(ii) cP
を比エンタルピー
hと関係づける次式を導け
:dh =cPdT (4.17)
(iii)
有限の温度変化
∆Tから
,有限のエンタルピー変化
∆h,および
,理想気体の
単位質量あたりの
(有限の
)入熱
q1→2を求めるための次式も導け
†454:q1→2 =∆h=cP∆T (4.18)
態方程式
(3.7)による
†459. 5つ目の等号の根拠は
,気体定数
Rと質量
mが定数で あることによる
.(4.21)
は, 以後多用するので, 熱力学
Iにおいては数少ない, 覚える価値がある
式に属する
†460.問題
23.理想気体の準静的過程の第一法則から出発して
†461, (4.21)を導け
†462.問題
24. (4.21)の結果に頼ることなく
†463,定圧比熱と定容比熱の差をとって
,cP −cV =R (4.22)
を導け
.本資料では
,これを 「比熱差の式」とよぶ
†464.等号で結ばれているが
,cP, cV, Rは
,本当に同じ次元なのかを常に確認すべきである
†465.[
意図
]導出過程を振り返れば
,これも
,第一法則に他ならないことに気づく
(本当 か
.確かめよ
)†466.をT で微分できるはずがないからである. だからこそ,理想気体の状態方程式の助けを借りて, mRT と書き改めることで,T にどのように依存するのかをあぶり出したのである.
†459[基礎]「ここで初めて理想気体の仮定を持ち込んだ」と勘違いしそうになるが,それは誤りであ る. 1つ目の等号の段階で, すでに理想気体を仮定している(復習せよ).
†460成り立ちを理解することの方が重要であることはいうまでもないが, 熱力学IIの最後まで, 極 めて強力かつ有用な道具となるからである. 高校物理でも“似たような式”を学んだことが思い 起こされることからわかるように,一般常識にも属する.
†461[指針] (4.21)だけを“なんとなく”眺めていると, 熱力学第一法則とは無関係に思えるかもしれ
ない. もしもそう感じてしまった者は, 良い機会であるので, もう一度, 出発点に立ち戻るべき である. 繰り返すが, 第一法則を出発点として考えれば後は枝葉にすぎない. このように,頭の
中に“構造型”の理解を伴った知識を構築できているかを,自己点検することをすすめる.
†462[復習]現時点で,準静的過程の微小仕事d′W =pdV の導出過程を頭の中で再現できない者,紙 に書き下せない者は,この機会にぜひ再導出してみよ. 逆に,これを当たり前のものとして理解 できているレベルの者は,次のステップとして,この表式を使いこなすことに専念すべきである.
†463(4.21)の両辺を質量mで割っても,題意が導かれるが,それでは練習問題の体をなさない.
†464[用語] Mayer (マイヤー)の式とよばれることもあるが(熱力学II),そこまでは頻用されない. お
そらくは,「比熱の差は気体定数」なる意味の簡潔さゆえに,用語を作るまでもないからではな
かろうか(推測にすぎない). いずれにせよ,式を見て意味が説明できれば,それでよい.
†465[注意]質量mの有無に十分に注意せよ. このような地道な作業を軽視する者は,左辺と右辺が 等号で結ばれているにもかかわらず次元が一致しないというありえない答案を提出する.
†466[重要]高校物理においては(おそらく)第一法則とは無関係な公式として暗記していたであろう 式に,第一法則すなわち保存則という物理的意味を持ち込むことに成功したのである.
§ 4.4 比熱比 κ
比熱比
(ratio of specific heats†467) κとは
†468,定圧比熱
cPを定容比熱
cVで 割ったものであり
,つぎのように定義される
(定義ゆえに要記憶
):κ≡ cP
cV (4.23)
ついでながら, 熱容量
C [J/K]と比熱
c [J/(kg·K)]の間には,
C =mcなる関係が あったのだから,
κ = CP/m×m/CV = CP/CVと考えてもよい. ここまでは, 単 なる定義ゆえに
,理想気体に限らない
.§ 4.4.1
理想気体の比熱比
理想気体の比熱差の式
(4.22)を眺める
. Rも
cPも
cVも
,全て正値だから
, cP =cV +R =⇒ cP > cV (4.24)がわかる
.したがって
,理想気体の比熱比は
,気体の種類によらず常に
1より大きい
:κ≡ cP
cV = cV +R
cV = 1 + R
cV >1 (4.25)
そもそも
, (4.22)は第一法則に基礎をおくものであった
.その意味で
, (4.22)を根
拠とする式
(4.25)をも, 第一法則
(保存則)の一部と言及することすら可能だろ う
†469.問題
25. κ >1の根拠
,すなわち
(4.25)の不等号の成立の根拠を説明せよ
.§ 4.4.2
理想気体の比熱を計算する式
理想気体の比熱差の式
(4.22)に, 比熱比の定義
cP =κcVを代入すると,
κcV −cV =cV(κ−1) = R (4.26)†467[英語]比熱が複数個(定圧比熱と定容比熱)なので, heat“s”である.
†468[余談]流体力学では,カッパ(kappa)ではなくガンマ(gamma)の小文字 γ を用いることが多 い. ついでながら,金川の専門は,流体力学である.
†469[重要]奇妙かつ驚くべき事実だろう. もはや,内部エネルギーも熱も仕事も跡形すらないのに, 第一法則が引き合いに出されるのである. これほどまでに, 全てが第一法則と密接に関係づけ られるのである. これが,しつこいまでに,第一法則と連呼してきた理由である.
をうる
.ここから
,速やかに
,理想気体の比熱を与える式が導かれる
†470†471: cV = Rκ−1, cP =κcV = κR
κ−1 (4.28)
比熱比の値は, (理想) 気体の種類に依存する. “気体の物性値表”や
Wikipediaをみれば, われわれが日頃接するレベルの理想気体に対する, 比熱比
κと質量ベー ス気体定数
Rの値が検索可能である
†472.それらを
(4.28)に代入すれば
,知りたい 理想気体の定圧比熱
cPと定容比熱
cVの値を自由自在に計算することができる
.しかしながら
,いま自身が考えている系の質量
mは
,物性値表に載っているは ずもなく
†473,測ることも容易とはいえない
†474.その意味で
,単位質量あたりで考 えるべく
,熱容量よりも比熱
(“比
”熱容量
)の方が
(すなわち
(4.27)よりも
(4.28)の方が) 良く使われる
†475.問題
26. (4.28)を導け
.比熱差の式
(4.22)を既知としてよい
†476.§ 4.4.3
なぜ理想気体なのか
「問題が作りやすい」
——ただそれだけの単純な理由といっても過言ではな い
.むろん
,理想気体の仮定が比較的多くの気体に適合することや
,pV =mRTな
†470[指針]計算問題を解く際に多用する. あっという間に導けるので, 覚える必要はない. しかし, 比較的簡潔な表式であるので,保険の意味で記憶しておいてもよいだろう.
†471[熱容量] (4.28)の両辺に質量mをかけると,熱容量を与える式をうる:
CV = mR
κ−1, CP = mκR
κ−1 (4.27)
†472[指針]たとえ,質量ベース気体定数 Rの値が不明な状況下におかれても,分子量M とモルベー ス気体定数 R0 の値も不明であることはありえないので, (3.18)すなわちR =R0/M を介し て,容易に計算できる:
cV = R0
M(κ−1), cP = κR0
M(κ−1) (4.29)
†473[重要]想像すればわかるだろう. たとえば,個々人の体重がgoogle検索できるはずがないし,気 体の質量を測ることは困難である(水ならまだしも).
†474[補足]この意味で, (4.27)は質量mを含むがゆえに,役立ちそうな公式とはいえない.
†475[指針]ここまでの議論から明らかに,熱容量も比熱(比熱容量)も式展開の処方箋は同一である.
比熱とは単位質量あたりの熱容量であることを知っておくことだけで十分である.
†476[指針]ここで振り返るべきことは,比熱差の式(4.22)までもが, 熱力学第一法則を出発点にお いていることである(確かめよ). やはり,第一法則が全てなのである. このように,無機質な知 識群をむやみに増やすのではなく,知識同士を有機的につなげてほしい. すると,暗記すること など第一法則以外に何もないことに, 自ずと気づけるだろう.