第 3 章 量子化学計算によるエステル油の熱分解による
3.4.2 ラジカルの生成と反応経路の検討
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ても安定化する。ラジカル生成反応において、これらのラジカルを生成する結合 の解離エネルギーは小さくなると考えられ、結合解離エネルギーの値にも影響 を及ぼすと考えられる。この考え方に照らせば、アリルラジカル(CH2=CHCH2・ ラジカル)やカルボニル基のα-炭素ラジカル(O=C-CH2・ラジカル)は、共鳴によ って安定化する。今回の計算結果では、アリルラジカルを生じるC1, C4, C5, C7, C8, C11 結合とカルボニル基のα炭素ラジカルを生じる C16 結合の解離エネルギ ーが低くなっており、ラジカルの安定性の理論と一致している。C-H結合に目を 向けると、こちらも C-C 結合同様に化学構造の影響を受け、結合解離エネルギ ーに差異が生じていることが分かる。リノレン酸メチルについては、二重結合に 挟まれたメチレン基(活性メチレン基)は活性であり、C-H結合の解離エネルギー が低くなることが予測されるが、計算結果もこれと一致する傾向を示した。この ように、二重結合の存在が結合の存在が、ラジカル生成反応にも大きく影響する ことが示された。
大豆油などの局所加熱試験で植物油を基油として絶縁油の 400℃以下の加熱 温度でC2H6が多量に発生することが知られているが、この結果からは、C2H6発 生の原因はわからなかった。今回は、1種類の脂肪酸エステルのみの計算であっ たため、他の脂肪酸が原因の可能性がある。また今回は計算を簡単にするために トリグリセリド構造の分解については、検討できていない。さらに二重結合と生 成したラジカルの反応が関与している可能性も考えられる。したがってトリグ リセリド構造を持つ植物油系のエステル油の分解ガス検討には、より幅広い検 討が必要であると考えられる。
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②の原子引き抜き反応について、生成したラジカルは、周囲を他の油分子に囲 われていると考えられる。したがってこれら油分子から水素を引き抜く反応は 容易に起こると考えられる。生成したラジカルは、周囲の分子から水素原子を引 き抜いて安定化する。これらの反応により、H・、CH3・、C2H5・( ・ はラジカ ルであることを示す。)は容易に H2、CH4、C2H6 ガスを生成すると考えられる。
この反応タイプをType Aとする。
④のβ開裂反応について考える。生成したラジカルは、末端に存在するため、
β開裂によってH・が離脱する場合と、R・が離脱する場合が考えられる。この 場合、ラジカルの離脱により末端に二重結合ができる。H・が離脱する場合の反
応をType B、アルキル基が離脱する場合を反応Type Cと呼ぶ。
表3. 1 ラジカル反応
これらの反応パターンを実際に生成するラジカルに当てはめて反応経路と反 応のタイプを整理した。生成するガスの種類で整理すると表 3. 2 のようにまと めることができる。表には、DGAで使用するガスを赤字で示している。ラジカ ルタイプ0と1および2は、H・、CH3・、C2H5・が水素を引き抜いてH2、CH4、
① ラジカルカップリング
R1・ + ・R2 → R1-R2
2つのラジカルが結合してラジカルが消滅する反応で熱分解におけるラジカルによる 連鎖反応が終了する際の反応。
② 原子引き抜き
R・ + A-R’ → R-A + ・R’
ラジカルが他の分子から原子を引き抜く反応で、引き抜かれた分子にラジカルが残る。
③ 二重結合へのラジカル付加
ラジカルと二重結合による反応で、ラジカルが二重結合に付加する。
④ β開裂
ラジカルから遊離基が脱離して二重結合ができる反応で二重結合によるラジカル付加 の逆反応。
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C2H6が生成するパターンである。ラジカルタイプ3~6は、アルキルラジカルの 反応で、反応タイプによって生成物が異なる。またラジカルの炭素数によって反 応生成物も異なってくる。表3. 2では、生成するガスの種類によって分類した。
ラジカルType 7および8は、2H-12Aの2エチルヘキシルの側鎖部分が切断した
場合のパターンを表しており、2H-12Aのみに適応される。このように生成する ラジカルとガス生成反応経路をM-12Aは0-6の7つ、2H-12Aは、0-8の9つの パターンに整理することができた。
表3. 2 結合切断により生成するラジカルとその反応
(☆は2H-12Aにのみ適用)
0 H・ H・ + R-H → H2 + R・ A
1 CH3・ CH3・ + R-H →CH4 + R・ A
CH3CH2・+ R-H→C2H6 + R・ A
CH3CH2・ → C2H4+ H・ B
CH3CH2CH2・ + R-H →CH3CH2CH3 +R・ A CH3CH2CH2・ → CH3CH=CH2 + H・ B CH3CH2CH2・ → CH3・+C2H4 C CH3CH2CH2CH2・ + R-H → CH3CH2CH2CH3 + R・ A CH3CH2CH2CH2・ → CH3CH2CH=CH2 + H・ B CH3CH2CH2CH2・→C2H5・(→C2H6) + C2H4 C R-CH2CH2・ + R'-H → R-CH2CH3 + R'・ A R-CH2CH2・ → R-CH=CH2+H・ B
R-CH2CH2・ → R・+C2H4 C
・CH2CH2-COOR + R'-H → CH3CH2-COOR + R'・ A
・CH2CH2-COOR → H・+CH2=CHCOOR B
・CH2CH2-COOR → C2H4 + ・COOR C R-COOCH2CH・CH2CH3 + R'-H
→ R-COOCHRCH2CH2CH3 + R'・ A R-COOCH2CH・CH2CH3
→ R-COOCH2CH=CH2+H・ B R-COOCH2CH・CH2CH3
→ R-COOCH2CH=CHCH3+H・ B R-COOCH2CH2CH・CH2CH2CH3 R'-H
→ R-COOCH2CH2CH2CH2CH2CH3 + R'・ A R-COOCH2CH2CH・CH2CH2CH3
→ R-COOCH2CH2CH=CH2+*CH2CH3(→C2H6) + H・ B R-COOCH2CH2CH・CH2CH2CH3
→ R-COOCH2CH2CH=CHCH2CH3 + H・ B 6 ・CH2CH2-COOR
7☆ R-COOCH2CH・CH2CH3
8☆ R-COOCH2CH2CH・CH2CH2CH3 3 CH3CH2CH2・
4 CH3CH2CH2CH2・
5 R-CH2CH2・ Radical
Type Reactant Radicals Reaction Reaction
Type
2 CH3CH2・
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