めてみよう
.すると
,等温であるがゆえに
, I d′QT = 1 T
I
d′Q|{z}= 0
可逆
(9.10)
と温度を積分記号の外に出せるではないか
.ここで
,絶対温度は非零
(T ̸= 0)であ ることがやはり重要極まりない
.これゆえ
I
d′Q= 0 (9.11)
をうる
.したがって
,題意が示された
†755: Id′W = 0 (9.12)
可逆等温サイクルにおいては
,正味のする仕事も正味の入熱もいずれもゼロとなる
.ゆえに
,この不可逆サイクルに対しては
, Clausiusの不等式
(9.6)が成立する
: I d′QT =
∫
A→I→B→II→A
d′Q
T <0 (9.13)
決して等号付き不等号
≤ではなく
,不等号
<であることに注意を要する
†759.さて
,周回積分の記号を分割しよう
.まず
,不可逆過程と可逆過程に分割する
:I d′Q
T =
∫
A→I→B
| {z }
不可逆
+
∫
B→II→A
| {z }
可逆
d′Q
T <0 (9.14)
つぎに
,可逆過程においては逆行可能であるがゆえに
,積分経路
(過程の進行方向
)を 逆向きにする
.すなわち
,過程
B→II→Aから過程
A→II→Bへと入れ替えよう
†760.逆向きゆえに負号がついて, 次式をうる:
(∫
A→I→B
−
∫
A→II→B
)d′Q
T <0 (9.15)
ここで重要なことは, サイクル
(循環過程)という束縛から解放されたことに ある. この式変形ゆえに, 任意の過程を論ずることができるようになった
†761.さて,
∫
A→I→B
d′Q
| {z T}
不可逆
<
∫
A→II→B
d′Q
| {z T}
可逆(逆行可能)
(9.16)
と書けるが
,両辺の重要な違いを述べる
——左辺も右辺も
, d′Q/Tの線積分
(経路 に沿った積分
)である
.左辺は経路に依存する非状態量であるが
(後述
),右辺は状 態量としてのエントロピーとしてすでに表現可能であった
(§8.3).したがって
,右 辺は
,経路
(中継点としての熱平衡状態
II)には依存せず
,終点
Bにおけるエントロ ピー
SBから始点
Aにおけるエントロピー
SAを引いたもの—— すなわちエント
†759たとえ可逆過程を含んでいても,サイクル全体が不可逆であるがゆえに,決して等号を含まない 点に注意を要する. ここでも定義が重要である. “サイクル”と“過程”の差異をきちんと理解で きているだろうか.
†760[重要]この向きの入れ替えこそが重要である. あえて可逆過程をもちこんだ意図がここにある. 不可逆過程ならば,その名の通り, もちろん, 向きを入れ替えることなどできない(それにもか かわらず,そのような誤答が後を絶たないので,初学者は特に注意すべきである).
†761そもそも, 不可逆“過程”におけるエントロピーを知りたかったのだから, サイクルのままでは どうしようもない. サイクルを過程にばらすことは必然といえる.
ロピーの変化量に等しい
†762:∫
A→II→B
d′Q
T =| SB{z−SA}
可逆(状態量)
(9.18)
これを
(9.16)に代入すると
SB−SA>
∫
A→I→B
d′Q
| {z T}
非状態量
(9.19)
と書ける
.右辺は
,非状態量であって
,たとえ始点と終点が与えられていても
,中 継点がどこにあるかに応じて
,縦横無尽にその値を変える
.微分形でかこう:
dS > d′Q
T (9.20)
右辺がゼロのとき
,可逆過程への極限を意味する
.すなわち
,右辺とは
,不可逆性の 度合いを意味する
.まとめ——可逆過程と不可逆過程のエントロピー
等号が可逆過程において, 不等号が不可逆過程において, それぞれ成立する:
dS≥ d′Q
T (9.21)
問題
62.微分形
(9.20)から出発して積分形
(9.19)を導け
.逆に
,積分形
(9.19)か ら出発して微分形
(9.20)を導け.
問題
63.可逆断熱過程においてはエントロピーが不変であるが
,不可逆断熱過程 においてはエントロピーが増大する
.これを示せ
.†762[補足] (i)∆S=SB−SA と差分記号を用いて書いてもよい. ここでは, 始点Aと終点Bを前
面に出す表現を用いた. (ii)状態量は経路によらないのだから,中継点IIを省略して,
∫
A→II→B
d′Q T =
∫ B A
d′Q
T =SB−SA (9.17)
と書いてもよい. しかし,不可逆過程((9.16)左辺)との混同を防ぐべく,あえて,中継点IIを明 示した. (iii)不可逆過程の場合,すなわち(9.16)左辺の積分において,中継点を省略してはなら ない. この積分は,非状態量であるがゆえに, 経路に依存するからである. たとえば, A→a→B とA→b→Bは異なる.