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FOSS ライセンスの係争事例

ドキュメント内 GPLv3 逐条解説 (ページ 155-159)

1.1. はじめに

本節では、FOSS ライセンス(主にGPL だがそれに限定しない)に関して過去に起きた 係争のうち重要と思われるものを紹介する95。 

実際の係争事例を知ることで、どのような場合にライセンス違反の問題が生じるリスク があるのか、そして係争の種を蒔くことのないようにするにはどのような対応が必要かを 理解する参考となるであろう。 

以下では「原告」「被告」という表現は避け(反訴を含むものが多いため、この表現では 混乱を招くおそれがある)、FOSS の知的所有権保有者の方を先に、侵害者(であると主張 された者)を後に記載してある。 

なお、現時点においては欧米の事例しかないために、日本においてFOSSライセンスが法 的にどう扱われるかについては不明な点も多い。 

 

1.2. MySQL に関する係争

2002年、MySQL ABは、著作権侵害と商標権侵害に基づきProgress NuSphere 社を米国 マサチューセッツ州連邦地裁に提訴した。MySQL AB の主張によれば、NuSphereはGemini プログラムをMySQLサーバにリンクすることでMySQLの著作権を侵害していた。同年2 月27日のPatti Saris判事の予備尋問後、当事者らは MySQL の著作権侵害を認める方向で 和解に至った。尋問でSaris 判事はGPL に強制力が無いと考える理由は「見当たらなかっ た」と述べたとされる。 

 

本件は、対象のソフトウェアがʺNuSphere MySQL Advantageʺという名称であることか らもわかるように、その中に MySQLのコードが含まれている(かつ MySQL AB からG PL以外のライセンスを受けていない)ことは明白である。 

実際、ネット上の記事によると、 FSF の当時の主席法律顧問のEben Moglen氏は「これ は、GPL違反のよくあるケースだ」と述べているとのことである96。 

95

GPLに関する(主に法的な)情報を集めたサイトとしてhttp://www.groklaw.net/staticpag es/index.php?page=20050131065655645がある。 

96本件に関しては、http://www.theregister.co.uk/2002/02/27/gpl_enforcement_goes_to_court/ 

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1.3. netfilter 等に関する係争

netfilter/iptablesプロジェクトは、Sitecom 社に対し、GPL条項違反を理由としたnetfilter の配付中止を求めた。Sitecomがこれを拒否した後、2004年4月、netfilter/iptablesプロジェ クトは、ミュンヘン地裁からSitecomに対する差止めの仮処分(preliminary injunction)を 獲得した。同年7月、ドイツ法廷は、この差止めをSitecomに対する最終命令(issue a written  opinion)として確認した。これと似た係争が Fortinet 社との間でもあり(こちらはinitrd が対象)、この件でも同じく差止めの仮処分を得ている。 

 

netfilter/iptablesプロジェクトがSitecomによるGPLプログラム(特にnetfilter)の使用の 事実をどのようにして知ったかについて正確なことは不明であるが、ネット上でのnetfilter  projectの発表97などを見ると、Sitecomの製品がLinuxベースのルータであることを知り、

それによりその中にnetfilterが使われていることが判明した、という可能性が考えられる。 

 

また、2006年9月6日、gpl‐violations.orgプロジェクト(上記netfilterの開発者である Harald Welte氏が中心となって運営)は、D‐LinkがLinuxオペレーティングシステムのカー ネルを使用している行為は著作権侵害に当たると主張し、D‐Link Germany GmbH社に対 し勝訴した。 

さらに、2007 年に同種の裁判がSMC社のLinux電話機に対しても起こされ、こちらも勝 訴した。98 

も参照されたい。 

97http://mail.sarai.net/pipermail/flosstoday /2004-April/000197.htmlなど 

98本件に関しては、以下のURLも参照されたい。 

・ʺGPL gains clout in German legal caseʺ(http://news.cnet.com/2100-7344-5198117.ht

ml?tag=nefd.hed) 

・netfilter vs. Sitecom事件ミュンヘン地裁仮処分命令(http://www.jbb.de/urteil_lg_mu enchen_gpl.pdf 、http://www.jbb.de/judgment_dc_munich_gpl.pdf) 

・「GPL違反で初の販売差止仮処分」(http://slashdot.jp/articles/04/04/16/0848223.shtml) 

・ʺSecond Injunction Enforcing GPL Issued in Germanyʺ(http://www.wilmerhale.co

m/publications/whPubsDetail.aspx?publication=346) 

・「GPLにドイツ裁判所からお墨付き」(http://sourceforge.jp/magazine/06/09/27/0034210) 

・Welte vs. D‐Link事件判決(http://www.jbb.de/urteil_lg_frankfurt_gpl.pdf) 

・「スカイプ、携帯電話販売でGPL違反‐‐ドイツの法廷で判決」(http://japan.cnet.com/

mobile/story/0,3800078151,20353432,00.htm) 

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1.4. Drewtech に関する係争

本件は、FOSS ライセンスが直接の争点とはなっていないが、「GPL が勝利したケース」

として参照されることがあるので、紹介しておく。 

SAE(米国の自動車技術者協会)が OBD‐II(On‐board diagnostic)の標準を策定するに あたり(後にこの仕様は EPA、アメリカ環境省、および CARB(カリフォルニア州大気環 境庁)の指定となる)、作業部会を設置した。その作業部会に参加していたDrewtech社は、

標準を策定するのと並行して、参照実装(reference implementation)のソフトウェアを作 成し、これをsourceforgeにおいてGPLで公開した。その公開に関して、SAEはDrewtech に対し、そのソフトウェアは標準の参照実装であり、著作権法における派生著作物に当た るとして、ロイヤリティを請求した。 

結果的に本件は和解が成立し、Drewtechの作成したソフトウェアは(標準の)派生著作 物ではないこと、作業部会での成果に対し知的財産権がSAEに帰属するとはいえないこと、

そして作業部会の構成員であることによって、このソフトウェア開発という著作行為が米 国著作権法における職務著作に当らないこと、などを認める結果になった。 

この裁判の過程では、参照実装がGPLで公開されていることによる法的効果が争点となっ たことはなく、たとえFOSSライセンスでなくても成立する内容となっている。99 

1.5. Wallace vs. IBM事件

Daniel Wallace氏は、Linuxに対抗するOSを開発しそれを世間に広めようと考えた。し かしながら、この分野には既にLinuxなどの優れたFOSSが存在しているために、新規の参 入は難しいと考えた。 

そこで、Wallace氏はIBMを相手取って、「Linux を無償で提供していることは反トラス ト法(日本における独占禁止法)に違反している」と訴えた。 

2005年6月30日、米国インディアナ州南部地区連邦地方裁判所は、Linuxを無償で提供 することは反トラスト法に違反しないという判決を下した。なお、Wallace氏はこの裁判の 前に、Free Software Foundationも同様の理由で訴えており、こちらの事件でも敗訴してい る。100 

99本件に関しては、”A GPL Win in Michigan  ‐ DrewTech v. SAE”(http://www.groklaw.n et/article.php?story=20050225223848129)も参照されたい。 

100本件に関しては、”Wallaceʹs  ʺMemorandum on Motion for SJʺ in Wallace v. IBM”(h ttp://www.groklaw.net/articlebasic.php?story=20050703144738557)、「特許/15 U.S.C. §1, §2 6/オープンソースソフトウェアに関するライセンス契約」(http://www.ngb.co.jp/ip_articles/

detail/148.html)も参照されたい。 

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1.6. JATLite に関する係争

パリ大審院は、2007年3月28日、Educaxionというソフトウェアの開発者である Educaffix 社に対し、そのソフトウェアがJATLiteと呼ばれる、米スタンフォード大学で開発されGPL で配布されているソフトウェアを使用するのであれば、その利用条件はGPLに従わねばな らず(つまり、一体となる部分全体のソースコード提供が義務付けられる)、それ以外の配 布条件を設定したい場合は、別途JATLiteの著作権保持者であるスタンフォード大学とそれ を可能にする契約を締結する必要があると判示した。 

なお、Educaxion はフランスジョセフフーリエ大学で作成された Baghera を元にしてお

り、Bagheraに依拠する部分に関してはGPLではない商用での配布条件をジョセフフーリ

エ大学との間で結んでいる模様である。 

 

本件は、netfilterやBusyBoxの係争とは異なり、Educaffixがまずソースを入手し、それを 再配布する場合にソースコード提供義務があるかを予め確認するために提起された係争で ある。101 

 

1.7. BusyBox に関する係争

本件は、SFLC(Software Freedom Law Center)がBusyBoxの開発者である Erik Andersen およびRob Landleyの代理人となって、Monsoon Multimedia Inc.の間で争われた事件であ る。 

訴状は 2007年9月19日に米国ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に提出され、John  E. Sprizzo判事により予審尋問がなされた。その後当事者は協議に入り、BusyBoxによる著 作権侵害を認める形で和解した。 

SFLC が代理人となって BusyBox の著作権に関して争われた係争は、他にも多数存在し ている。 

本件においてBusyBoxがMonsoon社の製品で使用されている事実が発見された経緯は、

ネット上の記事によると、BusyBoxの開発者らが製品のファームウェアアップグレードの中 にそのコードを発見したことによる102。 

 

101本件に関しては、” La licence Gnu GPL reconnue par la justice française”(http://ww w.pcinpact.com/actu/news/37313-GPL-GNU-licence-libre.htm)も参照されたい。 

102本件に関しては、「SFLC と High‐Gain Antennas が GPL 違反訴訟で和解」(http://ja pan.internet.com/busnews/20080307/12.html)、WikipediaのBusyBox の項(GPL 違反問題,  2008年12月5日確認)(http://ja.wikipedia.org/wiki/BusyBox)も参照されたい。 

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ドキュメント内 GPLv3 逐条解説 (ページ 155-159)