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§ 4.1 理想気体の熱容量

ドキュメント内 (A2) , 0, (ページ 80-83)

一般には

,

熱容量と比熱は変数であるが

,

理想気体ならば熱容量と比熱は定数 であることが経験的にわかっている

422423.

とくに比熱の場合, 種々の理想気体に 対する数値が物性値として整備されている

424.

われわれは

,

経験的に

,

系に入る熱量

dQ

が大きいほど

,

系の温度変化

dT

も 大きくなることを知っている

425426.

系が理想気体ならば

,

この関係が「比例」関 係であることが判明済みであって

427

dQ∝dT (4.1)

と数式で表現できる

428.

では

,

比例の度合いはどれほどか

. 2

倍か

. 10

倍か

.

表現

(4.1)

だけではわからないではないか

.

だからこそ

,

比例定数

C

を用意して「比例

419[記号]以後,添え字のV = const. を単にV とかく.

420この後で,理想気体という仮定を新しく導入するので,仮定を整理整頓しておかねば,公式の適 用範囲を逸脱して用いてしまうことが危惧されるからである.

421[もっといえば]熱力学I(ほぼ)全てでは,質量は定数と仮定する.

422[厳密にいうと]熱容量は系の量に依存するという性質があるので,一般には定数ではない. しか

し,いま,系の質量は一定であるがゆえに,定数とよぶことは許される.

423[補足]理想気体の定義(§3.1)に,熱容量や比熱が定数であることを課さない書物もあるので注 意を要する. 熱容量の定義にも, 書物ごとに軽微な差異が見受けられる. しかし, それらを網羅 的に把握することは,初学者にとっての本質ではない.

424[注意]熱容量よりも比熱のことを物性値(physical property)とよぶことの方が多い. 単位質量 あたり(比率)の方が整備しやすいことは,想像に容易いだろう.

[実際に]酸素や水素の比熱の値をgoogleで検索してみるとよい.

425[日常経験]入浴による体温上昇(入熱),冷蔵庫による牛乳の温度低下(放熱)を想像されたい.

426[数学]微積分の恩恵に授かるために,やはり,微分形で議論を進めて, 最後に積分するという戦 略をとる.

427[経験]熱量と温度変化が「比例」するとは,経験的な法則にすぎない. 厳密な意味で, 正当性が 検証されているわけではないし,法則なので証明などできない.

428[記号]AB とは,AB に比例することを意味する.

の度合」を定義すべきという発想に至る

: dQ|{z}

C定義

CdT (4.2)

この

“比例定数” C [J/K]

こそが熱容量の定義である

429430.

この定義

(4.2)

は理 想気体に限定される

431.

熱容量

C

,

微小量同士をつなぐ比例定数として定義さ れる

432.

ここで

,

入熱

dQ

よりも温度変化

dT

の方がわかりやすくなじみ深いと いう経験的事実を強調しておきたい

.

熱容量

C

の定義において

,

有限量を用いてはならないことを注意する

433.

§ 4.1.1

定圧過程と定圧熱容量

CP

理想気体の熱容量の定義

(4.2)

にエンタルピー型の第一法則

(2.36)

を適用する

: dQ|P |{z}=

保存(2.36)

dH |{z}

経験(CP定義)

CPdT (4.3)

1

つ目の等号は第一法則

(2.36)

そのもの

——

すなわち保存則である

434. 2

つ目の 定義記号

——

すなわち経験則は

,

定圧過程における熱容量

C

,

圧力が一定であ ることを匂わせる添え字

P

を付けて

, CP

という記号に単に書き改めただけであ る

. CP

を定圧熱容量という

. 1

つ目の等号は理想気体に限らないが

, 2

つ目の等号

429[発展](4.2)CdQ/dT と書いてもよいし,むしろその方が「Cの」定義らしいだろう.

しかし, (金川個人は)この表記を好ましくは感じない. なぜならば,熱が非状態量であることか らわかるように,これは,極限として定義される,厳密な意味での微分係数(導関数・微分商)で はないからである. さらに,この分子 dQ や 分母dTをひとかたまりとみなして,形式的に第 一法則などを代入することも, 誤りではないが, 好ましくは感じない.

430[例]バネマス系の復元力(restoring force)と変位の比例を言及するHookeの法則(力学で履修済) F =kx ⇐⇒ kF/x

における比例定数(ばね定数)k の定義と同様である. あるいは,弾性体(elastic body)のひず

(strain)と応力(stress)が比例に言及するHookeの法則(材料力学)とも類似の位置にある.

431[発展]天下りに感じるだろうが,現時点では,理想気体の具体例として受け入れてほしい. いま, 諸君がしっくりこなさを感じているとしても,熱容量の一般論(熱力学II)の中で解消されるか らである. 一般論も具体例もともに重要なのである. なお,一般には,熱容量は変数である.

432高校までは,有限量同士をつないでいたはずだが, 本講義で定義を更新する.

433有限の入熱Qと有限の温度変化 ∆T の間に,Q=C∆T なる関係は成立しない”. 理由は講 義内で述べる.

434[重要]定圧かつ準静的な過程における熱力学第一法則に他ならない. 新しい概念や記号が出て きても, とにかく,第一法則から軸足を移してはならない.

は理想気体に限定される

(

確かめよ

)435.

工学応用の観点上

,

有限量でなければ意味がないと述べた

.

だからこそ

, (4.3)

を, 熱平衡状態

1

から状態

2

に至る過程

12

に対して定積分しよう

436.

すると

Q12 =∆H =CP∆T

| {z }

わかりにくい=わかりやすい

(4.4)

と計算できる. ここに,

∆H =H2−H1, ∆T =T2−T1

である

437.

この積分が許 されるのは, 理想気体の

CP

が定数だからであることを強調しておく

438.

「多数の記号が現れてきた」と悲観視し始めているかもしれない

.

そのような とき

,

「どの量がわかりやすいか

(

扱いやすいか

,

測定しやすいか

)

,

逆にわかり にくいかを考えることが重要である

†439.

「わかりやすさ」の判断には主観を含め ざるをえないが

,

温度変化

∆T,

エンタルピー変化

∆H,

入熱量

Q12

の順に測り やすいと判断する

.

なぜなら

,

まず

,

熱容量

CP

は物性値であるからすぐさまわか るし

440,

温度差

∆T

を測ることも比較的容易と考えられるからである. したがっ て, (4.4) は, 最右辺側から左辺に向かって, 系への入熱やエンタルピーの変化量を 教えてくれる式であると解釈できる

.

漫然と式変形を行ったり

,

機械的に数値を代入するのではなく

,

このように頭 を使って「何がわかりやすいか」の観点に立つことが重要である

.

このような考え 方を許してくれる自由度の高さこそが

,

熱力学の最大の特長だからである

441.

435[補足]もちろん, (4.3)のようにひとまとめにしなくとも, dQ|P = dH およびdH CPdT と わけて書いてもよい. 前者は理想気体に限らないが, 後者は理想気体に限定される(確かめよ).

436微積分を用いる動機付けこそが重要である. 「教科書に指示されたから」や「便利そうだから」

などといった安直な姿勢で微積分していては,工学応用など望むべくもないだろう.

437[誤答例] ∆H =H1H2 は誤りである. これは,状態2から状態1への定積分

1 2

に対応す る. 初学者はまだ慣れていないので,案外,馬鹿に出来ない.

438[発展]一般には熱容量は変数である(熱力学II).したがって,理想気体でなければ,また液体や 固体ならば,これらの数式群は使えない.

439[重要]熱力学IIの最後まで重要なポイントとなる. 多数の記号をいかにわかりやすく論理立て て整理するかこそが熱力学だといえるからである. 「わかりやすさ」の観点から整理すること で,体系的理解につながり,覚えるべき記号など実はほぼないことに気づくことができる. さも なくば,熱力学の学習は,無機質な記号を詰め込むだけの無意味な丸暗記に終始する. このよう な観点に立って整理することで,多数の変数の定義という知識を構造化かつ体系化できて,知識 に理解を吹き込ませることができる.

440[用語]物性値とは,物質固有の値であって,表やgoogleに尋ねれば判明する. 厳密には,熱容量 は系の量に依存するので,物性値ではないが,現時点では,物性値であると思っても差し支えな い.

441[指針]式変形で満足してはならない. どのように役立つのか, どのような場面で有用か,どの表

実際には

,

熱を消去した次式を多用する

.

熱はわかり難いからである

:

dH =CPdT, ∆H =CP∆T, H2 =H1+CP(T2−T1) (4.5)

§ 4.1.2

定容過程と定容熱容量

CV

方法論は前節と同様であって, エンタルピー

H

が内部エネルギー

U

に変わる だけである. 理想気体の熱容量の定義

(4.2)

に, 内部エネルギー型の第一法則

(2.38)

を適用すると

,

dQ|V = dU ≡CVdT (4.6)

1

つ目の等号は第一法則

(2.38)

そのものであり, 2 つ目の等号で定義した

CV

を定

容熱容量

(理想気体ならば比例定数)

という. やはり, 状態

1

から

2

まで定積分する:

Q12 =∆U =CV∆T (4.7)

数式表現が

,

第一法則の形から変わり始めたので

,

「全く異なる話に移った」と勘 違いしがちである. 決して第一法則以上ではないことを再三強調しておきたい

442.

問題

20.

系が理想気体であるとする. 準静的過程の熱力学第一法則から出発して,

(4.3)–(4.7)

を全て導け

.

理想気体の仮定抜きに

,

どこまでが議論できるか

,

できな

いかも

,

あわせて注意深く整理せよ

443.

ドキュメント内 (A2) , 0, (ページ 80-83)