• 検索結果がありません。

サービスモデル革新のプロセス (1)   着想、新機能形成

ケース 13   ㈱グローバル・パッセンジャー

2  サービスモデル革新のプロセス (1)   着想、新機能形成

①  着想

顧客と雑談中に「ITエンジニアの人手不足で困っている」という話をよく耳にしていた。

当初はボランティア的に知り合いを紹介していたのだが、いっそのこと海外に人材を求めていったら どうだろうかと考えたことが始まりだった。

② 新機能の内容

ⅰ  ソフトウェア開発のウォーターフォールモデルでは、以下の順番になる。

要求分析―システム設計―詳細設計―コーディング(単体テスト含む)―結合テストーシステムテスト ー運用テスト

  最近の事例では、詳細設計―コーディング(単体テスト含む)のモジュールを外国人材受入れにより 作業するか、オフショアでの業務委託をする場合が多い。

ⅱ  ソフトウェア開発のオフショアアウトソースに向う道筋として、以下の順番を踏むケースが多い。

Step1  オンサイト業務開発・・・(IT技術者派遣)

Step2  オフショア開発

Step3  ODC(オフショア開発センター)設置・・・(技術者による顧客専門の開発チーム)

Step4  グローバルソーシング・・・BPO(業務全般のアウトソーシング)

ⅲ  本企業は、ベンチャー企業として新規に現状でこの上記ステップの1、2、3 の機能を日本語の話 せるインド人IT技術者により実現して、低コストで顧客企業の満足度を高めることに成功している。

外国人材派遣、オフショア開発業務等に特化し、現状で新規に上記ステップの1、2、3 を業務化し、

ステップ1では自社名で顧客企業に人材派遣契約を結び、また、ステップ2、3でも自社名で顧客企 業と案件毎の請負契約を結んで業務を行っている。

(2 )新サービスモデル形成

①差別化の要素

    日本語の話せるインド人IT技術者による高い技能、低コスト、日本語による業務遂行とい う利便性の提供という差別化の仕組を導入。

②収益性確保のメカニズム

提携先のインド企業及びインドIT業界での人材供給余力は大きく、今後も受注拡大への供給サ イドの対応は可能性である。

また、今後、対象の国・企業を中国、ベトナム等の東アジア地域のイメージで拡大していくこと も念頭にある。

(3)   新サービス開発・サービス内容

①インド企業との提携によるサービス業務提供

日本市場に特化したインド企業と提携することで、優秀なインド人技術者や高い品質を誇るインド ITソリューションの導入をコーディネートしている。

本研究のフレームワークに即せば、顧客企業のソフトウェア開発上の機能チェーンの連鎖において、

顧客企業の不足するIT人材の補完供給又は詳細設計機能等の補完請負・アウトソース業務を、イン ドを始めとする外国企業と顧客企業との間に入り、組織の壁を串刺しにした円滑な業務プロセス連携 を行うための仕組を提供・運営するグローバルな業務の最適化サービスである。

世界中から熱い注目を集めるインドIT であるが、導入に際する実際のノウハウやケーススタディ など、具体的な情報が不足していることから不透明な部分が多く、知られざるポテンシャルがまだ国 内ではあまり認知されていないのが現状である。

本企業はこうした発注側の顧客と、開発を行うインド企業との間に入り、きめ細かなコンサルティン グとコーディネートを行いながら、豊富なプロジェクトの成功実績を積んできている。

本企業は、顧客の信用を第一に考えており、業務拡大も慎重な姿勢を崩していない。

初めて受注した仕事は、Java言語で作られたシステムの結合テストであった。

相手先にも迷惑をかけないようにするため、リスクの低い工程のみを選んだのである。

これは、オフショア開発を短期的なコストメリットではなく、長期的なメリットを重視したものにし たいという考えのあらわれでもある。

本企業の考える長期的なステップというのは既に述べた以下の4段階である。

Step1  オンサイト業務開発・・・(IT技術者派遣)

Step2  オフショア開発

Step3  ODC(オフショア開発センター)設置・・・(技術者による顧客専門の開発チーム)

Step4  グローバルソーシング・・・BPO(業務全般のアウトソーシング)

②開発拠点

本企業は、開発パートナーとしてインドのVertex Software社と提携している。

Vertex Software社は、ソフトウェア品質管理プロセスの最高基準を示すCMMレベル5認定、及び

ISO 9001:2000認証を取得した信頼できる企業である。この企業の本社オフィスはインドのマハーラ

シュトラ州プネ市、支店は米ボストン及び東京に所在している。同社は創業以来10 年間、堅調な成 長と一貫した利益操業を誇っている。

同社は従業員が200人規模で、インドでは珍しく日本に特化した会社である。

日本語教育にも力を入れており、約40%の従業員は日本語が話せる。

コミュニケーションは日本語で仕様書も日本語ベースである。

開発の進め方やよく起こる仕様変更の問題にしても、基本的に日本のやり方に合わせている点に特徴 がある。

本企業のパートナーとしての信頼関係はかなり強固で、社長同士が互いの会社の役員を兼務するなど、

両社一体となった運営になっている。

(4)   IT 人材派遣、オフショア開発の課題

①  仕様変更やトラブル時の対応

日本語ができるインド人といっても、お互いの意見が対立関係にあるときはコミュニケーションが 難しい。

日本人同士でも言葉尻ひとつで揉めることもあるのだから当然のことであるが、トラブルの場合は営 業が間に入ってフォローすることにしている。

基本的には顧客の要望に出来るだけ沿うようにするが、内容によっては作業が増えた分の対価はパー トナー会社へ支払えるように顧客と交渉をしている。

②  成約までに時間がかかる

大手ソフトウェア企業を顧客としているので、特に契約までのプロセスに時間がかかる。

また、「本当に要求品質をクリアできるのか」「納期が守れるか」といった不安をオフショア開発に対 して持っているので、日本語のできるインド人ブリッジSEが顧客先に常駐するといってもなかなか 契約に踏み切ってもらえない。この部分はどうやって短縮していくか課題としている。

③ インドとの時差3.5時間

日本が午後になると、インドは始業時間になる。営業面では顧客から見るインド側が先に帰ること なく遅くまで頑張っている感じになるのでよいが、日本で間に入っている人間は結構長時間労働にな りきつい面がある。

一日を時差で長く使えるので、上手に連携すればアウトプットは品質の高いものになるので、苦労で はあるがメリットでもある。

(5)   今後の展開

最終的には、システム開発だけではなくて運用、保守などから、業務全般のグローバル版アウトソ ーシングを目指すつもりである。

そのためには、第2のパートナーを中国又はベトナムに育てることとしている。

Vertex software(バーテックス・ソフトウェア)社の持っている日本語教育やエンジニア育成のためのノウハウが

活かせるからである。社長としては、現状ではパートナーが技術的に優秀なこともあり、幅広い分野 で何でも受注している状況であるが、いずれある程度業務は交通整理して強みを打ち出していきたい 意向である。顧客の要望に応えていくことで自ずと方向性が出てくるだろう。

(6)   開業と顧客接点のマネジメント

①開業 

会社の主たる業務が営業活動であるので、それに便利なこの地を選んだ。

②顧客接点での経験のマネジメント

 

大手SI企業の担当の方々がオフショア開発を行う際の業務以外のトラブル解決を心がけている。

(7)   市場での顧客満足・顧客感動の確保への取組と評価

① 顧客満足と市場成果

  業務品質が良く、上記のトラブル解決を心がけているので、顧客満足を得て、これまで来れた。

② インド人IT人材の従業員満足と顧客満足

  現在20人位が日本で働いているが、10人位が家族を呼び寄せている。日本での社会・生活環境に 満足しており、収入が得られれば、日本で働くことに問題は無い。これらもあって、日本での高い業 務品質を維持してきて、高い顧客満足を得ている。

(8 )  今後の成長戦略

  中長期的には中国、インドの市場へ進出していくことも考えている。

  自社の強みのある領域を選定し、強化していく。

  今後、コンサルティング人材を確保して本格的な統合型のビジネスモデルを構築していく。