使は、私がいつも行っていることだ」と反論している。
以上のように、Moglen 教授の意見は「GPL は“enforceable”(執行可能)である」とい うものである。
また、GPLが契約か否かという点に関して、GPLv3第9条は、「GPLv3プログラムの受 領·実行については(ライセンスの有無にかかわらず認められる行為なので)承諾は不要だ が、プロパゲートと改変については承諾が必要である。GPLv3 プログラムをプロパゲート または改変した場合は GPLv3 を承諾する意思表示をしたことになる」旨を定めている。
「GPLv3の承諾の意思表示をした」(you indicate your acceptance of this License)という 表現は、申込みと承諾の意思表示の合致により契約が成立するというわが国の民法の考え 方に馴染むものであり、GPLv3が契約であると解し得る根拠のひとつといえる。
以上から分かるように、「GPL は“enforceable”か」という問題は、要するに「GPL は、
準拠法国において契約の成立要件を満たすか」という問題であり、単純な問題にすぎない。
契約とは異なる特別な法概念である「宣言」なるものを云々するから、かえって分かりに くくなっているだけのことである。
わが国の民法が準拠法の場合でいえば、GPL プログラムのコンベイにより配布者と受領 者の間にGPLに基づく契約が成立すると認められれば、受領者は、GPLを遵守すべき契約 上の債務を負うことになるから、当然のこととしてその債務に含まれるソースコードの提 供義務を負うことになる。これに違反し、違反者が訴訟で敗訴した場合、間接強制の方法 等によりソースコードの提供を命ずる判決も可能と考えられる。
これに対して、契約の成立が認められなければ、配布者は、不法行為の一種である著作 権侵害に基づく損害賠償を請求し得るに止まり、GPL に定められた義務の履行を請求する 権利は有しない。
このように、この問題は、「GPL を契約と考えれば、ライセンサは改変物のソースコード の公開を要求できる可能性があるのに対し、宣言と考える構成ではソースコードの公開ま で求めることはできない」というようななじみのない問題の定立の仕方をする必要はなく、
単に「準拠法国において、GPL は契約として成立しうるか」だけを考えれば済む問題であ る。
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なお、GPLv3には、GPLv3が契約か否かに関する直接的な規定は含まれていない。これ
は、契約の成立要件の充足性などの問題は、それぞれの準拠法に基づいて判断されるべき 問題だからである。
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【別紙1】
GPLv3 対訳
Version 3, 29 June 2007 バージョン3,2007年6月29日
Copyright (C) 2007 Free Software Foundation,
Inc. <http://fsf.org/>
Everyone is permitted to copy and distribute verbatim copies of this license document, but changing it is not allowed.
Copyright © 2007 Free Software Foundation, Inc.
本ライセンス文書の忠実な複製と配付は許されていま すが,変更は許可されていません。
Preamble 前文
1 The GNU General Public License is a free,
copyleft license for software and other kinds of works.
GNU 一般公衆利用許諾書は,ソフトウェアおよびそ の他の著作物について,フリーかつコピーレフトを主 張するライセンスです。
2 The licenses for most software and other
practical works are designed to take away your freedom to share and change the works.
By contrast, the GNU General Public License is intended to guarantee your freedom to share and change all versions of a program‐‐to make sure it remains free software for all its users. We, the Free Software Foundation, use the GNU General Public License for most of our software; it applies also to any other work released this way by its authors. You can apply it to your programs, too.
ソフトウェアやその他の実用的な著作物を対象とする ライセンスの大半は,著作物を多くの者で共有したり 著作物を変更する自由を奪い去るように作られていま す。これに対して,GNU 一般公衆利用許諾書は,プ ログラムの全てのバージョンを共有し変更できる自由 を保証すること,すなわち,ソフトウェアがユーザ全 てにとってフリーであり続けることを保証することを 目的としています。私たちフリーソフトウェア財団
(Free Software Foundation)は,私たちのソフトウェ アの大半にGNU一般公衆利用許諾書を適用していま す。他の著作物についても,作成者が私たちと同様の 方法で著作物を公開するのであれば,GNU 一般公衆 利用許諾書を適用することが可能です。あなたのプロ グラムにも適用することができます。
3 When we speak of free software, we are
referring to freedom, not price. Our General Public Licenses are designed to make sure that you have the freedom to distribute copies of free software (and charge for them if you wish), that you receive source code or can get it if you want it, that you can change the software or use pieces of it in new free programs, and that you know you can do these things.
私たちがフリーソフトウェアについて語るとき,私た ちは自由について言及しているのであって,価格は問 題にしていません。私たちの一般公衆利用許諾書は,
フリーソフトウェアの複製物を配付すること(有償も 可),ソースコードを受領するか後から入手できること,
ソフトウェアを修正すること,またはその一部を別の フリーなプログラムで利用できること,そしてこれら が可能であることをあなたが知り得ること,が確保さ れるよう構成されています。
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4 To protect your rights, we need to prevent
others from denying you these rights or asking you to surrender the rights. Therefore, you have certain responsibilities if you distribute copies of the software, or if you modify it: responsibilities to respect the freedom of others.
あなたの権利を守るため,他者が上記のあなたの権利 を否定したり,権利の放棄を要求することを防ぐ必要 があります。そのために,あなたがソフトウェアの複 製物を配付または改変する場合,あなたには一定の責 任が発生します。それは,他者の自由を尊重するとい う責任です。
5 For example, if you distribute copies of such a
program, whether gratis or for a fee, you must pass on to the recipients the same freedoms that you received. You must make sure that they, too, receive or can get the source code.
And you must show them these terms so they know their rights.
例えば,本許諾書が適用されるプログラムの複製物を 配付する場合,無償・有償に関わらず,あなたは複製 物の受領者に,あなたが受け取ったのと同じ自由を承 継しなければなりません。あなたは,彼らもまた,ソー スコードを受領するか後から入手できることを保証し なければなりません。そしてあなたは,彼らがこれら の権利について知ることができるよう本許諾書の条項 を彼らに明示しなければなりません。
6 Developers that use the GNU GPL protect
your rights with two steps: (1) assert copyright on the software, and (2) offer you this License giving you legal permission to copy, distribute and/or modify it.
GNU GPLを利用する開発者は,あなたの権利を2段
階の手順を踏んで守ります。その手順とは,(1)ソ フトウェアに関する著作権を主張し,(2)ソフトウェ アを複製,配付,または改変する法的な許諾をするも のである本許諾書をあなたに提示する,というもので す。
7 For the developersʹ and authorsʹ protection,
the GPL clearly explains that there is no warranty for this free software. For both usersʹ and authorsʹ sake, the GPL requires that modified versions be marked as changed, so that their problems will not be attributed erroneously to authors of previous versions.
開発者や作成者を保護するため,GPLは,このフリー ソフトウェアには何らの保証もなされないことを明確 にしています。ユーザと開発者両方の便宜のため,GPL は,改変されたバージョンには改変された旨を表記す るよう要求しており,これにより,改変されたバージョ ンの問題が,誤って以前のバージョンの作成者に帰責 されることがないようにしています。
8 Some devices are designed to deny users
access to install or run modified versions of the software inside them, although the manufacturer can do so. This is fundamentally incompatible with the aim of protecting usersʹ freedom to change the software where changes are possible. The systematic pattern of such abuse occurs in the area of products for individuals to use, which is precisely where it is most unacceptable.
Therefore, we have designed this version of the GPL to prohibit the practice for those
一部の機器は,内蔵されているソフトウェアを改変し てインストールしたり実行することが,メーカには可 能なのにユーザには不可能なように設計されています。
これは,改変が可能な場合にユーザがソフトウェアを 改変できる自由を守る,という GPL の目的と根本的 に相容れません。このような技術の濫用は,往々にし て個人向け製品の分野で見られるものですが,まさに このようなものこそ,こうした行為が最も容認しがた い分野です。そこで私たちは, GPLの本バージョン で,そうした製品について上記の行為を禁止するよう にしました。もし同種の問題が他の領域にまで相当程