第 2 章 エステル油中過熱・放電時のガス発生特性と
2.6.1 過熱・放電の判定
変圧器内の内部異常は、主に過熱と放電に分けられる。この判断は、異常診
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断における異常の様相判断の第一段階で重要である。油中ガス分析による最初 の段階で異常の疑いありと判断された場合、まず初めにその異常が過熱か放電 かを判定する必要がある。これまで述べた実験の結果からエステル油中で過熱 や放電が起こった場合に発生するガスの特徴が明らかになった。その特徴から 油中ガス分析による過熱、放電の判定方法を検討する。
(1)ガスパターンによる過熱・放電の判定
過熱の場合、主な発生ガスはC2H6とC2H4であり、過熱温度上昇に伴ってC2H4
の割合が上昇する。過熱の場合、C2H2は、600℃以上で極微量に発生するが、ほ とんど発生しない。また過熱によるエステル油の分解は、エステル基の分解に 由来するCO、CO2ガスが生成し、この発生量は、特に高温で炭化水素ガスより も多くなる。さらに過熱では、C3H8やC3H6ガスも多量に発生する。
一方、放電では、主な発生ガスは水素であり、C2H2 がその次に続く。他の炭 化水素も発生するが、基本的にC2H2より少なくC2H6はC2H4よりも比率が少な い。過熱と異なり、COやCO2の発生を伴わない。またC3H8やC3H6の発生量は、
かなり少なく、これも過熱との特徴の違いである。
以上の結果から、過熱と放電では発生するガスの特徴が異なっていることが 分かった。発生するガスの種類とそれらの特徴を整理すれば、過熱と放電の判 定が可能であると考える。電協研法 [19]では、鉱油の診断においてガスの比率 を図示することでその特徴を明確にするガスパターン図というものを用いてい る。この方法では、発生するガスの比率を折れ線グラフで図示するが、ガスの 量が最大となる成分を1として他のガスの比率を表示する。この方法は、各ガ スの比率の差がより明確になるため、発生ガスのパターンが分かりやすくなる。
今回はこの方法に従ってガスパターン図を過熱、部分放電、アーク放電につい て作成した。ガスの成分は、H2、CH4、C2H6、C2H4、C2H2の5種類とした。
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図2. 66 油中における過熱と放電で発生するガスのパターン
図からC2H2の発生は、全ての油種で特徴的なガスであることが明確になった。
過熱でも600℃以上では微量にC2H2が生成するが、C2H6やC2H4、CH4などの生 成量が過熱ではかなり多く、これらの比率の差からも過熱と放電は判断できる と考えられる。したがってパターン図による判定は有効な方法であると考える。
しかし今回の実験においてFR3の部分放電では、C2H2が検出されないこともあ ったため、FR3 の部分放電の判定は、他の指標やその後のガスの変化なども考 慮し、判断する必要があると考える。
(2)ガスの比率による過熱・放電の判定
続いて過熱、放電の区別をより明確にするために、C2H2 と他のガスの比率を 計算した。比率は、C2H2/CH4、C2H2/C2H6、C2H2/C2H4の3種類とした。PFAEの
鉱油
PD
Arc 放電
PFAE FR3 MIDEL
300℃
400℃
500℃
600℃
700℃
過熱
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
H2 CH4 C2H6 C2H4 C2H2
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結果を図2. 67に示す。C2H2と各ガスに対する比率は、過熱よりも放電の方が大
きい。また放電においてもエネルギーが高いアーク放電の方が高かった。また 過熱と部分放電の間の差は大きいことから、この間に閾値を設ければ、過熱と 放電の判定は可能であると考えられる。図では、暫定的に0.1を閾値として赤色 破線で示した。
FR3の結果を図2. 68に示す。PFAE同様に過熱、部分放電、アークの順にC2H2
の各ガスに対する比率が大きくなる傾向にある。図から暫定の閾値を0.1とした。
但しFR3においては、部分放電でC2H2が検出されないケースがあった。したが ってこれらのガスの比率からは PFAE ほど明確に過熱と部分放電を判別するこ とはできない可能性がある。FR3 のエネルギーが低い部分放電などの放電につ いては、他の指標も併せて総合的に判断する必要がある。
MIDELの結果を図2. 69に示す。MIDELにおいても過熱、部分放電、アーク
放電の順にC2H2の他の各ガスとの比率が大きくなる傾向があるものの、高温の 過熱時のC2H2の比率が比較的大きいため、過熱と部分放電の差があまり大きく ない。しかしC2H2/C2H6を用いれば過熱と部分放電の差が 100倍近い差があり、
判定の指標として適していると考えられる。今回は、閾値を暫定的に C2H2/CH4
で0.5、C2H2/C2H6で1.0、C2H2/C2H4で0.5と定めた。
以上の結果から、全ての油種でC2H2の他の炭化水素ガスに対する比率は、過 熱と放電で大きな差があることが分かった。したがってこの比率を指標として 過熱と放電を判断することは可能であると考えられる。しかし今回の結果はあ くまでも実験値に基づく傾向であり、実器においては稼働中の経年に伴って発 生するガスや油以外の部材に由来するガス発生も考えられる。今回の実験結果 を基本として、実器での現象と照らし合わせていくことが重要である。
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図2. 67 過熱及び放電時のC2H2とCH4、C2H6、C2H4の発生比率(PFAE) 1.0E-06
1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03
過熱
C₂H₂/CH₄
PD Arc
1.0E-06 1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03
過熱
C₂H₂/C₂H₆
PD Arc
1.0E-06 1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03
過熱
C₂H₂/C₂H₄
PD Arc
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図2. 68 過熱及び放電時のC2H2とCH4、C2H6、C2H4の発生比率(FR3) 1.0E-06
1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03
過熱
C₂H₂/CH₄
PD Arc
1.0E-06 1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03
過熱
C₂H₂/C₂H₆
PD Arc
1.0E-06 1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03
過熱
C₂H₂/C₂H₄
PD Arc
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図2. 69 過熱及び放電時のC2H2とCH4、C2H6、C2H4の発生比率(MIDEL) 1.0E-06
1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03
過熱
C₂H₂/CH₄
PD Arc
1.0E-06 1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03
過熱
C₂H₂/C₂H₆
PD Arc
1.0E-06 1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 1.0E+03
過熱
C₂H₂/C₂H₄
PD Arc
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