第 2 章 エステル油中過熱・放電時のガス発生特性と
2.3.3 考察
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発生量が多いがCOはほとんど発生していない。FR3はCOとCO2の比率がほぼ 同じであり、MIDELではCO2よりCOの発生量が多い。PFAEはモノエステル、
FR3はトリグリセリド構造であり、MIDELはポリオールエステルとエステル基 の構造に違いがある。油種によってCO、CO2の発生比率の差は、各エステル油 の分子構造の差に由来している可能性が考えられる。
なお、鉱油においても加熱開始3時間までにおいて微量のCO、CO2が発生し ているが、それ以降は増加しておらず、発生は継続しておらず、試験初期の絶 縁油に微量に含まれていた酸素が消費された結果であると推測される。エステ ル油と鉱油でのCO、CO2発生の差が明確に表れたことは、今回の実験が、酸素 が少ない条件で正確に行われたことを示しており、実験条件のコントロールが 適切であったといえる。
(2)水素及び炭化水素ガスの発生
加熱温度ごとの発生ガスの特徴をより明確にするために、電協研法のガスパ ターン図を作成した。ガスパターン図は、発生ガスのうち最も量が多かったも のを1とした場合の比率をグラフにプロットし、折れ線グラフで表したもので、
折れ線で描かれるパターンで異常の様相を判断するのに用いられる。電協研法 では通常、H2、CH4、C2H6、C2H4、C2H2までのガスを対象とするが、これをC3H8、 C3H6ガスまで拡張した。結果を表2. 4に示す。鉱油とエステル油で特徴が異な るだけでなく、エステル油でも油種ごとにパターンに異なる特徴があることが 分かる。このことからエステル油では、油種ごとで異なった基準値や診断方法 が必要であると考えられる。
加熱温度ごとに見てみると、各温度でパターンが変化している様子が分かる。
エステル油全体で大まかにみるとC2H6、C2H4やC3H8とC3H6といった飽和炭化 水素と不飽和炭化水素の発生比率が温度上昇に伴い変化しており、鉱油同様、
高温で不飽和炭化水素の比率が大きくなる特徴があることが分かる。エステル 油においても飽和・不飽和炭化水素の比率は、過熱温度の指標になり得ると考 えられる。エステル油のガスパターンの特徴として、ある温度帯で特異的の比 率が多くなるガスが存在している。FR3 では、C2H6が 500℃以下の領域で非常
に多く、MIDELでは400~500℃の範囲でC3H8の割合が多い領域があることが分
かる。こういった特徴は、その温度帯でしか現れないことから、これらの温度 帯特有のガス成分の存在は、過熱温度の推定に有用であると考えられる。
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表2. 4 局所加熱試験で各温度における発生ガスパターン
(3)エステル油中過熱時のガス発生特性と診断指標
加熱試験の結果から、エステル油中で油が局所的に加熱された際に発生する ガスの特徴が明らかになった。ここでは、局所過熱時特有のガス発生特性を整 理し、異常診断に利用できる指標について考察する。発生ガスには以下のよう な特徴があった。
① C2H6及びC2H4が発生
油種の違いに関わらず、C2H6及びC2H4の比率が多かった。全体的に500℃
以下の低温の加熱時にC2H6が多く、温度上昇に伴ってC2H4の比率が高くな る傾向にある。600℃以上の高温では、試験を行った全ての油種でC2H4が最 も多くなった。温度上昇に伴うガス比率の変化を活用すれば、過熱温度を推
FR3 MIDEL 鉱油
PFAE
300℃
400℃
500℃
600℃
700℃
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
0 0.5 1
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆
60 定することが可能であると考えられる。
② 温度毎にガス発生の特徴が変化する。
表2. 4で示したように、加熱温度毎にガス発生の特徴が変化することが分 かった。したがってガス発生の特徴を整理すれば、過熱温度の推定が可能で あると考えられる。
③ 油種によってガス発生特性が異なる。
油種によってもガスの発生特性は異なることが分かった。鉱油とエステル 油でも特徴が異なり、エステル油でも油種毎に違っている。このことから、
診断法においては、全ての油種で統一することは困難で、油種毎に定める必 要があると考えられる。ただし、Envirotemp FR3の低温時にC2H6が多いこと
や、MIDEL7131 で 400℃~500℃の領域で C3H8が多いことなど、油種特有の
特徴も認められた。こうした油種毎の特徴をうまく活かした診断法ができれ ば、診断がより高精度になることも考えられる。
以上のことから、油中ガス分析を使ったエステル油の過熱時における診断の 可能性として以下のことが考えられる。
・ 鉱油とエステル油を同じ判断基準で診断することは困難である。
・ エステル油も油種毎に判断基準を定めることが望ましい。
・ ガス発生の特徴から、過熱を判定できる。
・ ガス発生パターンの分類から過熱温度を推定できる。
・ 発生ガスの比率から過熱温度を推定できる。
・ 油種特集の発生ガスの特徴を利用することで診断の高精度化が見込める