Clausius
の原理が正しいことの直感的理解は
, Kelvinの原理の証明よりも容 易いかもしれない
.たとえば
,クーラーを思い浮かべれば
,感覚的理解は容易い
.涼 しい部屋
(低温熱源
)の熱を奪い
,それを屋外
(高温熱源
)に捨て続けることができ るだろうか. 無茶である. 連続的な電気の供給——すなわち
(電気的)仕事の注入 がなければ, クーラーが動くはずがない.
Kelvin
と
Clausiusの両表現は
,それぞれ
,熱機関と熱の移動という
,全く異な る側面に着目していると誤解されがちである
.しかし
, Clausiusの原理と
Kelvinの 原理は
,実は全く等価である
.それゆえ
,どちらか片方が正しいことを示せば
,も う片方も正しいことを示すことができる
.その意味で
,現時点では
, Clausiusの原 理の証明はあえて割愛する
†802.問題
67. Clausiusの原理を証明せよ
†803.Clausius
の原理
Cの否定
C¯は以下で与えられる
: Clausiusの原理の否定
C¯
熱は低温側から高温側へと自然に移動する
.いいかえれば
,無電源冷凍庫や無電源クーラーが実現可能である
.
第二法則は
,大元は「できない」ことを主張するという
,いわば後ろ向きの特 異的な法則であった
.それゆえ
,否定を考えて
,はじめて「できる」という前向き な表現が現れる点に
,第二法則の特異性を感じる
†806.§ 10.5.2 Clausius
を否定し, Kelvin を否定する 示すべきこと—— 「
C¯ ⇒K¯」
熱は低温側から高温側へと自然に流れるならば, 熱効率
100 %の第二種永久機 関が創成可能である
.
この命題「
C¯ ⇒ K¯」が真であることを示す
.すなわち
, Clausiusの原理の否 定が成立するならば
, Kelvinの原理の否定も成立することを示したい
.すると
,そ の対偶として「
K ⇒ C」も真となる
.すなわち
, Kelvinの原理が正しいならば
, Clausiusの原理も正しいといえる
†807.いま
,Kelvinの原理は既に証明されている ので
,それを利用すれば
, Clausiusの原理が正しいことを間接的に示すことがで きる.
準備として, 低温熱源と高温熱源を用意する
†808†809.さて, Clausius の原理を 否定する
.すなわち
,低温熱源から高温熱源へと
,自然に
QL(>0)なる熱が絶え ず流れるとしよう
†810.折角の入熱があるのならば
,高温熱源の人情として
,何かに
†806本資料も,前向きに進むことよりも,後ろ向きに,矛盾などがないかを精査して出来上がってい る. そのような姿勢は, 決して, 前向きではなく, 後ろ向きといえるだろう. ネガティブキャン ペーンではダメで,熱力学を前向きに語らねばなければならないと常々感じているが,金川のス タイルを鑑みるに,厳しいものがある.
†807論証的な表現には,頭が痛くなるかもしれない. ここの表現は深入りしなくともよい. 何が目的 なのかを,頭を使うのではなく, 機械的に判断してほしい.
†808現時点では,まだ,サイクルは用意しなくてよい.
†809[復習]熱源の温度は一定であった. 熱源とはどれだけでも熱を供給も吸収もできて,それでいて 温度を一定に保つという理想的な外界であった.
†810引き続き,サイクルの議論の慣例に倣い,熱は全て正値とする. 入熱を正とおくのではなく, 放 熱も入熱も正とおく. すなわち, 絶対値で議論する. 深い理由はない. 単に, 不等号が現れる面 倒を省きたいからである. また,符号は証明の本質にほぼ全く影響しないからである.
利用したくならないか
†811.そこで
,折角の熱を無駄にせぬよう
,あるサイクルを回 すことにする
†812.サイクルを作動させるために
,高温熱源はサイクルに
QHとい う熱を受け渡す. サイクルは, 低温熱源へと
QLの熱を捨てる
†813.ここで, 絶えず
QLの熱を捨て続けることが重要である. さもなくば, 低温熱源は, 高温熱源に熱 を渡せなくなるからである
.やはり
,サイクルに対して第一法則を立てる
.サイクルは
,W =QH −QL (10.8)
の仕事をなす. サイクルでは
∆U = 0だからである. なお,
W > 0すなわち
QH > QLであることに注意を要する
†814.以上をまとめる
:1)
低温熱源は
,高温熱源へと
QLの熱を供給し続けると同時に
,サイクルからの 放熱
QLの受け皿となる
.したがって
,低温熱源の正味の入熱はゼロであるの で
†815,実は損も得もしていない
,不生不滅といえる
.2)
高温熱源については注意を要する. サイクルに
QHの熱を与え続けると同時に, 低温熱源から汲み上げた
QLを受け取り続けているからである. したがって, サ イクルに
, “正味の
”熱として
(QH −QL)を供給していることとなる
†816. 3)サイクル全体でみると
, (QH −QL)の正味の仕事をし続けている
.まとめる
——低温熱源の関与がないことがわかった
.そして
,高温熱源は
(QH −QL)なる熱をサイクルに与え
,その全てを仕事に変換していることがわか る
——これは第二種永久機関の創成
——そう
, Kelvinの原理の否定に他ならない
.したがって, 対偶をとれば, Kelvin の原理が成立するならば, Clausius の原理 が成立することがわかった. 前節で
Kelvinの原理の正当性は既に示されているの で
,Clausiusの原理の正当性も間接的に示された
.†811貧乏人(低温熱源)に,お金(熱)を寄付したくなることが自然な感情である.
†812Carnotサイクルでも何でもよい.
†813熱は捨てねばならない. 第二種永久機関の話と混同してはならない.
†814W の値が負になる場合も議論できるだろうが, 本節の動機を鑑みるに,ここに踏み込む重要性 は低いといえる.
†815正味の放熱もゼロである.
†816[重要]QH と勘違いしてはならない.
§ 10.5.3 Kelvin
を否定し
, Clausiusを否定する 示すべきこと
——「
K¯ ⇒C¯」
熱効率
100 %の第二種永久機関が実現可能であるならば
,熱は低温側から高温
側へと自然に流れだす
.
命題「
K¯ ⇒ C」が真であるならば,¯その対偶として「C
⇒ K」も真となる.すなわち, Clausius の原理が正しいならば, Kelvin の原理も正しいといえる.
Kelvin
の原理の否定にあたり
,サイクルとしての第二種永久機関を持ち込む
必要がある
†817.すなわち
,高温熱源からの入熱
QHの全てを仕事
W = QHに変 換できるという
†818,夢のような第二種永久機関の創成に成功したとする
.ならば
,その折角得られた仕事を
,何かに用いたくなるのが人情である
†819.そ こで
,ヒートポンプ
(後述
)を回すことにする
†820.ヒートポンプが
,低温熱源から 奪う熱を
QLとする
.すると
,ヒートポンプは
,第一法則より
, (QL+QH)の熱を 高温熱源
Bに捨てる
†821.以上をまとめるとどうなるか.
1)
サイクルとして
,第二種永久機関とヒートポンプの
2つがある
.いずれも
,周り 続けるだけであって
,一周後には元通りに戻っている
.2)
低温熱源は
, QLの熱を奪われ続けるだけである
.3)
高温熱源については注意を要する
. QHの熱を第二種永久機関に与えると同時 に
,低温熱源から汲み上げた
QLと第二種永久機関から得た仕事
QH(=W)の 和, すなわち, (Q
L+QH)の熱を受け取り続ける. すると,
QH分の授受が相殺 されて, 高温熱源には, 正味の熱として,
QLだけが流れ込む.
以上をまとめると
,低温熱源から高温熱源へと自然に
QLなる熱が流れること となる
.これは
, Clausiusの原理の否定そのものである
.†817Kelvinの原理はそもそもサイクルに言及するものだからである.
†818記号が少ない方がよいので,以後,記号W を使わずにQH を前面に出す.
†819当然である. 仕事は高級な貴重品だからである. 無料タクシーが走行しているのに,乗らない手 はない. 3A304教室のクーラーに使わない手もないではないか.
†820[ヒートポンプ(逆サイクル)]日常生活でいえば,冷凍庫やクーラーと思えばよい. すなわち,低 温熱源から熱を吸い取り,それを高温熱源に捨てるのである. そのためには, (たとえば電気的 な)仕事を要するので, する仕事ではなく,される仕事が必要となる. ついでながら, Carnotサ イクルは可逆サイクルであるので,逆Carnotサイクルとして回せば,ヒートポンプになりうる.
†821やはり,ヒートポンプサイクルでは,状態量たる内部エネルギー変化がゼロであることを用いた.
したがって
, Kelvinの原理の否定を認めるならば
, Clausiusの原理の否定が示 された
.この対偶をとろう
. Clausiusの原理が成立するならば
, Kelvinの原理が成 立することがわかった
.また
, Kelvinと
Clausiusの両原理が等価であることが示さ れた.
§ 10.5.4
ヒートポンプ
Carnot
サイクルは準静的かつ可逆的に進む. ゆえに, 逆行することが可能で
ある. そのとき, 作動流体は, 低温熱源から熱を奪い, 外界から仕事をされて, 高温 熱源へと熱を捨てる
†822このようなサイクルを
,ヒートポンプという
.†822[エアコン]涼しい室内から熱を奪い,電源から仕事をもらい,蒸し暑い屋外に熱を捨てる. エア
コンは, 電気なしでは動かない. すなわち,必ず外界からの仕事を要することが重要である.