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ケース 7   ㈱エイム

6  サービスモデル革新

  今回のケースでは、昭和63 年のオープンした本企業の事業化に向けたプロセスからその後の事業 拡大のプロセスをサービスモデル革新アプローチで確認しよう。

(1)着想

①  空白な市場の把握と新提供機能化

創業者の起業意欲は高く、あるフィットネスクラブに入って健康がビジネスになるならビジネス化 しようと発意。新規出店すれば、県内で3店舗目になり、フランチャイズメンバーになるかどうか色 んな店を見たが、こうゆうビジネスは自分たちでノウハウを積み上げないと成功しないと判断した。

当初、ベースを子供を含むスイミングとし、フィットネスを併設することを念頭において、準備を開 始。

② 新提供機能形成からサービスモデル化

  2店舗目の出店から大人専用のフィットネスクラブのビジネスモデルで事業を開始した。

そのサービスモデルは、以下の(2)の通り。

(2)  新サービスモデル

石川県・金沢地域のターゲット顧客を念頭において、差別化に向けた仕組と収益性確保のメカニズム を構築して、事業の優位性形成に向かう。

① 基本モデル

ⅰ  バランスの取れた経営目標

顧客の享受する経験(感動)価値の最大化と事業の効率運営の両立。

  ⅱ  ハイレベルの顧客サービス水準 

      顧客に提供される機能美に溢れた施設ときめ細やかなサービスにより顧客へのサービス価値の 最大化をめざし、顧客の享受する経験(感動)価値の最大化に努める。

ⅲ  ハイレベルの施設整備水準

敷地面積3,000坪、延床面積1,200坪、ジム・スタジオ・プールの中核ゾーン比率60%、

      駐車場400台   ⅳ  堅実な財務モデル

      総投資額10億円、会員数5,000人、総売上5億円、店舗経常利益1億円、債務償還(自 社建築)15年、月会員基準価格1万円(会員種別は単純化)

② 差別化の仕組

地域としては先端的な顧客感動確保を目指した施設整備と従業員のホスピタリティー溢れた接 客。

③ 収益性確保のメカニズム

ⅰ  規模の経済

    地域の環境・文化に配慮した直営のチェーン展開を行う。

ⅱ  範囲の経済

    事業の多角化を行う。

ⅲ  スピードの経済

    現場での迅速な意思決定と会員制による迅速なキャッシュフローの回収

ⅳ  集中化と外部化の経済

    主にインストラクターをアウトソースしている。

ⅴ  囲い込みの経済

    「エイム」ブランドの確立を考え、最近では、店舗ごとのストーリーと会社ブランドの確立のバ ランスについて検討している。

(3)  新サービス開発・供給システム形成

① 経営管理の基本

本企業は、営業開始後以降、常に高業績を上げてきているが、そのサービス供給システム設計と運 用における経営管理の基本は以下の5点であるとし、これらが経営者のリーダーシップの下、統合的 に管理運営されている。

ⅰ  徹底した利益志向の経営を貫き、そのためには高い利益が安定的に出せる仕組作りを行い、それ に基く厳しい予算統制も実施。

ⅱ  提供する施設の規模・内容と限界集客人数のバランスの確保を行っている。

    これには、マーケットリサーチによる集客可能人数の把握を行い、会員になった方々が顧客感動 を感じられる空間演出と高い空間効率の両立を図ってきている。

ⅲ  高い空間効率を実現するためには、部屋の間仕切りや動線の工夫などの空間設計の創造性が必要 で、これを満たしてきている。

ⅳ  各分野のスペシャリストによるプログラム開発とサービス品質管理を実行。

ⅴ  バランスの取れた財務政策、即ち損益、キャッシュフロー、資金調達の適正化を実施。

② 空間設計

  各施設の空間設計は、外部のクリエイティブディレクターが、地域の生活者の文化と施設の提供機 能とを、時代性と経験価値を意識して、機能美のレベルで統合してきている。

③ サービスレベル、プログラム開発

ⅰ  総労働時間の比較

  一般的に同規模の同業態のクラブの月間総労働時間が4000時間程度であるのに比べ、5900時間程 度と多く、かつ、きめ細やかなサービスを実施。

ⅱ  プログラム開発と安全・安心な運営

  クリエイティブディレクター、スタジオディレクター、アクアディレクター、研修ディレクターを 配置し、また、メディカルディレクターとして外部病院の医師を嘱託医に迎えて、サービス・プログラ ム・ケアシステムの質を高めている。

また、平成18年3月には、ISO 9001を取得して、高品質のサービス提供プロセスの実現に向けて持 続的な取組を行っている。

④ マーケティング活動、会員獲得への取組

  新規に地域出店する場合には、早くから出店準備を行い、通常の新聞折込チラシに加え、地域の各 種団体・組織に対し、グループでの割引申込システムを導入して、開業時点で、採算ラインに必要な 会員総数の申込確保に努めている。

  最近では、出店準備期間を短縮化しており、松任店では、従来の7ヶ月から5ヶ月に短縮。

⑤ インストラクター養成

地域のインストラクターを養成するための「エイムアカデミー」という講座を、各テーマに応じ、

定期的に開催している。

⑥ 本部と各直営店との業務分担と連携の仕組

顧客接点の流れは、企業認知、入会、施設での受付・エクササイズ・リラックス・退出、継続入会 又は退会であるが、このためには、フロント・バックの各種業務を各直営店と本部が連携しながら 最適な業務運営を行っている。

ⅰ  個別店舗の業務

    個別店舗では、フロントオフィスとして、支配人をヘッドとして、a 顧客獲得・維持、b 受付・

細かな現地での現金管理、c 施設・インストラクター管理等による顧客満足・顧客経験(感動)に 責任を持つ。支配人は、店舗毎に、本部からのデータ提供を受けて、収入・支出・店舗の運営管理 に責任を持っている。

ⅱ  本部の業務内容

  本部は、7 名の少数精鋭で、以上の業務以外の会費納入事務、業務管理、サービス商品開発、サー ビスの外販、等の各個別店舗が行う業務以外のバックオフィス業務を全て実行管理している。

ⅲ  連携の仕組

  主にバックオフィス業務を中心に、本部主導で、業務の効率化を意識して連携している。ITシステ ムも本部発で情報共有等を行っている。

(4)  全体最適に向けた仕組形成、生産性の向上と新産業創造

① 全体最適に向けた仕組形成

本企業では、各店におけるホスピタリティー溢れて顧客満足確保に向けたサービス提供と本部 主導で、バックオフィス業務の効率化・自動化に向けた取組の両立を図るため、本部と直営店の組織 の壁を串刺しにした業務プロセス連携を図るための全体最適化に向けた仕組の形成と運用を行って、

サービス供給上の優位性を形成している。

② 生産性の向上

個別店での顧客満足確保による会員数の増加とバックオフィス業務における本部主導の集中管理方

式による効率的な業務管理により、結果として高い生産性向上を実現している。

③ 新産業創造に向けて

国内でのフィットネス産業という新しい産業の創造に地域として貢献してきている。

(5)  安定成長に向けての取組

優秀な従業員を採用し、専属ディレクターによる研修を実施。アルバイトに対してもチェックシー トに基く昇給制を実施するとともに社員への登用も実施してモティベーション向上に努めている。こ れら取組により、従業員満足、顧客満足、顧客ロイヤリティー拡大、売上拡大へのサイクリカルなメ カニズムが形成されている。