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第 2 章 エステル油中過熱・放電時のガス発生特性と

2.3.1 実験

(1) 局所加熱試験装置

図 2. 3に実験で用いた局所加熱試験装置を示す。本装置は下部のステンレス

容器の上にガラスの円筒が乗っている形状となっており、ガラス円筒の上部に はふたがされ、内部に絶縁油を注入して使用する。密閉構造となっており、油 を注入した状態で、油の真空脱気や窒素によるバブリングなどの処理が可能と なっている。装置の下部には、ステンレス製の加熱導体(SUS304製 20×76mm 厚

PFAE Envirotemp FR3 MIDEL 7131 鉱油

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さ0.35mm)が設置されており、電極につながれている。加熱導体に電流を流した

際のジュール熱で油を局所的に加熱する。油は、マグネチックスターラーで常 に撹拌し、均一になっている。装置には、冷却管があり、5℃の冷却水が常に循 環している。これにより油全体の温度が上昇するのを防いでいる。なお、試験 中の油温は、常に 60℃以下に保たれている。装置の上部にはガスサンプリング 用、下部には油サンプリング用のポートがあり、油の加熱前と試験開始後の時 間経過ごとの油と上部のガスが採取できる。また加熱導体の表面温度と油温は、

常にモニタリングできる。上部ガスの圧力については、圧力ゲージで計測した。

図 2. 4に本実験システムの構成を示す。本システムは、絶縁油を加熱する加

熱試験装置と加熱導体に電流を流す電源装置、油の過度な温度上昇を防ぐ冷却 装置及び計測系で構成されている。加熱導体の両端には、電源がつながれてお り、導体に電流を流すことで熱量を得る。加熱導体で十分な熱量を得るために 交流安定化電源の出力を変圧器で降圧させ電流値を稼いで使用した。加熱導体 へは10V、200A程度の出力を得ることができる。導体の温度は、後述する導体 に溶接された熱電対素線の熱起電力値をモニタリングして求め、この値が設定 温度値になるよう、交流安定化電源の電圧値を調整することで導体表面の温度 を調節した。装置内部にはコイル状の冷却管があり、冷却装置を用いて5℃の冷 却水を循環させて油全体の温度を上昇しすぎるのを防いでいる。加熱導体の表 面温度、油温、上部ガス温度は常にモニタリングし、データロガーを用いて記 録した。

2. 3 局所加熱試験装置

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2. 4実験システムの構成

(2) 温度計測方法

2.1でこれまでのエステル油中での局所過熱とガス発生について調査した 報告例を示したが、これらの実験結果の加熱温度とガス発生のデータは必ずし も一致しておらず相違がある。表 2. 2にエステル油中局所加熱試験による発生 ガスの報告例 [3] [4] [7]をまとめた。これは各文献からFR3の結果を抜き出して

電協研法 [11]で用いられるガスパターン図としたものである。熱分解の際、温

度と関連があると考えられるC2H4/C2H6比などの飽和・不飽和炭化水素の比率に 相違がある。C. Clarらのデータでは、500℃以上でC2H4の比率がC2H4よりも大 きくなっているが、M. Jovalekicらのデータでは、600℃以下の全ての温度領域で C2H6が最も多いガスとなっている。一方、栗山らのデータでは、400℃以上です でにC2H4の比率がC2H6より多い。またC2H2が発生する温度は、C. Clarや栗山 らの報告では、600℃以上で発生すると報告しているが、M. Jovalekicらは600℃ でC2H2は発生していない。これらの実験では、油の加熱方式や温度の計測法に 違いがあるため実験結果に違いが生じたものと推測される。一般に温度と反応 速度の関係は、指数関数的な変化となるため、温度による発生ガスとその量の 影響は非常に大きいと考えられる。また油中での加熱では、絶縁油による冷却 効果がかなり大きいと推測されるため、センサの接触点においての熱伝導ロス の影響もある。したがって油中での局所加熱試験では、試料の加熱方式、計測 方法、センサとその設置方法、温度調節方法などよく検討する必要があると考 えられる。

交流安定化電源 トランス CT 加熱試験装置 電流計

データロガ (温度測定)

加熱導体に流す電流を調整する。 冷却管

5℃

冷却装置 5℃冷却水 を循環

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2. 2 エステル油中での局所加熱試験における発生ガス報告例(FR3) [3] [4] [7]

実験の初期の段階では、加熱導体の中央に熱電対をネジ止めして表面温度を 計測していた。しかし同じ絶縁油を用いて導体に流す電流値を同じにしても同 一の温度にならず、この測定方法で温度調整しても発生ガスのデータは一定と ならなかった。熱電対と導体はネジで固定しても完全に同一となっていないた め、接触ロスがあり、温度が正確に測定できていない可能性が考えられる。ま た油中では、絶縁油による冷却作用が大きいため、熱電対の頭の部分からの放 熱も考えられる。

月岡ら [12]は、鉱油中での局所加熱実験を行っており、独自の方法で加熱部

の表面温度を計測している。この方法では、ヒーターとなるステンレス板上に 同じ材質のステンレス線とクロメル線を溶接する方法で、ステンレス線とクロ メル線の間の熱起電力を計測する。この方式は、熱電対の物理的な原理を応用 したもので原理的に導体とクロメル線の接合部が熱電対の先端となるため接触 によるロスが原理上なくなる。さらにクロメル線の数を増やせば複数点での計 測も可能であり、非常に優れた計測方法であるため、この方法を採用した。

実験で用いた温度計測方式を図 2. 5を用いて説明する。この例では、加熱導 体上の 3 点の表面温度を計測しようとしている。導体上の計測したい点にクロ メル線を 3 か所溶接し、導体と同じ材質のステンレス線を別の場所に溶接して ある。ステンレス線の位置は導体上であればどこでもよく、溶接しやすい任意

C.Clarら

M. Jovalekicら

栗山ら

300℃ 400℃ 500℃ 600℃

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0.0

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂

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の場所を選ぶことができる。この状態でクロメル線の各チャンネルとステンレ ス線の間の電圧は、熱電対の原理からクロメル線の溶接点の温度を表しており、

この電圧をモニタリングすることで導体の表面温度を正確に測定することが可 能である。なお、実験では、交流電流を導体に流すことで導体の温度を上げて いる。したがって電源の交流成分が、温度計測の熱起電力と重なって計測され る。クロメル線とSUS線の間にはコンデンサを挿入し、交流成分を除去した。

クロメルとステンレスの組合せは一般的な熱電対にはないため、参照できる 熱起電力のデータは存在しない。このため実際に熱起電力のデータを測定して 求めた。熱起電力の測定装置の模式図(図2. 6)を示す。まず電気炉内に加熱試験 で用いる加熱導体を設置する。加熱導体には、ステンレス線とクロメル線を溶 接し、計測用のSUS-クロメル熱電対とする。SUS-クロメル熱電対はアイスバス を用いて冷接点を設け、熱起電力をデータロガーで計測する。実際の温度は、

加熱導体上に K 熱電対の先端を溶接してその温度を測定した。この状態で電気 炉の温度を室温から 700℃まで上昇させ、加熱導体表面温度と SUS-クロメル間 の電圧をプロットした。結果を図 2. 7に示す。以後の実験では、この熱起電力 校正データから加熱導体の表面温度を求めた。なお、熱起電力の校正では、冷 接点にアイスバスを用いたが、実際の計測では、計測回路周辺の気温を計測し、

気温相当分の電圧を発生させる冷接点補償回路を製作し、計測に用いた。

2. 5 加熱導体の表面温度計測

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2. 6 SUS-クロメルの熱起電力測定装置

2. 7 SUS-クロメル熱電対の熱起電力

(3) 加熱導体の保温

加熱導体は、絶縁油に接しており、導体の温度上昇によって対流も起こるた め、その冷却効果で、実験装置の最大電流を流しても350℃程度までしか温度を 上げることができなかった。そこで導体をガラステープで保温して温度をさら に上げることを検討した。使用したガラステープの外観写真を図 2. 8 に示す。

y = 0.0249x + 0.0581 R² = 0.9984

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

0 200 400 600 800

熱起電力(mV)

温度(℃)

47 幅 27mm、厚さ約 1mm の市販のガラ ステープを適宜カットして使用した。

なおガラステープは、700℃の電気炉 で 24 時間加熱し、ガラステープから のガス発生の影響を除去したものを 使用した。

油中での保温効果を確認するため に加熱試験装置に加熱導体を設置し、

加熱導体の温度を計測した。絶縁油は 試料油の中で粘度が低く冷却効果に 優れる鉱油とPFAEを用いた。図2. 9

に実験時の温度計測点を示す。加熱導体表面は、導体の中心と中心から 10mm ずつ端に向かった 2 点の合計 3 点測定した。保温範囲は、導体の固定ネジ部以 外の全面とした。油温については、加熱導体の下側に 1 点、装置中央に 1 点、

上部に1点の計3点測定した。温度は導体中央部の温度で調整し、100~700℃ま で100℃刻みで調整した。温度は温度調整後、安定するまで待ってから測定した。

結果を図2. 10に示す。

2. 9 加熱導体保温効果確認試験の温度計測箇所

2. 8 保温に用いたガラステープ