ケース 22 ㈱ヴァイタス
2 グローバル企業に向けてのサー
(1)着想、新機能形成
96年のディジメーション設立時に、以下の着想を行った。
ⅰ 2000年まではバックボーンとしてのインターネットが立ち
ⅱ 2015年までにブロードバンドに コモディティー
ⅲ 日本に優位性
ⅳ 2010年までの15年間でこの業態でグロー
(2)新サービ
① 差別化の要素
グローバルな市場・顧客を想定して日本に優位性のある多様かつ独創的な して、これを垂直統合的に市場へ供給して、グローバルな
② 収益性確保のメカニズ 市場を国内からグローバルへ
へと拡大している。日本で収支トン
ので、作品の海外での配給権確保に努め、これで2004年にマザーズ上場できた。
(3)新サービス開発
アニメーションの機能チェーン アニメーションの機能チェーン構造 の3段階に別れ、通常1サ
ⅰ <プレ・プロダクション>
a マーケット調査 b 企画開発
c プロデューサーによる事業スキームの組成 シナリオ調達
スタッフ構成
ファイナンシャルスキーム(資金調達、リスク対応、収益配分)組成
( 制作委員会方式、ファンド形成、融資、等 )
ⅱ <プロダクション>
a メインプロダクション
監督・プロデューサーによる制作
絵コンテ、制作進行、原画、動画、彩色、特殊効果、CG、美術、コンポジット クション
リビューション>
ケーブルテレビ、ネット配信)への展開 c
とコスト管理に努め 向上、組織のスリム化の観点から動画の製作工程を外部企業へ委託している。
ⅱ
ャーキャピタルファンドの組成・運営
式では出資会社 PCで一括管理して、著作権の有効活用が可能となる。
を持っている。
製作委員会は、このような適材適所のパートナー しかし、闇雲に多くのメンバーを招き入れることはしない。
b ポストプロダ
音響、音楽、編集、録音、等
ⅲ <ディスト
a テレビ放映、劇場上映 b 2次市場(DVD、
版権収入管理
② 事業構成
事業構成は大きくⅰ制作事業、ⅱライツ事業、ⅲメディア事業、ⅳその他事業に分かれるが、それ ぞれの事業を本社と子会社との間で垂直統合化して事業運営を行っている。
ⅰコンテンツ(制作)事業
ホビー向け及び子供向けのテレビアニメーション、大型劇場向けのアニメーション制作を行ってい るが、アニメーションの製作スタジオをグループ企業内に保有して、作品の品質
ている。また、生産性 コンテンツ(ライツ)事業
自社製作のアニメのビデオグラム化権・海外利用権等の2次利用化権、この作品からの版権収入・
印税収入
ⅲメディア事業
オンラインゲームの企画・運営事業、モバイルサイトの企画・運営事業
ⅳその他事業
製作委員会への参加、コンテンツファンド及びベンチ
③ 資金調達手法
作品によって、ファイナンスのスキームを使い分けしている。
ⅰ コンテンツファンド
作品の収益が期待できそうなものに対してはコンテンツファンドをSPC(特別目的会社)で資金調 達し、自社の100%のコントロール下で製作することもある。従来の製作委員会方
に分散していた著作権をS
他方、全てがこの方式をとることがベストではないという認識も明らかにしている。それは、全て の作品がヒットするとは限らず、企業体としてリスクヘッジする必要がある。
ⅱ 製作委員会方式
製作委員会方式の大きなメリットは、出資するメンバーは、それぞれの得意分野
いわば、その道のプロである。プロが内容の目利きをすることによって、作品がブラッシュアップさ れ、その結果、成功の確率が増える。したがって、
と組むための絶好の仕組みなのである。
な
し上げないための努力も行っている。製作予算内で制作費を収 め
努力を行っていることが結果的に実を結んでいるようである。
が受注
ラ 二次利用を中心に本社が事業を行っており、子会社である株式会社ゴンゾ
な
効果 している。
情報を日本に還流して制作に反映させ 能チェーンの全体に対し、自社として効果的に影響力を及ぼして、流通・
な仕組により、グループ内の効果的・効 動を確
業界メディア等のパートナーと組んで顧 して、
評価
ェックし、また、上記のパートナーとのやり取りの中でPD ぜなら、それぞれの主張がまとまらなくなってしまい、結果として、企画段階で時間と調整のコス トが発生してしまうからである。同社が製作委員会に出資するときの比率は、リスクヘッジという観 点からも、半分以下に抑えることを原則としている。
ⅲ 製作プロセス管理
製作プロセスにおいて、制作費を押
ようとする努力と、スケジュールの範囲内で製作することが、肝要である。一方で、クライアント と製作単価の交渉をする営業の存在も不可欠であるという。この秘訣の一つには、業界関係者らを招 聘するなど、地道な
④ 本社と子会社の関係
本グループの事業は制作事業において、海外からの制作受注や海外共同制作については本社 しており、日本でのアニメ作品は子会社である株式会社ゴンゾが受注している。
イツ事業においては、
はアニメ作品を制作することにより発生する制作印税等の権利を獲得している。
お、本社が本グループ各社の経営管理業務を受託しており、本グループ各社の相乗効果により、
的な事業の推進がされるよう管理
⑤ 垂直統合的な付加価値形成の評価
本企業グループでの付加価値形成について見ると、従来の分断されて部分最適な業務体制から、グ ローバルな事業持株会社制度を採用して、①世界各地域の顧客
る仕組を作り、②上記の機
販売を含めた全体的な付加価値形成の最大化を目指した機能のオーケストレーションによるグローバ ル最適な仕組を構築してきている。
このような事業持株会社制度を活用してのグローバル最適
率的な分業体制による高い提供品質と生産性の向上を実現させてグローバルな顧客の満足・感 保してきている。
(4)グローバルな顧客接点での経験のマネジメント
① 現地でのコンテンツの消費者のメディア接触行動をつぶさに調査して、理解している。
② どんなソフトが売れているか、どんな点に関心・満足を示しているかを理解して、コンテンツ作 りに生かしている。
③ 具体的には、米、仏、独のテレビ局、DVD 販売企業、
客ニーズを把握して、アニメ制作に反映している。また、各地域で開催される見本市に参加 現地の関係者と交流している。
(5) グローバル市場での顧客満足・顧客感動の確保への取組と
グローバルに店頭でのDVD売上げをチ
CAサイクル的に顧客満足の状態を把握して対応している。
(6) 経営上の成果
最近4 年の経営上の成果の推移を見ると、17年度までは、売上げ規模の拡大が見られているが、
18年 グラム収入の減少、会計処理ルール変更の結果、等
3月 平成18年3月 平成19年3月 4,418,643 6,294,146 7,247,150 8,712,642
−1,932,975
急激な変化への対応として、以下の諸
①
② 場向けアニメーション事業の積極推進
事業等への取組強化
④
①
ⅱ
会社のかんばん・ブランドで金を集めて、仕事の場を持ち、自己実現を果たすことを望ん
びゲーム事業においては、グローバルな事業展開を視野に入れた創造性及び映像制作に おける豊かな経験を有する人材が本グループの成長を支える重要な要素となっている。
価システムの向上、社内人材育成プランの構築、ストックオプション制度
、優秀な人材の採用及び雇用維持に努めている。
人材を招聘することなどで、スタッフを充実させ
それ には、良い外注先が不可欠であり、これらの人材をいかにロックイン 度は、DVD市場環境の悪化に伴なうビデオ
の要因で売上げ規模は拡大するものの赤字を示している。
平成16年3月 平成17年 売上高(千円)
経常利益(千円) 286,180 466,719 429,660
当期純利益(千円) 23,461 315,552 254,750 −2,594,935 今後のブロードバンド・ネット環境に代表される市場環境の
点の取組を予定している。
自社ブランドのより一層の確立と企画製作体制の強化 国内劇場向けアニメーション事業、グローバル市
③ オンラインゲーム
ライツ事業の積極的推進、グループ全体のコスト管理、経営体制の強化
(7) 安定成長・産業化の方向
従業員満足への取組と顧客満足・感動確保の関係の評価
ⅰ 従業員持株会を持っている。
コンテンツ企業では、社員は優秀なクリエーターとともによい作品作りに関与し、作品の継続的 な市場成功のサイクルに満足を覚える。
ⅲ 社員は
でおり、会社としてこれらを実現していく。
② 成長戦略
ⅰ 戦略の基本は、グローバルなコンテンツの持続的な開発である。
ⅱ 今後は、aアニメ事業における原点回帰、bブロードバンドにおけるリーダーシップの確立 (オンラインゲーム、アニメのネット配信)に努める。
ⅲ メディアコンテンツ業界における機能のオーケストレーターを目指しており、国内外の企業と柔 軟にアライアンスを行う。オンラインゲームの会社を買収しているが、今後、経営、財務が安定 すれば新たな成長領域に資本投下していく。
③ 人材育成・研修 制作事業及
本グループでは、人事評
によるインセンティブの充実により
グループ企業としては、製作現場を熟知する人材や、制作費の単価交渉の舞台に立てる優秀な人材、
事業展開・グループ戦略において専門的知識をもつ ている。
製作現場においては、社外外注も活用するが、仕事を継続的に与えるなどの保証をしている。
は、良い作品を作り上げる