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6図

ドキュメント内 幼児の文法能力 (ページ 160-165)

      {lilii}{:::::::::}{賜{…讐詞}{い}r}{謝{一門詞}

 イ より概括的な一般動詞から,特殊動詞が分化されるにつれ,それらの特殊動詞を概括する一   般動詞が発生していく過程(1−5−5図に点線でその図式を書きこんである)。楽器に関する   動詞で,幼児が,のちに,それらの特殊動詞を概括する動詞,「ならす」「演奏するsの習得は,

  このような過程として生じると思われる。

 このように,一般動詞から特殊動詞が分化一統舎されていく過程について,上のような図式をた ててみることが可能だが,しかし,現実に,子どもの中で生じている過程は,このよ5な単純なも

第5節 結果の検討  159

のでなく,より複雑な過程がその中に含まれると思われる。というのは,幼児の場合でもその分化 の過程で新しい語を習得する際に,その語を当該の対象のクラスの範囲を越え,ほかの語に不適切 に使われることが,しぼしばあるからである。1−4−21表にみられる, 「吹く」という動詞をバ イオリン,ピアノの場合に使ったり, fハーモニカ,フ=をひく1と表現したりする例はこの場合 に相当する。また,作成に闘する動詞の場合,「毛糸でセーターをぬう」「積木で家をたてる」など の不適切な用法がみられた(1−4−48,49表)。動詞が分化していく過程で,幼児は,このよう な誤りを何回もくり返す中で,適切にそれらを使用できるようになると思われる。

 このように,語と語が統辞的に結合するとき,それらは,無綱限に結合できるわけでなく,その 語と結合できる語は,意味的に,結合可能な一定のクラスの語に限られていることは,最近では,

意味的三三(semantie yestrietion)や意味的拘束(semantic constraints)と1呼ばれ,研究されて いるが,幼児の動詞の分化一統合の過程には,このような各語の意味制限や拘束を習得し,意識化

していく過程が含まれているのである。

(3) 行為の様式,手段あるいは存在の様式が対立する動詞間の分化

 前項で,一般動詞一特殊動詞の分化一統合の問題として扱った作成と楽器の演奏に関する動詞の 場合,動詞の分化は,特定の対象(例えば,家,小屋,建物)と特定の動詞(例えば,建てる)の 結合が作成される中で,特定の諸特殊動詞(建てる,編む,折るなど)が,それぞれ異なった特定 のクラスの対象を(目的語として)支配,結合することによって生じる。したがって,この場合,

動詞の意味対立や意味制限は,特殊動詞の間で,屠的語として結合する対象のクラスの範囲(特性)

をめぐって生じる。それに対し,この調査で扱った「割る一切る」,「やぶる一切る」,「刈る一むし る」などの動詞の間にみられる意味の対立は,目的語として支配結合する対象は同じで,その動 詞そのものが表している行為の様式,手段が異なっていることによって生じている。この場合,子

どもの中で,動詞の分化は,どのように生じてくるのであろうか。この調査では,就学前の幼児は,

前者2対の動詞については分化が進んでいるが,後者1対については,まだ分化と対立ができてい ないということを示したにとどまり,上記の問題については,かならずしも満足がきるデータが得 られたわけではない。しかし,この問題について,いくつかの示唆が得られる。一つは,前項の場 合と同じく,より一般的な意味をもつ動詞から,個々の動詞が分化してくる場合である。これは,

「刈る」一「むしる」という場合にみられた。この対立を幼児は習得しておらず,幼児の多くは,こ の現実を,「切る」一「とる」,「切るr「切る」,「とる」一「とる」で表した。「刈る」をいえなかった 幼児の多くは, 「切る」を使い,「むしる」をいえなかった幼児の多くは,「とる」を使っているこ とは,「刈る」「むしる」という語が,発達的には,「切る」, 「とる」というより一般的な意味をも つ動調から派生,分化している可能性が強いことを意味している。

 第2は,習得する丁丁より,対立したものとして学習していく可能性である。このようなケース は,「割る1一「切る」のような,類似してはいるが,行為の様式において一般一特殊の関係で,片:方 160  第1車 幼児の飯頭の習得と動詞の分化

が,他方を含む関係にあるのでなく,対等の関係で対立する基本的な動詞間の場合にみられるので はないかと思われる。 「割る」一「切る」という動詞の場合,ガラス,果物,木のように多くの臼的 語を共通してもつが,一方でそれぞれの動詞の示す行為の様式の特殊性を反映して,片方にだけ結 合する対象もある(切る一糸,紙,指;割る一茶椀,皿)。このような場合,幼児は,その語の示 す行為の特殊性,手段と結びつけて,それらを当初より匿別した諮で表現することは比較的容易で あろう。

 しかし,語の意味特性のうち,共通した特性をもち,かつある特性で対立している動詞群の場合,

それらがどのように習得されていくかについて,今後,年齢の低い子どもについての追跡的なデー タで慎重に分析してみる必要がある。これは,上述の「切る」一「割る」についても,あてはまるが,

その他として例えば,前にも間題にした「いる」「ある」の動詞の分化,これらの動詞は,二物の

「存在」を示す点で共通した意味特性をもつ。しかし共通藷の場合,前者は,移動する生物(動 物)の存在を,後者はその他の存在を示す場合に使われる。このような場合,発達的にみると,ま ず最初に「いる」「ある」のいずれか一方が,存在の意味特性と結びつき,それが動物,その他の 区分がなく,すべての事物の存在を示すものとして使われ,後になってその催の意味特性の学習と 結びついて「ある」「いる」が区分されるというコースをとる可能性がある。これらの問題につい て,これまで,ほとんど,E本語の場合について研究されてこなかった。各語の意味特性を,明瞭 にしていく言語学的研究とともに,それらに基づいて,その発生,発達過程の力動的過程を研究す る課題が,これらの研究から提起されるのである。

(4) 動詞の習得と構文の習得の相:互的な三三

 今図のこの実験的調査のねらいの一つは,動詞の習得一その意味面の発達一一と,構文の留得 一統辞面の発達  が,どのように相互に関連し禽っているのかを検討することにあった。この 点について,われわれは,どのような示唆を得ることができたのであろうか。これについて,この 調査だけから,明瞭な解答を得ることはできなかったが,その可能性について,いくつかの示唆を 得ることができた。

 一つは,一定の動詞の習得と結びついて一定の構文がまず完成され,その構文を利用して文をつ くる中で,動詞(の意味)が,一層分化していくという形の,相互作用である。この相互作用が,

典型的に現れていると思われるのは,動詞が,より一般的な意味をもつ動詞から,特殊,山鼠な動 詞へと分化していく場合(この調査の場合,演奏,作成に関する動詞)である。たしかに,この場 食,発達的には,文が単文としての形を整える以前の連語の水準で,動詞が分化していく可能性が ある。だが,われわれが,この横断的な資料の分析でみつけ戯した諸水準が,示唆しているのは,

幼児は,まず一般的な動詞(つくる,ならす,する,やるなど)で,可能な一定の構文をつくり出 し,その構文で,さまざまな対象を含めた文をつくる中で,対象の諸特性に応じて,より特殊に分 化した動詞を蕾得していくという形の発達であった。そこに,われわれは,動詞の意味面の発達に

第5節 結果の検討  上61

おいて,構文の習得が果たす役割をみることができる。 「〜が〜で〜をつくる」 「〜が〜で〜を切 る」という構文の場合,例えば,材料や手段を示す「で格」,対象を示す「を格」のところに,い ろいろな語(対象)を入れ,新たな文をつくることは,それらの語(対象)の特性に応じた分化し た特殊な勤詞の習得を,内的に準備することになるからだ。

 しかし,このことから,構文面の発達が,動詞の意味面での発展に,常に先行すると考えてよい のだろうか。この問題は,ここでは,即断できない。動詞の意味面での発達が,新たな構文の習得 を準備するという場合もありうるからだ。だが,このケースについて,今回,適切な資料を得るこ とができなかった。動詞の習得と構文の習得が,もっとも盛んに行われる2〜4歳の三期の,幼児 の追跡的な資料で,このへんの相互作用を,今後,綿密に分析してみる必要がある。

 「もらう」「借りる」「あずかる」「ならう」の動詞を扱った上記の物を受ける立場の構文について の幼児の反応から,動詞の習得と構文の習得との相互関連について,興味ある事実が明らかになっ

た。

 たしかに,上記の動詞の使用を期待した課題文において, 「借りる!「あずかる」「ならう」の動、

詞を正しく使うことのできた幼児は,少なかった(「借りる」;4〜5歳クラス14.5%,5〜6歳ク ラス30,9%,「あずかる」;4〜5歳クラス15. 5%,5〜6歳クラス29. 3%,「ならう」;4〜5歳ク ラス1.O%,5〜6歳クラス5.7%)。いわんや,「貸す一借りる」,「あずける一あずかる」,「教える 一ならう」の対動詞を使い,これらの関係を表せた幼児は,きわめてまれであった。だが,これら の関係が,幼児にまったく表現できなかったわけでなく,多くの幼児は,補助動詞「〜あげる」

ヂ〜もらう」を使い,借りる,ならう現実を,「貸してもらうll,「教えてもらう」と表現できたので

ある。

 このことは,動詞の習得と構文の習得との相互関係について,何を示唆しているのであろうか。

 これについて考える場合に,われわれが,考慮しなけれぽならないことは,人間間の行為のやり とり一行為の方向性一,特に行為を受ける立場の表現は,日本語の場合,ある場合に3種類の 方法一言語的手段一で,表現することが可能であることである。第1は,補助動詞「やる(あ げる)」一「もらう」を利用する方法,第2は,受動文の構文を利用する方法。第3は,行為の方向 性が含まれている動詞があるなら,それを利用する方法である。例えば,他人からものを教わる場 合,下の3種類の方法で,行為を受ける立場の文をつくることができる。このうち,第1の方法 では,行為の方向性(文の立場は),補助動詞「もらう」の助けをかりて意味篇構造的に,第2

花子は先生に字を[=コ

(習う教わる語彙扁意味的)<諜∵謹1:_り

162  第1箪 幼児の講文の習得と動詞の分化

ドキュメント内 幼児の文法能力 (ページ 160-165)