第 2 章 逐条解説
16. 第 13 条( GNU AfferoGPL と共に利用する場合)
‐ 128 ‐
‐ 129 ‐
16.2. 条文内容
GPLv3プログラムは、Affero GPLv3が適用されるプログラムとリンクまたは結合できる。
また、その結果作成されたプログラムを配付することもできる。
「リンクまたは結合」が許される旨規定されていることから、一つのソースファイルに
GPLv3プログラムとAffero GPLv3プログラムを混在させることは、許諾されていないと解
される。
GPLv3プログラムには引き続きGPLv3が適用されるが、作成されたプログラム全体には
Affero GPLv3の第13条が適用される。GPLv3プログラム単体でネットワーク上のインタ ラクションを提供する際、プログラムを配付しないのであればソースコードを提供する義 務はないが[86]、Affero GPLv3 プログラムとリンクまたは結合してユーザにネットワーク 上のインタラクションを提供する際は、Affero GPLv3第13条により、GPLv3プログラム についてもソースコードを提供する義務が課される。
ユーザにネットワーク上のインタラクションを提供する例としては、SFLCによれば、ウェ ブサーバ、メールサーバ、ウェブベースの対話的機能を有するアプリケーション、オンラ インゲームのサーバなどがある。
また、SFLCによれば、プログラムがユーザにネットワーク上のインタラクションを提供 するようには設計されておらず、ある実行環境でたまたまこのインタラクションを提供す るように動作する場合は、本条に該当しない。SSHやremote X session等がこれに当たる。
16.3. GPLv2との異同
Affero GPLv3を「矛盾しないライセンス」とするために、GPLv3で新設された規定であ
る。
16.4. 参考
GPLにおける対応ソース提供義務は、GPLプログラムを「配付」する際に課される。GPL 適用プログラムを使用してユーザにネットワークサービスを提供する際、GPL適用プログラ ムが「配付」されないのであれば[87]、仮にそのプログラムが改変されていたとしても、ソー
[86]コンピュータネットワーク上の単なるやりとりであってプログラムの複製物の伝送を伴 わない場合は、「コンベイ」に当たらない(GPLv3 第0条第7パラグラフ)。ソースコー ドの提供義務(GPLv3 第6条)が生じるのは、オブジェクトコードをコンベイした場合 である。したがって、プログラムを配付しないのであれば、ソースコードを提供する義務 はない。
[87]ネットワークサービスにおいても、ウェブページのJavaScriptのように、コンベイに該 当すると考えられる場合もあり得る。
‐ 130 ‐ スコードを提供する義務はない。
一方、米Affero Inc.社は、デジタルインタフェースにおいても人々の自由が保護されるべ
きとし、FSFの承諾を得てAffero GPLv1を作成した[88]。Affero GPLv1は、GPLv2の第2 条にネットワーク上のインタラクションにおけるソース提供義務を追加したものである。
Affero GPLv1は、GPLv2と「矛盾するライセンス」として発行された。
GPLv3の策定プロセスの途中段階では、第7条の「追加的条項」にネットワーク上のイ
ンタラクションにおけるソース提供義務を定めることが検討された。この時点では、Affero
GPLv1はGPLv3と矛盾しないライセンスになる可能性があったことになる。しかし、策定
プロセスにおいて様々な意見が交わされた結果、この追加的条項の有無をチェックする負 担が増すことが懸念されることから、最終的にはAffero GPLv3として別のライセンスが作 成されることになった[89]。
なお、Affero GPLにはバージョン2も存在する。Affero GPLv2は、既存のAffero GPLv1 プログラムがAffero GPLv3に「アップグレード」することを許可するために、Affero Inc.
社により発行されたものである[90]。
16.5. Affero GPLv3の概要
Affero GPLv3は、GPLv3の一部を改変することによって作成されている。
Preamble(前文)では、Affero GPLv3特有の目的と背景が追加されている。
第0条および第14条では、条文中で参照されるライセンスの名称が、GPLv3からAffero GPLv3に変更されている。
第1条〜第12条および第15条〜第17条は、全く同一である。
Affero GPLv3特有の条件は、第13条に定められている。第13条の内容は以下のとおり である。
[88]
AFFERO GENERAL PUBLIC LICENSE Version 1, March 2002(http://www.affero.or g/oagpl.html)
[89]Frequently Asked Questions about the GNU Licenses “Why did you decide to w rite the GNU Affero GPLv3 as a separate license?”(http://www.fsf.org/licensing/licenses/
gpl-faq.html#SeparateAffero)
[90]AFFERO GENERAL PUBLIC LICENSE Version 2, November 2007(http://www.affer o.org/agpl2.html)
Affero GPLv1は、Affero Inc.社により発行された改訂バージョンの適用を許可している。
ただし、Affero GPLv3はFSFにより発行されたので、v1からv3へ直接「アップグレード」
することはできない。Affero Inc.社により発行されたv2がv3の適用を許可しているので、
v1からv2を経てv3へ「アップグレード」することができる。
‐ 131 ‐
13. Remote Network Interaction; Use with the GNU General Public License.
(第1パラグラフ)
Notwithstanding any other provision of this License, if you modify the Program, your modified version must prominently offer all users interacting with it remotely through a computer network (if your version supports such interaction) an opportunity to receive the Corresponding Source of your version by providing access to the Corresponding Source from a network server at no charge, through some standard or customary means of facilitating copying of software. This Corresponding Source shall include the Corresponding Source for any work covered by version 3 of the GNU General Public License that is incorporated pursuant to the following paragraph.
(第2パラグラフ)
Notwithstanding any other provision of this License, you have permission to link or combine any covered work with a work licensed under version 3 of the GNU General Public License into a single combined work, and to convey the resulting work. The terms of this License will continue to apply to the part which is the covered work, but the work with which it is combined will remain governed by version 3 of the GNU General Public License.
(訳)
13. リモートネットワークインタラクション;GNU GPLと共に利用する場合
(第1パラグラフ)
本許諾書の他の条項のいかんに関わらず、あなたが本プログラムを改変する場合、あな たの改変されたバージョンは、ネットワークサーバで対応ソースへのアクセスを提供する ことによって、コンピュータネットワーク上でやりとりするすべてのユーザに対し(あな たのバージョンがそのようなやりとりをサポートする場合)、あなたのバージョンの対応ソー スを受領する機会を無料で提供しなければならない。この対応ソースは、以下のパラグラ フに従って一体となるGNU GPLバージョン3が適用された著作物の対応ソースを含む。
(第2パラグラフ)
本許諾書の他の条項のいかんに関わらず、あなたは、対象著作物をGNU GPLバージョ ン3に基づいて許諾された著作物とリンクまたは結合して単一の結合された著作物とする こと、及びその結果として作成された著作物をコンベイすることができる。本許諾書の条 項は、当該結合された著作物中の対象著作物の部分に対しては引き続き適用されるが、結 合された著作物それ自体としては、GNU GPLバージョン3が適用される。
‐ 132 ‐
16.6. 関連法令等
x Affero GPLv3(http://www.fsf.org/licensing/licenses/agpl-3.0.html)
‐ 133 ‐