る
†320.差分記号
∆は
,状態
2における状態量から状態
1における状態量を引く演
算を意味する
†321.意味するところを日本語でまとめておこう
.準静的な過程において
, (i)定圧過程ならば
,系への入熱はエンタルピーの増加量に等しい
. (ii)定容過程ならば, 系への入熱は内部エネルギーの増加量に等しい.
こう書けば
,定圧と定容
, Hと
Uの対称性に気づくだろう
.定圧過程におけるエ ネルギー
(すなわち内部エネルギーの代替
),これこそが
,§2.6であやふやにしたエ ンタルピーの物理的意味と工学的役割
(の
1つ
)である
.われわれが究極的に知るべきは何であろうか
.内部エネルギーやエンタルピー のような
,いかにも「わかりにくそうな」状態量ではない
.一般市民でも知ってい る熱や仕事こそが役立つといってよい
. (2.37)(2.39)は
,きちんとこの欲求を満た している
†324.(2.36)(2.38)
のように熱力学は添え字に支配されるので, 注意しておこう
†325†326†327†328.問題
8.準静的過程に対する熱力学第一法則から出発して
†329, (2.37)(2.39)を導け
.†324[発展]さらにいえば, (2.37)(2.39)右辺の内部エネルギーやエンタルピーを, 圧力や温度などで 表現できれば,なおのこと便利となるだろう(§4で導出).
†325 [添え字と変数固定] 添え字の変数xは,その変数を固定することを意味する:
fx=const.≡fx (2.40)
熱力学特有の記号であり,単に,添え字の表現を簡潔にする以上の意味はない. 本資料では, 以
後“= const.”を省略するが,省略したくなければその都度書けばよい.
†326[添え字と導関数(主に熱力学IIで多用する熱力学特有の表記)]独立変数yを固定した偏導関数
∂f(x, y)
∂x の分子f(x, y)の表現を簡潔にする意味で,引数(x, y)を明示するのではなく
(∂f
∂x )
y
のように,右括弧の外の下添え字に,独立変数が何かを明示する. いずれの表記においても, 独 立変数y は固定されている(確認せよ). わからなければ,偏微分の定義(解析学IIで履修済)を 復習せよ. むろん, 表記の簡潔さ以上の意味はなく,両表記は数学的には等価である. “独立変 数が何かを伝える”という本質を見失わなければ,これに従わなくともよい. 熱力学IIで詳述す るが,先取り学習者を想定しての脚注である.
†327[偏微分の定義] 固定は一定や定数“ではない”. いかにも y が一定という装いをさせる表現
y= const.に騙されてはならない. 偏微分の定義式をよく眺めれば,この理由に気づくだろう.
†328[注意]†325や†327は,物理学や工学における一般的な表記ではないが,熱力学のほぼすべての 書物はこの表記にしたがう. 単に,表記を簡潔にする以上の意味はないので,いま全てを覚えよ うとせずとも,その都度確認すればよい.
†329[復習]強調し続けているが, このように, 必ず第一法則を用いることを忘れてはならない. 第一 法則を使わないとは,§0で述べたように,エネルギーの不自然な変化を許すことを意味する(系 に仕事を加えたのに,内部エネルギーが減少する, など).
§ 2.8 熱機関とサイクル
†330熱機関
(heat engine)あるいはサイクル
(cycle)とは
†331,系の状態が変化し, 再 び元の状態に戻る過程を指す
.すなわち
,状態
1 (始点
)と状態
2 (終点
)が同じ過程 を意味する
. p–V線図において
,サイクルは閉曲線
(closed curve)を描く
.§ 2.8.1
サイクルにおける状態量
1
周すれば元に戻るのだから
,始点と終点の間で
,状態量の変化はゼロである
.いいかえれば
,サイクルならば始点の状態量と終点の状態量は等しい
†332.§ 2.8.2
第一種永久機関
自動車のエンジン
(系
)が
,燃料
(入熱
)なしに永久に動き続ける
(仕事
†333をす る
)とすれば
,われわれがすべきことなど何もないだろう
.このような熱機関を
,第 一種永久機関
(perpetual motion machine of the first kind)とよぶ
†334.第一種永久機関は
,残念ながら理想に過ぎない
.これを直観的に理解するので はなく, 論理的に証明しよう
†335.道具はむろん第一法則
(2.8)以外にありえない.
問題
9.第一種永久機関が存在しないことを
,第一法則を
(数式を
)用いて証明せよ
.†330現時点では省略予定だが, 後戻りする予定がある.
†331[応用例]名称にのみ触れておく. Carnot (カルノー)サイクルが最重要であるが,工学応用にも
簡単に触れておこう——ピストンエンジンとしては,内燃機関(ストーブのようなもの. 定義は 別にある)は,ガソリンエンジンのOttoサイクル(定容加熱. 火花点火機関),ディーゼルエンジ
ンのDieselサイクル(定圧加熱. 高温高圧空気中への燃料噴射による自着火),高速回転ディー
ゼルエンジンのSabath´eサイクル(定容と定圧の組み合わせ, 2段燃焼)が挙げられる. 外燃機
関(お風呂のようなもの. 定義は別にある)は,最近注目を浴びている,スターリング(Stirling)
エンジンが挙げられる. また,ガスタービンのBraytonサイクル(定圧受熱・放熱. 空気を, 圧 縮機, 燃焼器,タービンへと順次通過させ,動力を取り出す). 蒸気原動機のRankineサイクル, エアコンや冷蔵庫などの冷凍サイクル. ほかにも枚挙に暇がない(熱工学で学ぶ).
†332[基礎]サイクルならば,この性質は,いかなる状態量にも(圧力,容積,絶対温度,内部エネルギー 以外でも)適用できることを強調しておく.
†333[応用]ここでは, 応用上の意味で,仕事よりも,仕事率や動力(power)とよぶ方がよいだろう.
†334[発展]第二種永久機関とよばれるものもある.
†335[指針]たとえ,感覚的な理解であっても,それは,自身の理解とくにイメージを促進するだろう.
しかしながら,他者に対しては何の説得力もない. 数学という世界共通言語を使って証明されて はじめて,客観的情報を提示して,「永久機関は存在する」と豪語する者を論理的に正すことが できる.
[
証明
] (i)外界からの入熱はゼロである
. (ii)サイクルゆえに
,状態量である内部エ ネルギーの変化はゼロである
. (iii)熱力学第一法則
(2.8)から
,仕事を考察すると
,W = 0