第 2 章 逐条解説
5. 第 3 条(技術的保護手段の回避を禁ずる法律に対するユーザの法的権利の保護)
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‐ 49 ‐ に利用された場合の扱いを定めている。
GPLv3 は、GPLv3 プログラムを技術的保護手段の実現に用いることは禁止していない。
GPLv3 プログラムを用いて技術的保護手段のソフトウェアを開発すること自体は可能であ
る。しかしながら、GPLv3 プログラムを技術的保護手段の実現に用いた場合、その保護手 段を回避するプログラム(例えばコピープロテクトを解除して、デジタルコンテンツのコ ピーの作成を可能とするもの)を第三者が開発・公開したとしても、当該回避プログラム に対しては技術的保護手段の回避を禁止する権利を放棄すべきものとされている。また、
回避に関するプログラムを使用する行為や、プログラムを改変する行為を制限しないこと も要求されている。
この方法により、FSFは、コピーレフトがDRMにより阻害されることに対抗しようとし ている。
5.2. 条文内容
5.2.1. 第1パラグラフ
GPLv3プログラムは、DRM等の技術的保護手段の回避を禁ずる法律における「技術的保
護手段」とは見なされないことを定めている。
「いかなる対象著作物も……『技術的保護手段』とは見なされないものとする」の「見 なす」主体は、条文上は明記されていないが、裁判所が想定されているものと考えられる。
すなわち、本条に関する争いが裁判所に持ち込まれた場合、改変したプログラムの実行を 制限する手段等が裁判所によって「技術的保護手段」とは見なされないものとする旨を定 めている。わが国の民訴法を前提とすれば、原告・被告は、当該手段が「技術的保護手段」
とは見なされない旨を主張すべき義務を負っているということになろう。
本条は、GPLv3 プログラムを利用して技術的保護手段の機能を有するプログラムを開発
すること自体は禁止していない。
しかし、仮に技術的保護手段の機能が GPLv3 プログラムを用いて実現されている場合、
当該技術保護手段を回避するプログラムが開発・公開されたとしても、GPLv3 の適用を受 ける当事者は、当該プログラムが「技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とす るプログラム」(著120条の2第1号)に該当すると主張することは、第1パラグラフの定 めにより許されないことになる。
したがって、GPLv3 適用プログラムが技術的保護手段の機能を有するソフトウェアの開 発に利用されたとしても、その保護手段を回避するプログラムを開発して公開することで、
Managementの語を当てている。
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実質的にその技術的保護手段を無効化することができる。これが第 1 パラグラフの意図し ていることである。
第 1パラグラフが対象としている技術的保護手段は、「WIPO著作権条約(1996年12 月 20日採択)第11条[45]の定める義務を充足する準拠法、及びそれに類する技術的保護手段 の回避を禁ずる法における」ものである。
わが国では、このWIPO著作権条約への対応として、著作権法の平成11年改正において、
技術的保護手段の回避を行うことを専らその機能とする装置・プログラムの複製物の公衆 への譲渡、公衆への譲渡・貸与目的の製造・輸入・所持、公衆の使用に供すること、当該 プログラムの公衆送信・送信可能化を行った者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰 金に処されることになった(著120条の 2第1号)。回避行為自体は処罰の対象ではなく、
回避のためのプログラムの複製物の譲渡等の行為が処罰の対象である。
したがって、わが国では平成11年改正以降の著作権法が「WIPO著作権条約(1996年12 月20日採択)第11条の定める義務を充足する準拠法」に該当する。
さらに、不正競争防止法も平成11年改正において、技術的制限手段の回避を禁ずる規定 を導入した(不正競争防止法2条1項10号・11号)。ただし、これはWIPO著作権条約へ の対応としてなされたものではなく、わが国独自の立法である。したがって、第 1 パラグ ラフの「それに類する技術的保護手段の回避を禁ずる法」に該当すると解される。
著作権法と不正競争防止法の規律の関係は下図[46]を参照されたい。
[45]
WIPO著作権条約第11条(技術的手段に関する義務)の内容は以下のとおりである。
「締約国は、著作者により許諾されておらず法によっても許容されていない行為をその著 作物について制限する、効果的な技術的手段であって、この条約又はベルヌ条約に基づく 権利の行使に関して著作者が利用するものの回避に対して、適切な法的保護及び効果的な 法的救済を定めなければならない。」
[46]経産省知財政策室編著「逐条解説不正競争防止法(平成18年改正版)」有斐閣をもとに 作成
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著作権法 120条の2第1号は刑事罰を定めた規定であり、同号に該当する行為を行った 場合でも差止や損害賠償の民事上の責任は生じない。また、同号は親告罪ではないので、
捜査当局は被害者による告訴の有無に関わらず事件を捜査し、被疑者(回避プログラムの 開発者等)を告訴することができる。そのため、著作権法との関係では、民事及び刑事い ずれについても、第1パラグラフの実効性には疑問がある。
一方、不正競争防止法2条1項10号・11号に該当する行為は、差止請求及び損害賠償請 求の対象であるが、刑事罰の適用はない。したがって、第 1 パラグラフは、回避プログラ ムを提供した第三者の民事責任を免れさせることになる。
5.2.2. 第2パラグラフ
第2パラグラフ第1文は、GPLv3プログラムを配付(コンベイ)した者は技術的保護手 段の回避を禁止する法的権利を放棄する旨を定めている。
わが国の不正競争防止法の場合についていえば、同法2条1項10号・11号違反に基づく 差止請求権(同法 3条)及び損害賠償請求権(同法 4条)を放棄することになる。これに より、回避プログラムを提供した者は、不正競争防止法上の民事責任を追及されるおそれ がなくなる。第 1 パラグラフは裁判所を対象にした規定であるが、本パラグラフ第1 文は 技術的保護手段のプログラムを開発し公開した者を対象にした規定である。
本パラグラフ第 2 文は、技術的保護手段の回避を禁ずる手段として、法的権利を行使し てプログラムの動作や改変を制限することを禁止している。これにより、例えば、ソフト ウェア・パッケージや組込み機器の購入者と著作権者の間のライセンス契約において、著 作権の許諾条件として、技術的保護手段回避機能に関するプログラムの動作や改変を禁止 する規定を設けることは許されない(そのような意図を予め放棄する)ことになる。
5.3. GPLv2との異同
本条に相当する規定はGPLv2には存在していなかった。GPLv2の公表後に、各国でDRM に関する法律が制定されたことを受けて新設された規定である。
5.4. 参考
ディスカッションドラフト第1版解説の公表の段階では、GPLv3プログラムを技術的保 護手段の実現に用いること自体が禁止されていたこと等もあって、本条はGPLv3の策定過 程においてもっとも激論が交わされた規定の一つであった。しかし、最終的には企業にとっ ても特に大きな問題なくGPLv3を利用可能な内容になったといえよう。
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なお、LGPLv3を適用する場合は、本条の適用はない。LGPLv3 第1条は、GPLv3の本 条の適用がないことを定めているからである。
5.5. 関連法令等
x 著作権法120条の2・1号
x 不正競争防止法2条1項10号、11号 x WIPO著作権条約11条
x LGPLv3 1条
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