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ケース 12   営業創造㈱

8  サービスモデル革新の内容

企業独自の取組、等によるサービスイノベーション、サービスモデル革新の内容を以下の諸点を確 認しながら記述する。 

(1) 新しいサービス事業のアイデアの着想 

① IT 営業アウトソーシング 

新卒入社の企業で、IT 業界では営業人材が全く足りていないということを痛切に感じた社長の 伊藤一彦は、IT 業界の営業に事業領域を定めて創業した。 

事業を進めていく中で、IT 業界の営業人材が不足する構造的な問題を掴み①コミュニケーショ

ン能力を重視して採用した正社員派遣、②机上だけではなく自社事業における実践営業の教育、

③最先端の IT 知識を有す派遣先を選定してのキャリア開発、④BSC 等を用いた独自のモチベーシ ョン管理、により問題を解決している。 

IPO 後は、リスクを取りながらベンチャー企業の営業部門のアウトソース事業へと拡大していく ことを計画している。 

②  戦略創造   

自社で BSC を導入することを検討したが、その策定システムがないと運用に手間がかかってし まう。市販のシステムは高額で手が出ない。そこで、自社でそのシステムを開発する計画を立て、

多くの中小企業診断士、公認会計士、IT コーディネーター等の先生方のノウハウを集約し、1 本 3 万円(税込)の戦略創造 light を開発。現在、300 本以上の販売を実現している。 

(2)BSC による経営 

①  全社最適な仕組み 

自社の企業理念をベースに自社を取り巻く外部環境と自社の内部環境を整理して、将来のある べき姿としての企業ビジョンを社員参加型で策定した。 

自社の内部環境(強み、弱み)と外部環境(機会、脅威)を組み合わせて、社員参加型で、戦 略案を策定し、戦略マップとして「財務」、「顧客」、「業務プロセス」、「人材と変革」の 4 階層に 区分して整理している。各課題について、財務の視点の成果に到達するために最下層の「人材と 変革」での対策事項から上の階層に向けての因果関係を体系化して、個人、事業部、全社レベル での経営戦略策定、遂行、業績評価、改善のプロセスを顕在化し、組織の壁を串刺しにした業務 プロセス連携を行うための全社最適に向けた仕組を形成している。このシステムは、全社レベル、

事業部レベル、個人レベルで作成し、社内で可能な限りの情報共有がなされている。 

②  人事評価 

人事評価は、行動評価、スキル評価、業績評価で行っているが、この業績評価の部分で BSC の 結果を活用している。 

③  社内会議 

取締役会、事業部会議、等の定例会議で各種報告のベースのフレームワークになっている。 

(3)IT営業アウトソーシングの戦略 

①  サービスモデル 

このモデルの特徴は、IT メーカーに新規顧客獲得向けの IT 営業マンを自社の社員の立場で派遣 するもので、単なる人材の紹介斡旋による派遣とは異なっている。IT メーカーのユーザーからみ れば、本企業が責任を持って採用・育成・能力形成した適材を、業界として不足している新規顧 客獲得用の営業マンの即戦力として受け入れ、活用するものである。これまでのところ評判が良 く、派遣先の IT 企業の営業部局内で、その活発な業務態度と営業成果が評価されている。 

②  人材育成 

社内の研修で接客態度、コミュニケーション能力、IT 技術、営業ノウハウ等を身につけて、先 方へ派遣しているが、彼らは、この機会に大手 IT 企業で先進の IT 技術が学べる。また、自社で

ベンチャー企業経営も学べるので、この職場を自己成長の機会として捉えることができ、社員の モチベーションは極めて高い。 

(4)ITソリューション事業の戦略 

①  顧客データベース、新規顧客獲得マネジメントシステム 

帝国データバンク等の名簿から、テレマーケティングを行い、4 年半かけて、3 万件の新規受注 の可能性の高い顧客予備軍の DB を作成している。手作りで SFA システムと自社の有望顧客 DB を 統合した社内独自の新規顧客獲得マネジメントシステムを構築してきた。これが自社の強力な競 争優位の源泉となっており、外部のベンチャーファンドからの評価も高い。 

②  このビジネスのポイント 

このビジネスは代理店業務で、顧客とソニー等のメーカーとの需給情報のマッチングの仲介に よる手数料収入獲得であり、営業担当者に要求される技術的能力は深くない。むしろ上記の新規 顧客獲得マネジメントシステムの方に価値がある。 

(5)  戦略創造事業の戦略 

本システムは、自社での BSC システム導入の中から生まれてきたものであって、上場までは、

これを個別パッケージ形態での販売に止めている。現状では、これを IT 営業アウトソーシング企 業発掘の手段として活用している。大手 IT 企業の関係企業ではこの BSC を社内、関係企業先に導 入しており、これが分るアウトソーシング先として先方の理解が早い。また、将来、株式上場の 際には、株主になってもらうことも期待している。株式上場後は、新たなビジネスモデル展開も 考えている。 

(6)  株式上場に向けて 

本企業の事業多角化の方針は、機能別に展開しており、既に述べているように、受注情報に関 する領域から、人材派遣、経営ノウハウのパッケージ化の領域とリスク分散を図るとともにナレ ッジ、システム・DB 等の共有による競争優位の確保がなされている。 

2009 年中の株式上場を目標に、計画的に事業拡大を検討しており、例えば上記アウトソーシン グ事業での派遣人員を 2007 年 9 月には 30 名、2008 年 9 月には 60 名の水準に増員予定である。 

サービス業では、関係者間での全体最適な WIN-WIN の関係構築がその事業展開において不可欠 である。このアウトソーシング事業では、社員はこの派遣を自己のキャリア成長の場の提供、メ ーカー側は低コストでの人材活用、エンドユーザーは低コストでのソリューションの享受、当社 は企業利益と企業成長の確保という WIN-WIN 関係の持続を考えている。 

(7)  産業化の方向       

①  組織能力の形成 

各事業展開に当たっての組織的供給能力・オペレーション能力は、BSC の展開の中で能力形成さ れているが、社内での情報共有と各事業部担当取締役のマネジメント能力が大事。組織的イノベ ーション能力については、BSC の中で仕組化しているが、新規のビジネスモデル提案は各取締役 から出ている。 

②  東京、名古屋に支店を置き、東名阪での営業展開が中心。   

③  新サービスの開発 

当面は、現状の体制で事業拡大を考えているが、株式上場後には、既に述べている通り、ベン チャー企業一般の新規営業のアウトソーシングビジネスへの参入、BSC のビジネスモデルのさら なる展開を考えている。 

(8)市場での売上げ見通し 

  2007 年 9 月期の売上の見通しは 2 億 6,000 万円程度を見込んでいる。