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第 2 章 エステル油中過熱・放電時のガス発生特性と

2.5.1 実験

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2.5 エステル油中アーク放電によるガス発生特性

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(2)油中球対球放電電極

図2. 49に油中でアーク放電を発生させるための球対球放電電極を示す。ガラ

ス管の上下にゴム栓を挿入した構造となっており、ステンレス球を先端に付け た電極棒は、ゴム栓を介して外とつながっている。上部の電極棒には、ねじの 回転を利用したギャップ長調節用微動装置が内蔵されており、内部を密閉した 状態でギャップ長を調整することができる。上部のゴム栓には、油の出し入れ や装置内部のガスを採取するためのポリエチレンチューブが挿入されており、

内部を開放しないで絶縁油の注入、油やガスのサンプリングが可能となってい る。

2. 49 アーク放電試験用油中球対球電極

(3)スイッチのチャタリング防止

実験回路のスイッチは、設置された金属棒を金属板接触させることで接地す る機械式のスイッチを用いており、チャタリングが発生した。チャタリングが 起こると放電が連続で2回以上発生し、放電毎の波形を正確に測定できなくな ってしまう。そこでスイッチ部の改良を行った。図2. 50に改善前後のスイッチ

Wood base Glass Pipe

Holder Plate Upper Electrode

Lower Electrode Sphere-Sphere

Electrode

PE Pipe

Rubber Plug

Rubber Plug

Gap Adjustor

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を示す。本改善の特徴は、ロール状に巻いた平編み銅線によりスイッチの衝撃 を和らげるのと同時に金属棒が跳ね返った際に接点が離れるのを防止するため にネオジム磁石で吸い付ける機構を有している点である。ネオジム磁石はロー ル状の平編み線の内側にあり、金属棒がバウンドしても平編み線の柔軟さで追 従し、接点が再び離れることを防止している。改良した実際のスイッチの写真 を図2. 51に示す。

2. 50 スイッチのチャタリング防止

2. 51 改善後のスイッチの様子

チャタリング;機械的スイッチの動作時に起こる微細な機械的振動現象

→スイッチが閉じる際にバウンドしてON・OFFを繰り返す。

改善前 改善後

平編み線を ロール状にし、

クッション性 を高めると同 時にマグネッ トの力でバウ ンドしても離 れない機構と する

マグネット

機械式スイッチ 接点部

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(4)アーク電圧計測法の改良

放電エネルギーを算出するためには、放電中の電流波形と電圧波形を正確に 計測しなければならない。研究の初期の段階では、高周波CTと高電圧プローブ を用いて放電中の電流、電圧波形を計測していた。しかし電圧波形は正確に計 測することが困難であった。

アーク放電中の電圧測定では、印加電圧に対してアーク電圧が非常に小さい ため、主に2つの問題が生じる。一つ目の問題は、オシロスコープのダイナミ ックレンジの問題である。印加電圧の高電圧領域からアーク電圧の低電圧領域 までを記録しようとした場合、垂直分解能が不足するため正確な測定が困難と なる。また低電圧部分の分解能を上げるために、レンジを低電圧に合わせ、高 電圧部分を飽和させて計測した場合、オシロスコープのアンプが飽和した影響 が残る。今回の測定では、オシロスコープのレンジを変えた測定値は、大きく 異なってしまうことが確認でき、この方法による測定値は間違っていると分か った。

2つ目の問題は、オシロスコープの特性の問題で、高電圧から急激に電圧が 変化した直後は、不安定になり測定値が不正確になる。実際の測定では、アー ク電圧が、逆の極性となって計測される例が多数認められた。図2. 52に油中で 放電させた際の電圧波形の例を示す。本実験では、マイナスの電圧が印加され る回路となっているため、印加電圧がマイナスとなっていることに注意する。

この波形は、油中ギャップに高電圧が印加され放電が起こって電圧が急激に降 下してアーク電圧に至る様子が描かれている。本来、図ではマイナス数百 V と なるはずのアーク電圧は、プラスの電圧で計測されており、逆の極性であった。

2. 52 電流プローブを用いたアーク電圧計測例(PFAE、Gap0.375mm) -0.25 -0.15 -0.05 0.05 0.15 0.25 0.35 0.45

-50000 -40000 -30000 -20000 -10000 0 10000

6.32 6.33 6.34 6.35 6.36 6.37 6.38 6.39 6.40

電流[A]

電圧[V]

V A

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これらの問題を解決するために、分圧器とクランプ回路を組み合わせた計測 回路を製作した。回路図を図2. 53に示す。本回路は、50:1の抵抗分圧器とツ ェナーダイオードを使ったクランプ回路を組み合わせた測定回路である。測定 では、この回路に 10:1 の電圧プローブを接続し、オシロスコープで波形を測定 する。本回路では、抵抗分圧器の比率を 50:1 に下げることで時間応答性を高 めている。改良していく中で、分圧器を製作する際、寄生のキャパシタンスの 影響が大きく、時間遅れの原因となることが分かった。したがって本回路では 抵抗分圧器の抵抗比を250kΩと5kΩという比較的小さい抵抗値で形成し、この 時間遅れを低減している。通常、高電圧プローブなどの設計では、プローブ側 のインピーダンスを高くするのがよいはずだが、今回の目的においては、アー ク発生により回路側に多量の電流が流れるため、分圧器の抵抗値を下げること による影響は、目的に対して問題ないことが分かった。

2. 53 アーク放電試験回路と改良したアーク電圧計測回路

測定回路の性能を確認するために、ファンクションジェネレータでパルスを 入力した際の応答を測定した。結果を図2. 54に示す。測定回路の出力波形の応 答時間は、600nsec程度であり、今回の目的に対して十分な性能を有しているこ とが確認できた。

2. 54 製作した測定回路のファンクションジェネレータ入力に対する応答時間確認

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実際に油中でのアーク放電時の電圧波形を測定した例を図 2. 55 に示す。(a) 図は全体の波形で(b)図は、電圧のスケールを拡大してある。ただしこの図では、

見やすくするため、高電圧プローブの波形を除いた。

放電の様子を波形を追ってみてみる。まず回路のスイッチが閉になり、緑色 で示した高電圧プローブの波形の電圧が上昇し、約 15kV の電圧が印加される。

その後放電が起こり電圧が急激に降下している様子が分かる。電圧降下と同時 に電流が流れだしており、放電が起こっていることが分かる(青色波形)。一方、

今回製作した回路を通した出力波形(赤色)は、高電圧が印加された瞬間、クリッ プ回路が動作し、電圧が一定値に固定されている様子が分かる。続いて放電が 起こり、電圧が降下、ついにはクリップ電圧を下回るとクリップが解除され、

通常通り電圧が測定されている。(b)の拡大図を見るとアーク電圧が逆極性にな ることなく正確に測定できていることが分かる。

(a) 全体波形

(b) 拡大図

2. 55 製作した分圧器とクリップ回路を用いた油中放電計測波形

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(5)実験手順

まず、部分放電試験同様の手順で試料油の調整を行う。続いた油中球対球電 極内部を窒素ガスで置換し、内部の空気を除去した。次に窒素ガスの圧力を用 いて油を油中球対球電極へ注入した。油を注入した後、電極容器内の油をバブ リングし、試料注入の際に微量に残存した空気成分を除去した。油を注入した 球対球電極を試験回路に接続し、高電圧を印加してアーク放電を20回発生させ る。その際、電流波形と電圧波形はすべて記録した。ガス発生量を求めるため に、放電前、放電後の絶縁油と上部空間のガスを採取し、ガスクロマトグラフ で分析した。

部分放電試験の際は、上部の空間を残さず、電極容器内を全て油で満たした が、アーク放電試験では、上部空間を一部残した。これはアーク放電では、発 生するガス量が多く、油中に全て溶解しないと考えられるため、油のみを計測 した場合、発生ガス量に大きな誤差を生じると考えたためである。ガス分析用 の試料は、油と上部空間のガスの両方を採取し、含まれるガス成分を合計し発 生ガス量を求めた。表2. 12に今回行った実験の条件を示す。

2. 12 アーク放電試験の実験条件

油種 Gap[mm] 印加電圧[kV] 放電回数

PFAE 0.25

16.0 20

18.0 20

20.0 20

FR3 0.25

17.0 20

19.0 20

21.0 20

MIDEL 0.25

17.0 21

19.0 20

21.5 20

鉱油 0.25

16.0 20

18.0 20

20.0 20