5 ハ061
第5節 結果の検討
以上,得られた結果について述べてきた。
検討してみよう。
これらの結果を,設定した学的にそって,少し整理し,
第1項 就学前児の文作成・構文能力
幼児の文作成能力や構文能力は,いろいろな方法で調べることができるが,われわれが,この調 査で採用したのは,幼児に文をつくりやすい条件を与えると思われる文モデルをともなった図版を 利用し,一定の構文をもった文について一定の練習を行い,自力でその文を,図版を使ってつくり 出せるようにした後,構文は同じだが内容の新しいいくつかの文をテスト課題として与え,子ども が自力でどの程度,その文をつくり幽せるかを調べるという方法であった。練習過程では,図版と 積木を利用して,実験者がまず実際に演示して,文の見本を示し,のちに子どもに,それを模倣:
再生させ,練習問題2問を模倣=再生後,自力で,その文を逃続,正しくできるようになっている かを調べ,なっていなけれぽ,その基準に到達するまで,模倣=再生の学習をくり返した。そして,
テストにはいった。テストでも,2試行の後に,当該の構文ができない場合,ふたたび,補充練習 として,同じ練習問題で,模倣漏再生の練習を行った。そういう意味で,本調査で採用した方法は,
構文については,単にテストをするというのではなく(特にできない子については),その中に簡 単な学雷過程を含ませ,そこで受容された学習,そこで作成された文の形が,どの程度,幼児によ
って,テスト課題の問題に一般化されるのかをみようとしたものであった。
したがって,このような場合,幼児の文作成・構文能力を,練習過程の中で学習の受容の様子,
テスト課題における反応の二つの側面から,評価することが可能である。またすでに,こういう観 点から,第3節で得られた結果を構文ごとに述べてきた。ここでは,これらをまとめ,そこから,
どういう知見が得られるのかを検討してみよう。
(1) 文作成・構文についての幼児の学習受容能力
図版を使っての,7種の携文についての練習過程で,一一一一貫して明らかにされたことは,このよう な図版を使った場合,4〜5歳クラス,5〜6歳クラスの幼児のほとんどは,この種の文作成の練 習,学習を受容するということであった。練習は,実験者が実際に図版に積木をのせながら演じて みせた文(蛮語行為)を,そのまま,模倣=再生するという形で行われたが,幼児は,比較的容易 に,その行為を模倣謹再生した。実験者は,その際,提示した見本文と完全に同じでなければ,再 度見本を提示し,やり直しを要求したが,このような厳しい基準でも,割合多くの子どもは,実験 者が見本を提示すると即座に,第1試行目で,その見本を再生することができた。第3節で,各構 文ごとに,見本の再生に要した試行数のデータを掲げたが,構文問での比較をするため,第1試行
第5節 結果の検討 145
1−5−1裟 模倣:再生の過程で,第1試行囲で,見本文をNしく再生できた入撒の翻合(構文聞の比較)
クラス 4〜5歳クラス
a
5〜6歳クラスABCD冠FG
練(i) 練(li) 平均 練(1) 練(li) 平均
77. 7
77. 7
87. 4
72. 8
65. 1
68. 0
56. 3
92. 2
80. 6
92. 2
77. 7
71. 8
73. 8
66. 0
85. 0
79. 2
89. 8
75. 3
68. 5
70. 9
61. 2
91. 9
85. 4
95. 9
70. 7
73. 2
70. 7
761 4
95. 1
89. 4
95. 9
78. 1
86. 2
74. 0
79. 7
93. 5
86. 3
95. 9
74. 4
79. 7
72. 4
78. 1
oo 1
o
72.1
鱒 懸
79.2
12.6 10.3
(4〜5歳クラス)
4,9
V17 M6241・4 tw,60.4 QS.60
3 4 5 6
囲、練習闇題1問目
〔練習問題2問脂
,4Ao.1 ve・4 e.1 o o
1−5−1國 提示された見本文 を,正しく模倣=再生してい く過程の平均的な姿
1 2 7 8 9
(試行圓数)
oG 1
se
o
80,6
蟻
ぐジ 85.5
13.O
U93
(5〜6歳クラス)
1 2
3E6i,2:1,2・i ve・60g o,2.D・7
3 4 5
Q,・S.60 0
6
0工 0.20 7 8 9 (試行測数)
146 繁1章 幼児の構文の国酒と動詞の分化
Eで正しく再生できたものの割合を,もう一度整理して示すと,1−5−1表のようになる。第1 試行目で再生できた人数の割合は,梅文の難易によって異なり,また,1鳥目より,2問鼠の方が 再生しやすいため,その割合は高くなっているが,もっとも難しい構文であったGの構文でも,4
〜5歳クラスで,55〜65%の幼児が第1試行員で,正しく:再生できたことをこの表は示している。
また,やさしい構文の場合,90%以上の幼児が,1回昌で正しく再生した。また,第3節の1−3
−!表,1−3−4〜1−3−19表をみるとわかるように,もっとも難しかった構文でも,3試行 までに,4〜5歳クラスなら85%以上の幼児が,5〜6歳クラスなら90%以上の幼児が,文を正し く再生する。これらのことは,図版を用いて文を再生するという課題は,就学前の幼児にとって比 較的容易なものだということを意味している。
この図版を用いた文の再生過程の平均的な姿を得るため,A〜Gの構文の練習問題の試行回数の 分布を,平均してグラフに表してみたのが,1−5−1図である。A〜Gの感文で,平均的セこいえ ぽ,4〜5歳クラスの子ども,!匿旧なら,72.!%の子が,2間暇なら79.2%oの子が,5〜6歳ク ラスなら,それぞれ80,6%,85.5%の子が,第1試行目で,文を正しく再生することになる。もち ろん,第1試行で,実験者の行為を模倣できない揚合がある。特に,最初の第1試行で,子どもに よく現れる誤反応は,だまって穣木のみをおく,あるいは,一つ積木をおいて文全体を述べてしま うという反応である。しかし,この場合でも,実験岩が,再度,文の見本を示せば,多くの子は,
それで正しく文をつくるようになった。
練習では,このような見本の模倣=再生の学習の後,自力で練習問題2問を連続して行わせ,そ れらを正しくつくり出せるか否かを学習チェックテス5として調べたが,4〜5歳クラスの幼児は,
平均して約60%(もっともやさしい問題の場合に81.6%,もっとも難しかった場合,47.6%)の子が,
第1圓目のチェックテストで,基準に達した。また,どんな場合も3回貝までに,少なくとも83.5
%(平均89.9%o,最rtr!OO%)の子が基準に達し,4回,5圓以上反復するのはごくまれであった。
5〜6歳クラスの場合は,平均して65.9%(最高82.3%,最低51.2%)の子が1園目でパスし,ど んな場合も3回目までに90%以上の子が基準に到達し,おなじく4図以上模倣ロ学習を反復するの は,ごくまれであった。
しかし,この練習の過程で,いくら見本を提示しても,その見本を再生できない場合,あるいは,
いくら練習しても霞力で二つの文を連続して正しくつくり出すに至らなかった場合が,特に4〜5 歳クラスに,より多く生じた。この場合,そのままテス回こはいったが,その中の治乱かは,テス
ト自体が困難であるため,次のサブテストに移らず,途中で放棄せざるを得なかった。1−5−2 表は,合格基準に達したものの割合を,全体で整理したものである。AからGへ進行するにつれ,
合格基準に達しなかったものの割合はふえ,最後のGの構文では,途中でテストを放棄した子を含 め,基準に達しなかった子どもは,4〜5歳クラスで103人中16人(15.5%), 5〜6歳クラスで 123人中7人(5.7%)になった。しかし,この練習過程の学習チェックテストを通過した人数の割
第5節 結累の検討 147
1−5−2表 練習過程で一定の合格基準に達した割合
クラス 4〜5歳クラス(N=1G3) 5〜6歳クラス(N漏123)
構
文
途てら 練たにた 中練な 習が達 で習か に合し 放につ は格な 棄はた い基か しい つ準つ
全開基準に達 した人数と全 体の中での翻 合 練習にはいっ て合格基準に 達したものの 割合 途中で放棄し て練習にはい らなかった
練たにた 習が達 に合し は格な い基か つ準つ
合格基準に達 した人数と全 体の中での零 合 練習にはいっ て合格基準に 達したものの 割合
A
% 2 3 98 0 0 12395.1 97.0 100.0 100.0
B % 4 3 96 0 0 123
93.2 96.9 100.0 100.0
C % 5 2 96 0 1 122
93.2 97.9 99.2 99.2
D
% 7 4 92 0 2 12189.3 95.8 98.3 98.3
E % 8 7 88 2 2 119
85.4 92.6 96.7 98.3
F % 8 5 90 3 3 1!7
87.4 94.7 95.1 97.5
G % 10 6 87 4 3 116
84.4 93.5 94.3 97.5
1−5−2園 練習で学習チェックテストを通過した人数の割合の構文,年齢別比較
oo 1
90
80
70
60
0
通過した人数の割合
;ミ…=こミ≡≡ミ≡≡;≡≡i1
5A
A B C D E F G
(テストの進行→) 騰文)
合を年齢群別に比較してみると,1−5−2図にその結果を示すように,4〜5歳クラスのうち低 年齢群である5歳前半群(5A群)は,ほかの群に比べ,合格基準に達しなかった子の割合が特に 大きいことがわかる。
これらのことは,一般に,図版を利用した,このような文作成・構文の練習は,5〜6歳クラス,
4〜5歳クラスのほとんどに受容されるものであるが,4〜5歳クラスの中の一部,特に低年齢群 に,解文によってこの種の練習を受容できない子どもがいる(割合にして,4〜5歳クラスの約!5
148 第1章 幼児の構文の習得と動詞の分化
%o)ということを意味している。
(2) テスト課題における幼児の正反応
このように,一一定の練習ののち,文作成のテスト課題を幼児に与えた。その結果,幼児に課した 7種の構文のうち,いくつかの構文は,幼児にとって,やや困難であることが明らかになった。4
〜5歳クラスの幼児を含めて,A, B, C, Dの構文は,幼児に比較的容易であったが, Eの付着 樽文「〜が〜に〜をつける」,Gの授受構文(2)「〜は〜から(に)〜をもらう」は,5〜6歳クラス を含めて,幼児により困難であった。このことは,各構文の平均正反癒率(1−5−3表)から知 ることができる。
このことを,もう少し明瞭に示すため,各購文の正反応率を,年齢群で比較してみると1−5−
3図,1−5−4図のようになる。この表からわかるように,正反応率は,同じクラスでも年齢の 高低によって差が認められ,5A群ではF, E, Gの構文が,5B群,6A群でE, Gの構i文が,
1−5−3表 各構文の平均颪反応率
クラ・州 4F 4M 5F 5M
緻唄
51 52 103 60 63 123%%%%%%% ABCDEFG ︵講文の型︶
85. 88 87. 69 9e. 85 90. 60 86. 86 96. 73 87. 25 88. 46 74. 51 76. 60 83. 66 83. 65 54. 90 42. 6386. 80 90. 72
91. 75
87. 86
75. 56
83. 66
43. 71
94. 00 94. 6e 98. 15 98. 77 99. 72 98. 15 98. 67 95. 08 91. 67 83. 60 94. 72 91. 27 72. 50 73. 28
94. 30 98. 46
98. 92 96. 83
87. 53
92. 95
73, 04
1−5−3図 各構文の正:反庵率の年齢群問の比 較(1)