[
証明
] (i)外界からの入熱はゼロである
. (ii)サイクルゆえに
,状態量である内部エ ネルギーの変化はゼロである
. (iii)熱力学第一法則
(2.8)から
,仕事を考察すると
,W = 0
あるいは
d′W = 0 (2.41)をうる
.ここで
(i)と
(ii)を使った
. [結論
]仕事は一切取り出すことができない
†336.外界からの熱の供給なしに
,仕事を得ることができて
,系は永久に動き続け
,われ
われが何も不自由しない
——それは理想にすぎないことを
, (2.41)が教えてくれた
.問題
10.温度が一定の過程
†338において
,圧力
pと容積
Vのあいだに
,pV = const. (2.42)
が成立し
,かつ
,内部エネルギー
Uに対して
,U = const. (2.43)
も成立する気体を考える
†339.熱平衡状態
1において
,圧力が
p1,容積が
V1であっ た気体を
,圧力が
p2になるまで準静的に圧縮すると
,気体は熱平衡状態
2に至った
. 1)熱平衡状態
2における気体の容積を求めよ
.問題文中の記号だけで表現せよ
. 2) p1と
p2の大小関係を不等式で表現せよ
.根拠も述べよ
.3)
式
(2.42)右辺の定数を,
p1と
V1を用いて決定せよ.
4)
過程
1→2において, 外界から気体に「された」仕事を求めよ.
5)
圧縮に伴い
,外界と気体のあいだで熱の交換がなされた
.熱は
,外界から気体
,気体から外界
,どちらへ移ったか
.その量も含めて答えよ
.6) p1 = 1 atm†340, V1 = 1ℓ†341, p2 = 3 atm
のとき
, 4)と
5)の数値を計算せよ
.単 位は
Jで答えよ
.なお
, 1 atm = 101325 Pa, 1ℓ = 10−3m3, ln 3 = 1.1とする
†342.†338[用語]等温過程(isothermal process)とよぶ(§5).
†339[補足]このような気体を理想気体といい, (2.42)をBoyleの法則(§3で詳述), (2.43)をJouleの 法則とよぶ(熱力学IIで詳述). いま覚えなくともよい.
†340[補足] 1気圧のことを1 atm といい, 101325 Pa に等しい. 一般常識に属する数値ではあるが, 暗記しなくともよい. それよりも, この数値を知らずとも解答できることを確かめよ.
†341[基礎] 1ℓ= 1000 cm3 は一般常識といえるが,覚えなくても試験では困らない. 将来的に恥をか
くかもしれないが.
†342[重要]本資料では,記号lnはNapier数eを底とする自然対数,記号logは10を底とする常用 対数とする. 数学とは異なり,物理学においては, 記号 ln と log の定義と使い分けが, 書物や 科目によって異なることが多い. しかし,単に,底が何かをその都度確かめればよいだけである.
問題
11.大気圧下
†343 p0 [Pa]において
,質量
m [kg]†344,比容積
v1[m3/kg]の水に
, Q1→2 [J]の熱を加えて準静的に膨張させた
.すると
,水の全てが水蒸気
†345に変わっ た
†346.変化前
(水)を熱平衡状態
1,変化後
(水蒸気)を熱平衡状態
2とする
†347. 1)水の容積を
,比容積と質量を用いて表現せよ
.2)
本問に限らず
,一般に
,内部エネルギー
Uの微小変化が
,dU = d′Q−mpdv (2.44)
で与えられることを示せ
(mは定数とする). 第一法則に忠実に考えればよい.
3)
本問では
,内部エネルギーの増加量
∆Uが
,次式で与えられることを示せ
.∆U =Q1→2−mp∆v (2.45)
4) ∆U
がわかれば
,エンタルピーの増加量
∆Hを知ることもできる
.実際に
,∆Hを与える次式を導け
†348†349:∆H =∆U+mp∆v (2.46)
5) Q1→2 = 2257 kJ,m= 1 kg,p0 = 0.1013 MPa,v1 = 0.001 m3/kg,v2 = 1.673 m3/kg
であるとき,
∆Uおよび
∆Hを計算せよ
†350.6)
状態
1のエンタルピー
H1の値を計算せよ
.エンタルピーの
“増加量
”ではなく
,†343[重要]これを“定圧過程”と訳することが最重要である. 難しいのは, このような解釈だけであ
るといってよい(試験においては注釈を与える). 事実,大気圧にさらされているならば,それは 定圧に他ならない.
†344[重要] SI単位系では, gではなくkgを当たり前のように使うことに注意を要する. 念のため,本
問では単位を付すが,以後,省略するので自身で補完されたい.
†345[補足]この水を飽和水,蒸気を飽和蒸気とよぶことがある.
†346[発展]むろん,理想気体(§3)とは限らないことに注意せよ.
†347[指針]慣れるうちに, 諸君が,状態に番号を付ける作業を補完してほしい(今回は出題者側が与 えた). それによって,解答の方針を格段に定めやすくなる.
†348[重要]本問題においては成立するが,いつでも成立する式ではない(確かめよ).
†349(2.44)(2.45)とエンタルピーの定義式(2.34)の助けを借りよ. 定圧過程であることに注意せよ.
†350[意図]内部エネルギーとエンタルピーが, たしかに増加していることを確かめる意図の出題で ある. 単位換算の練習のため,あえて接頭辞をつけているので,注意せよ.
エンタルピー
“自体
”である点に注意せよ
†351.ただし
,U1 = 30 kJとして
†352,他 の量は
5)の数値を利用せよ
.7)
状態
2における内部エネルギー
U2およびエンタルピー
H2の値を計算せよ
†353.基礎
8.式
(2.45)や
(2.46)の右辺第
2項には質量を含むのに
,右辺第
1項に質量を 含まない
†354.この表記にどのような利点があるか
.どのような動機か
†355.†351[重要]“変化量”についての理解が疎かであったり, ∆がついているか程度の軽微な点と軽視し
ていると致命傷に陥る. 熱力学は細部への理解が極めて重要である. なお,エンタルピーの定義 H =U+pV を用いる.
†352これは, 計算問題のための仮想的な数値である.
†353[ヒント]内部エネルギーの“増加量”を利用する.
†354[応用]いうまでもなく,第1項と第2項の次元は正しい(確かめよ).
†355工学的観点から考えてみよ(出題範囲外).