第二法則は
,その表現が
,科学者によっても
,文献によっても
,多岐にわたるこ とが
,初学者の理解の妨げとなっている
.†770[数式表現] W =QH もしくはQL だからである. [用語]これを第二種永久機関という(後述).
第二種永久機関は,第一法則は満たすが,第二法則に反する. なお,第一種永久機関は,第一法則 に反するものであった(復習せよ).
†771無尽蔵の熱源といえる海水から熱をもらい,地球上の工場の機関を動かすことを考える. する と, 2000年間も働かせ続けて,はじめて,海水の温度が0.01 K低下するという計算結果がある.
†772§10.4で詳述する.
†773[熱は低質で電気は高質] 寒い日に手をこすれば熱が生ずるが, 人間の力だけで電気を作ること
はできない. 力学的仕事を熱に変換することは容易だが,逆は困難なのである. エネルギーの中 でも電気は高級品に属する. 電気を熱に変換するのは容易いが(安価な家庭用ストーブ),熱を 電気に変換するのは困難である(巨大な発電所).
[注意](本講義の)熱力学では,電気を扱わない. 力学的仕事と熱の変換以外には踏み込まない.
†774第一法則を定量的に表現してくれる状態量は,内部エネルギーであった. 内部エネルギーは保存 量であったが,エントロピーは保存量ではない. エントロピーは必ず増大する.
§ 10.2.1
エントロピーによる数式表現
金川個人は
,エントロピーを使って数式表現することが最も易しいと感じる
.熱力学第二法則のエントロピーによる表現
任意の過程は
,外界からの入熱に関する量
d′Q/Tよりも大きくなる方向に
,す なわち
,エントロピーが増大する方向に進む
:∆S ≥
∫ 2
1
d′Q
T ,
あるいは,
dS ≥ d′QT (10.1)
熱平衡状態
1から
2までの定積分である
†775.等号が可逆過程を
,不等号が不 可逆過程をそれぞれ意味する
. d′Q/Tの大きさこそが
,不可逆性の度合いを教え てくれる
.自発的に起こる
(自然界の全ての
)過程の全ては不可逆過程である
.こ れが第二法則の数式表現である
.§ 10.2.2
孤立系とエントロピー
外界と隔離された孤立系ならば
†776,外界と系の間で熱のやり取りはないので
dS ≥0 (10.2)
である
.すなわち
,エントロピーは増加する方向に過程は進む
.可逆過程ならばエ ントロピーは一定
(定数
)であり
†777,不可逆過程ならばエントロピーは増加する
.孤立系というと
,対象を狭めている印象を与えかねないが
,これは決して大胆 な仮定ではない
†778.たとえ, 系と外界の間で熱や仕事の授受をなす場合であって も, 過程に関与する全ての系を包含する巨大な系を考えれば, これを孤立系とみな
†775(9.20)から積分範囲の記号を変更したが,大きな意味はない.
†776もう少し一般的に言おう. 「孤立系あるいは孤立断熱系(isolated adiabatic system)において エントロピーが増大する」という表現が良く使われる. 孤立系とは系と外界が隔離された系で ある. 隔離ゆえに,系と外界の間で仕事と熱のやりとりがなく,それゆえ,内部エネルギーが一 定の系である.
[頻出ミス]決して内部エネルギーはゼロではない. 内部エネルギー“変化”はゼロであるが. 「内 部エネルギーがゼロ」という誤答に潜む致命的欠陥を指摘せよ.
†777エントロピーがゼロという誤答がある(矛盾を指摘せよ). エントロピー“変化”はゼロだが, エ ントロピーがゼロということはありえない.
†778[重要例]宇宙からみれば地球は孤立系である. 同様に,地球からみれば日本は孤立系,東京都か
らみればつくば市は孤立系,筑波大学からみれば3A304教室は孤立系である. こう考えると,孤 立系という響きは, 一見特殊極まりない条件を課すように思えるが, 広範に適用可能な仮定と いう前向きな期待をさせる.
すことが可能である
†779.このような巨大な系では
,系を構成する個々の系のエン トロピーには増減はある
†780.しかしながら
,エントロピー変化の総和は増加する 方向に過程が進行する
†781.そして, エントロピーの総和が最大値に到達したとき に, 過程が止まり, 熱平衡状態に至るのである.
§ 10.2.3
エントロピー増大の法則
エントロピーの増加量は, 過程の不可逆性の度合いを意味する. そして, 第二 法則とは
,不可逆過程の存在を示すと同時に
,エントロピーが増加することを主張 するものである
†782†783.現実には
,可逆過程は起こりえないが
,可逆過程の実現可 能性を定量的に教えてくれるのがエントロピーである
.第二法則
(エントロピー増大則あるいは最大則
)
孤立系のエントロピーは
,(i)
可逆過程ならば不変であるが
, (ii)不可逆過程が生ずれば増加する.
§ 10.2.4
第一法則と第二法則の主張の融合
いかなる過程においても, 系を構成する全ての物質に対して, 次の主張が成立 する:
†779[お金の例1]工学システム学類生140名でパーティを行う. このような場合, 10名程度のズボラ
な者が,決まって財布を忘れる. したがって,会費の貸し借りは免れない. しかしながら,宴会 会場の定員からすれば,あるいは140名という団体規模で眺めれば,数名の貸し借りなど,誰の 知る由もない——そのようなイメージである.
[ついでながら]趣味が少なく,財布の紐も固い金川は,財布を忘れることなどありえず,専ら貸
す側に回っている.
†780[お金の例2]財布を忘れたA君と金持ちのB君の間には, 亀裂が走る.
†781[お金の例3]金銭の貸し借りでいえば,エントロピーは「不信用」の度合いである. お金を借り
てばかりのA君は,たとえ,借金を返済したとしても, B君からの信用を失い続ける.「お金(内 部エネルギー)」は保存量である. しかしながら, 非保存量の「不信用度(エントロピー)」は, 増加するばかりであって, B君がどれほど改心しようとも,決して減少することはない.
†782ここでのエントロピーとは,過程に関与した全ての系(物体)の総和である.
†783いかなる場合でも,エントロピーが減少することはない. 必ず増加する.
第一法則と第二法則
内部エネルギー
(熱と仕事を含む
)は一定である
(第一法則
).エントロピーは増加する
(第二法則
).