§ 10.4.1 Kelvin
の原理
†787まず
1つ目である
†788†789. Kelvinは
, Carnotの熱機関の理論に際立って関心を 持ったといわれる
. Carnot効率が機関の構造や作動流体に依存しないのならば
†790,何が決定打となるのかを調べた
.やがて
, Kelvinは
,熱効率が
100 %の熱機関を作 ることができないか
——高温熱源からの入熱の全てを仕事に変換できないか
——と夢想したのだが, 低温熱源なしには不可能であるという結論に達し, 以下の命題 を提示するに至った:
Kelvin
の原理
(詳細版
)
単一熱源から熱を取り出し
,これを仕事に利用して動き続けるだけで
,自然界 に何の影響も残さない熱機関
(第二種永久機関
)は実現不可能である
.
少々格調高く
,難解な印象を受けるので
,より易しく簡潔に述べる
: Kelvinの原理
(簡易版
)
熱効率
100 %の熱機関
(第二種永久機関
)の実現は不可能である
.
熱効率が
100 %の熱機関を
,第二種永久機関という
†791†792.ここで重要なこ とは
,第二種永久機関は
,第一法則を満たしているが
†793,第二法則は満たさない点 にある. 第二種永久機関に異を唱えたのが, Kelvin の原理である.
もしも
,第二種永久機関が創成されたならば
,たとえば
,無限大の熱容量をも つ海水を熱源にして船を動かしたり
,空気あるいは地面を熱源にして自動車を走行
†787Planck (プランク)の原理またはThomson (トムソン)の原理ということもある.
†788[一言でいおう]「熱効率が100 %の熱機関を作ることはできない」.
†789[お金の例]収入の全てを支出へと変換することはありえない(よほどの冒険家でなければ,所持
金をゼロにすることは危険極まりない). 一定額のお金を保有しておくことが自然かつ常識的で ある.
†790これはCarnotの定理の主張である. 本資料ではまだ未証明である.
†791[永久機関(perpetual motion)]第一種永久機関とは, 熱源なしに仕事をし続ける機関であった.
熱の補給なしに, 仕事をし続けることは不可能である. すなわち, 熱力学第一法則に従えば, 第 一種永久機関は実現不可能といえる.
[注意]サイクルでは,内部エネルギーの変化はゼロであるから,「1周すれば元通りに戻るでは ないか」と思うかもしれないが, それは,あくまで,熱の供給があっての話である. 熱の供給な しに仕事をすれば,系の内部エネルギーは減少し続け,やがてサイクルはストップする.
†792第二種永久機関で厄介なところは,第一法則は満たすが,第二法則を満たさない点にある.
†793100の熱の全てを, 100の仕事に変換することは,第一法則に何ら反しない.
させることが可能となり
†794,われわれがすべきことなど何もないだろう
.さて
,第二種永久機関が存在しえないことを
,既に導出したばかりの
,熱力学 第二法則のエントロピーによる表現を用いて, 示すこととしよう.
問題
65. Kelvinの原理が正しいこと
,すなわち
,第二種永久機関が不可能であるこ
とを証明せよ
.[
証明
]任意のサイクルに対して
,第二法則
(10.1)d′Q≤TdS (10.1)
が成立する
†795.それゆえに
,第二法則の周回積分も成立する
: Id′Q≤ I
TdS (10.3)
ここで
,第二種永久機関は
, (高温
)熱源から熱をもらうことを思い返す
.熱源 ならば温度は一定であるので
†796,これは等温受熱であって
,右辺に含まれる
Tを
,早速
,積分記号の外に出したくなるのが自然な感情である
:I
TdS =T I
dS
| {z }
状態量
=T ×0 = 0 (10.4)
最右辺では, 状態量
Sの周回積分がゼロであることを用いた.
したがって
,サイクルにおいて
,熱量は
, Id′Q≤0 (10.5)
†794地面とタイヤの摩擦によって生じる熱を使って車を走らせ,再び地面とタイヤの摩擦を生じさ せて,熱を地面へと返還すればよい.
†795“絶対”温度T を掛けても,不等号の向きは変わらない.
†796受熱時には, 高温熱源は第二種永久機関(サイクル)と接触しているがゆえに,熱源とサイクル の温度は等しい.
[熱源の定義]思い返そう. どれだけ熱のやり取りをしても温度が不変な理想的な外界であった.
を満たす
.ここで
,第一法則も立ててみよう
†797. Id′Q= I
dU
| {z }
状態量
+ I
d′W = 0 + I
d′W = I
d′W ≤0 (10.6)
したがって, (正味の) する仕事が負になってしまう:
I
d′W ≤0
あるいは
W1→2→···→1 ≤0 (10.7)すなわち
,第二種永久機関は
,仕事をされることはあっても
,仕事をすることはで きない
†798.言い換えれば
,高温熱源という単一の熱源だけからサイクルを構成す ることは不可能なのである
.問題
66. (10.1)を使うことなく
, Kelvinの原理を示せ
†799.§ 10.4.2 Clausius
の原理
2
つ目の第二法則の言葉による表現を与える
.日常生活との対比からいえば
,クーラーや冷凍機と密接な関係がある
†800†801.Clausius
の原理
(詳細版)
自然界
(外界)に何の変化も残さずに, 熱を低温から高温の物体に継続的に移動 させる装置を作ることは不可能である
.
やはり
,より易しく簡潔に述べる
:Clausius
の原理
(簡潔版
)
熱が低温側から高温側に自然に流れることはない
.
†797いかなる問題や証明においても第一法則は必ず立てることを強調し続けた. なお, 準静的とも 理想気体とも限らない. できる限り広範のサイクルに適用可能とすべく, 仮定は可能な限り排 除している.
†798いうなれば,電源から電気をもらい,電気代を圧迫するばかりでありながら,電気をつけること ができない,無能な電気機器といえる.
†799別の証明方法もある. すなわち,第二法則のエントロピーによる表現(10.1)を既知としない方 法であって,有限量としてのエントロピーを計算すればよい. 次節以降に譲る予定である.
†800[一言でいおう]「“無電源”でクーラーや冷蔵機を作動させることはできない」.
†801[お金の例]低所得者から高所得者へと,自然にお金が流れることはありえない(よほど醜悪な高
所得者でなければ, 低所得者のお金を奪うことはありえない). 高所得者から低所得者へのお金 の流れこそが自然である.
Clausius
の原理が正しいことの直感的理解は
, Kelvinの原理の証明よりも容 易いかもしれない
.たとえば
,クーラーを思い浮かべれば
,感覚的理解は容易い
.涼 しい部屋
(低温熱源
)の熱を奪い
,それを屋外
(高温熱源
)に捨て続けることができ るだろうか. 無茶である. 連続的な電気の供給——すなわち
(電気的)仕事の注入 がなければ, クーラーが動くはずがない.
Kelvin