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§ 8.2 無数の微小な Carnot サイクルの考え方

ドキュメント内 (A2) , 0, (ページ 143-147)

§ 8.2.1

復習

—— Carnot

サイクルの熱効率から導かれる

Clausius

の関係式

Carnot

サイクルならば

720,

高温熱源からの入熱

QH(>0),

高温熱源の温度

TH,

低温熱源への放熱

QL(> 0),

低温熱源の温度

TL

のあいだに

, Clausius

の関 係式

QH

TH = QL

TL (7.22)

が成立した

721.

ここに

,

両辺は正値であるが

,

便宜上

,

熱が正であるときを入熱

,

負であるときを放熱と定義しなおす

.

そこで

,

放熱を

, QfL ≡ −QL

とおきなおす

(QL >0

かつ

QfL<0).

すると

, (7.22)

,

QH TL

=−QfL TL

(8.5)

と書き換えられる

.

簡単のため

,

以下では

, QfL

,

改めて

,

単に

QL

とかく

722.

§ 8.2.2

大きなサイクルを小さな

Carnot

サイクルへと分割

任意のサイクル

,

例えば円形のサイクルを考える

.

左端の熱平衡状態

A

から出 発し

,

状態

I

を経由し

,

右端の状態

B

へと至り

,

状態

II

を経て

,

状態

A

へと戻る

723.

720Carnotサイクルは可逆サイクルであった.

721Carnotの定理の(i)より,理想気体の制約は既に取り払われている(§7.4).

722つまり,巡り巡って,同じ記号を使うわけだが,混同に注意を要する. 同一視が気になる者は,異 なる記号を用いればよいだろう.

723これらの各記号は,一旦忘れてよい. 登場には今しばらく待っていただくこととなる.

これを

, N

個の小さな

Carnot

サイクルを用いて近似することを考える

.

すなわ ち

,

断熱線

2

本と

, “

短い

等温線

2

本からなるサイクル

N

個の総和を考える

724.

N

個おのおのの

Carnot

サイクルについて

, Clausius

の関係式が成立する

: QHi

THi

|{z}

入熱

=−QLi TLi

| {z }

放熱

(i= 1,2,· · · , N) (8.6)

ここに

,

左端から右端へと向かって

,i= 1

から

i=N

まで番号を付けて

,

Carnot

サイクルを区別した

.

具体的に書き下すと

,

QH1 TH1

=−QL1 TL1

(8.7) QH2

TH2 =−QL2

TL2 (8.8)

· · · QHN

THN =−QLN

TLN (8.9)

である. たとえば, (8.7) は, 左端の小さな

Carnot

サイクルに対して成立する

Clau-sius

の関係式である. 順次, 視線を右へと動かせ, 右端の

Carnot

サイクルまで辿り 着くと思えばよい

725.

両辺の総和をとると

,

次式をうる

:

N i=1

QHi

THi =

N i=1

QLi

TLi (8.10)

§ 8.2.3

断熱線の共有と相殺

たとえば

,i= 1

のサイクルの断熱膨張の断熱線は

, i= 2

のサイクルの断熱圧 縮の断熱線と

両端を除いて

一致する

726.

したがって

,

Carnot

サイクルは

1

本の断熱線を

(

両端を除いて

)

共有している

.

N → ∞

の極限をとるとき, 各断熱線が順次相殺され, 左端と右端の断熱線だ けが残る.

724図は板書する. 「小さな」とは,断熱線ではなく,等温線が小さな(短かな)サイクルを指すもの とする.

725この箇所の理解は,文章だけでは困難であるがゆえに,図をよく眺めよ.

726必ず矢印をかけ. そうすれば,相殺が視覚的にわかる.

§ 8.2.4

微小等温線への極限

—— Clausius

積分の登場

2

本の等温線は有限の長さをもつが

,

これらを

,

ともに

,

微小な長さへと近づけ

.

すると

,

Carnot

サイクルは

,2

本の微小な等温線および有限の長さの断熱線

から構成される

.

すなわち

, N → ∞

の極限をとるとき

,

(i)

等温線の長さが微小になるがゆえに

,

入熱と放熱の値も微小量すなわち

dQ

となる

727.

(ii)

不連続であった各等温線の接点が連続につながる

.

その結果

,

等温線は

,

元の サイクルを描く曲線へと収束する

728729.

(iii)

隣同士の

Carnot

サイクルで共有していた断熱線の両端が一致し

,

その断熱線

は相殺される

730.

以上の結果

,

左辺は

,

以下のような線積分となる

:

Nlim→∞

N i=1

QHi THi =

A→I→B

dQ

T (8.11)

簡単のため, 右辺では, 高温を意味する添え字

H

を略し, 同時に, d

Q

が入熱も放 熱も表現できるようにした. つまり, 正負どちらもとりうる

731.

積分経路は, 左端 の状態

A (

始点

)

から

状態

I

を経由して

右端の状態

B

まで至る過程

AIB

で あった

732733.

いっぽう

,

右辺は

,

右端の状態

B

から

状態

II

を通り

左端の状態

A

まで至る

727しかしながら,温度は何の影響も受けないことに注意せよ. そもそも,熱源とは, どれだけ熱を 供給しても温度が不変な理想的な外界であったではないか.

728隣同士の等温線の温度変化は滑らかとみなせるほどに小さい.

729全ての等温線が滑らかにつながる——これは,微小な長さの曲線が無限個集まって有限の長さ の曲線を形成する—— 1/∞ × ∞= 1とみなせる. たとえば,デルタ関数の議論に似ている(応 用数学).

730[注意]等温線と異なり,断熱線の長さは有限であり続ける. ただし,この極限操作にともなって, 長さは変化する.

731dUdQなる記号は,微分であるから,必ず正負両方の値をとる. したがって,われわれが何 も考えずとも, 自動的に正負すなわち入熱か放熱かを判定してくれる. そして, 本節はじめで, 有限量としてのQが正負どちらもとりうるように定義し直したことも思い返そう.

732ここで, 決して, ABと書いてはならない. 理由はすぐにわかる.

733[数学]これはベクトル解析でいうところの線積分である.

過程

BIIA

に沿う線積分となる

734:

lim

N→∞

N i=1

QLi TLi

=

BIIA

dQ

T (8.12)

(8.11)

から

(8.12)

を引くと

,

左辺は

(8.10)

よりゼロとなる

.

右辺は

,

AIB

dQ T +

BIIA

dQ

T =





AIB

+

BIIA

| {z }

AIBIIA (一周)



 dQ

T =

I dQ

| {z }T

Clausius積分

= 0

(8.13)

可逆サイクルの

Clausius

積分

可逆過程から構成されるサイクルでは

Clausius

積分

I dQ

T

がゼロとなる:

I dQ

T = 0 (8.14)

ここまでの要点と注意事項をまとめておこう

735:

1)

小さな

Carnot

サイクルの各等温線の長さをゼロに近づける極限において

,

全て

Carnot

サイクルの総和は, 元のサイクルへと収束する.

2)

等温線の長さは微小であるが

,

断熱線の長さは有限である

.

それゆえ

,

全ての入 熱と放熱は微小量である

736.

3)

断熱線の全てが相殺される

†737.

4)

不可逆サイクルに対しては

,

次式が成立する

(

後述

):

I dQ

T <0 (8.15)

734左辺と右辺でそれぞれ経由点が状態Iと状態IIと異なることに注意せよ. 一周したかったから, こう決めたのである.

735周回積分の定義は天下りとした. ベクトル解析における線積分の考え方にしたがう.

736[重要]これが,エントロピーの定義式の分子の dQの出所である.

737[注意]左端の状態A近傍の断熱圧縮線,および,右端の状態B近傍の断熱膨張線を除く.

ドキュメント内 (A2) , 0, (ページ 143-147)