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館内システムの導入による経営・業務改革

ケース 5   笹屋ホテル

3  館内システムの導入による経営・業務改革

  本ホテルは、日本旅館の多様なサービスを円滑に行うため、1997年に第1 次館内システムの運用

開始し、その後様々な工夫、レベルアップを行って、2004年7月、第2次館内システムの運用を開 始した。これによる経営・業務改革の状況と今後の課題を以下に述べよう。

(1)顧客接点のプロセスとITマネジメントの方向

  旅館における顧客接点のプロセスの順番は、主に予約―チェックイン―部屋休憩―お風呂―夕食―

売店―バーで歓談ー就寝―朝食―チェックアウトの通り。 

通常、旅館では従業員の全員参加型のリレー方式のホスピタリティーにあふれた顧客サービスの提 供が命である。

本ホテルでは、以下に述べるとおり、伝統的な極上のサービス提供のノウハウに裏打ちされた自社 固有の旅館サービス提供システムにおいて、中型で複数の機能を持つ宿泊施設(純和風、鉄筋ビル、

等)、レストラン、お風呂、等を持つ複合サービス施設を舞台として、フロントオフィスでの顧客満足・

感動確保とバックオフィスでの効率的な事業運営を目指して、全員が顧客情報を共有し、その組織の 壁を串刺しにした業務プロセス連携を行うための全体最適化に向けた仕組を形成して、対応する顧客 単位での効果的・効率的な業務ルーティーンの実践によるホスピタリティーの高いサービス提供を実 現している。

(2)第2次館内システムの内容と効果

①  主な動作環境

    本システムは、マイクロソフト社のクライアントサーバー方式によるサーバーと端末により 構成され、DBシステムも含まれている。

②  主なシステム構成

  各システムを顧客接点のプロセスに対応して並べると以下の通りとなり、お風呂以外のプロセス は、全て対応している。

  ⅰ  予約システム(バックオフィス、中華レストラン)

  ⅱ  フロントシステム(フロント、売店、バー)

  ⅲ  配膳システム(和食厨房、旅客棟)

  ⅳ  館内インフラ・自動ポケベル呼び出し

(フロント、コンシェルジュ、バックオフィス、旅客棟、サービス担当)

  ⅴ  顧客システム(コンシエルジュ、売店、中華レストラン、バー)

  ⅵ  中華レストランにおけるPOSシステム

③  システムの運用の内容と効果

    「予約システム」から顧客情報が入り、「フロントシステム」での対応に加え、これに基き、「配 膳システム」で調理と配膳時間の最適化を図る。また、「館内インフラ」で顧客の館内での移動状 況を関係者全員が把握し、自動ポケベル呼び出しで、各担当者が迅速に自主的に情報確認する。

さらに、「顧客システム」で必要な場所での顧客情報の確認、ホスピタリティーの高いコンシェル ジュサービスを実現。

    旅館サービスが、団体客対応から、個別の客の差別化されたニーズ(女性、男性、家族、カッ プル、等)への対応が迫られており、このような情報システムを構築し運用することで、これを

実現している。

④  個別システムの課題と対応   ⅰ  予約システム

    旅館の予約は、部屋だけ予約するのではなく、沢山の施設、手配物件を予約する。

    基本予約でも部屋、食事内容、食事専用個室の3点を予約することになる。また、予約ソースが、

旅行代理店、インターネット予約サイト、等多岐に渡っており、先方主導の予約システムが多重化 し、オペレーターの操作での多様な予約情報の管理を行い、全館の空室管理に注力しているが、こ れへの旅館側の自主的な対応が今後の課題である。

  ⅱ  配膳管理システム

    調理した食事を適切なタイミングで、食事処に配膳するため、各食事処の食事開始時間、同一開 始時間の人数制限を実施。  これにより調理・配膳時間の平準化、結果として調理後早いタイミン グでの配膳が可能になる。また食事の進行具合による事後調整も指示出しが可能になっている。

  ⅲ  館内インフラシステム

    お客様係りを中心に、a 顧客の到着、出発の予定、布団の上げ下げ、顧客の要望事項、等の情報 共有、b ポケベル連絡と各所に配備のPC画面での業務指示の確認による各担当に対する指示の迅 速な確認と実行が行われている。これにより、従来の担当からお客様係りへの指示のための探索、

復信、指示連絡という時間ロスを解消して、サービス提供の迅速化とホスピタリティー向上への専 心が可能となる。

(3)IT活用の経営改革の内容とその成功要因

①  経営改革の方針、内容

ⅰ  ルーティンワークの内、接客業務と作業業務を区分して、業務体系を区分した。

ⅱ  個別の客への対応のバリエーションの拡大に応じられるようにする。

ⅲ  女性従業員間で情報共有して、個別対応からグループでの業務対応を行う。

ⅳ  これらにより、サービス品質の向上と生産性の向上を両立させる。

ⅴ  業務改革の手段としてITシステムを使い、若い人材でも業務対応可能な仕組作りを行い、

    結果として従業員数もかなり(20人程度)減少できた。

②  その成功要因

ⅰ  業務改革の方針が明確で、手段としてITを使った。

ⅱ  経営者のIT活用に対する認識の先行と現場人材のオペレーション能力の高さ。

(4)IT活用の経営改革の効果

①  品質面では、だれでも高品質のサービス提供が可能となった。

配膳において、オンタイムに出来たての料理が出せるようになった。

結果として、コスト減、生産性が向上した。

②  団体客から個人・グループ客への社会的な需要の変化にうまく対応できた。

    また、サービス提供価格がある程度維持できた。

③  個別の顧客に対するサービス提供が可能となり、顧客満足度が向上した。

(5)今後の本旅館のITシステム構築と運用上の課題

①  現在、本ホテル独自の予約システム(電話、インターネット経由)と外部の旅行代理店の予約シ ステム、各種インターネット予約システムが同期化しておらず、これをオンデマンド化すること が課題となっている。

②  また、個別システムとしてあるその他の財務、勤務管理システム等とこの館内システムと   の統合が課題となっている。