第 2 章 エステル油中過熱・放電時のガス発生特性と
2.4.2 結果
(1)部分放電信号波形
図2. 41に実際に計測された部分放電信号の波形の代表例を示す。油中での部
分放電は、散発的発生しており、印加電圧波形の全ての周期で発生しているわ けではないことが分かった。部分放電は、印加電圧波形の+側で主に発生して おり、電源波形のピーク付近で多かった。また部分放電のパルスの大きさは、
ばらつきが大きく様々なものが含まれていることが分かった。
脱気油の調整
試験装置への油の注入
油中部分放電試験 (1h)
終了
・真空脱気(12h)
・N2バブリング
初期の油採取
放電後の油採取
・部分放電計測
(エネルギー・放電回数の記録)
油中ガス分析 水分分析
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図2. 41 部分放電信号波形の代表例(2CH:印加電圧、3CH:PD信号) (a) 発生位置 (b)部分放電波形
(鉱油:試験No.1015-1)
(a) 発生位置 (b)部分放電波形 (Envirotemp FR3:試験No.1203 -1)
(a) 発生位置 (b)部分放電波形 (MIDEL7131:試験No.1213 -1)
(a) 発生位置 (b)部分放電波形 (PFAE、試験No.0717-1)
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(2)放電電荷量
実験時に測定したPDカウンタの出力値から、放電試験における総放電電荷量 を求めた。さらにPDカウンタで記録される放電回数を用いて放電1回あたりの 平均放電電荷量を求めた。結果を表2. 5に示す。表からMIDELでは、部分放電 発生頻度が多く、PFAEでは部分放電の発生頻度が少ない傾向にあることが分か る。ただし放電 1 回あたりの平均放電電荷量は、油種による差はそれほど多く なく、本試験では平均放電電荷量として数百から数千pC程度の放電が発生して いることが分かった。
表2. 5 部分放電試験の試験条件と放電電荷量
試験No.
Gap長 [mm]
印加電圧 [kVpeak]
試験時間 [min]
放電回数
総放電 電荷量[pC]
平均放電 電荷量
[pC]
発生頻度 [回/min.]
PFAE
1009-1 30 45.1 20.0 622 930993 1497 31
1018-1 30 48.3 10.0 16611 16355825 985 1661
1029-1 30 45.1 60.0 1071 1357319 1267 18
1105-1 30 49.6 60.0 302 330595 1095 5
1212-2 40 50.9 60.0 156110 179773770 1152 2602
FR3
1203-1 30 40.2 60.0 1637 2081964 1272 27
1203-2 30 40.7 60.0 749 1332172 1779 12
1205-1 30 41.3 60.0 432 730521 1691 7
1210-1 35 45.3 60.0 349 372193 1066 6
1210-2 40 48.1 60.0 2889 4431929 1534 48
1212-1 40 48.1 60.0 3168 3885977 1227 53
MIDEL
1213-1 30 36.8 60.0 12722 20920384 1644 212
1216-2 35 40.7 60.0 14284 12046655 843 238
1219-2 40 49.2 60.0 27074 31636121 1169 451
鉱油
0823-1 35 64.9 90.0 78 120330 1543 1
1015-2 35 56.4 60.0 698 882892 1265 12
1021-1 35 58.5 60.0 447 564753 1263 7
1119-1 35 64.9 60.0 1712 1390770 812 29
1119-2 40 53.6 60.0 2591 2657058 1025 43
1121-2 35 53.7 60.0 2836 2731951 963 47
1126-1 35 55.4 60.0 1035 961075 929 17
1126-2 35 70.7 60.0 755 599223 794 13
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(3)放電電荷量とガス発生量の関係
図2. 42に総放電電荷量と全発生ガス量の関係を示す。全発生ガス量は、測定
を行った H2、CH4、C2H6、C2H4、C2H2の合計とした。どの油種においても放電 電荷量の合計に対してガス発生量は増加傾向にある。しかし、その発生ガス量 のばらつきは大きく、単純に全放電電荷量だけがガス発生量を決定しているわ けではないことが分かる。
図2. 42 放電電荷量と全発生ガス量の関係
(4)発生ガスの種類
各試験における発生ガス量を種類ごとに図2. 43にまとめた。全ての油種にお いて主要なガスはH2であった。炭化水素ガスも発生しており、鉱油における放 電時の特徴的なガスであるC2H2が各エステル油においても発生することが確認 できた。CO2が複数の試験で検出されているが、発生傾向は一定でなく、放電に よって増加していない。したがってこれは試験中に空気中の CO2が混入したも のと考えられる。局所加熱試験では、加熱によるエステル基の分解によって多
量の CO、CO2が発生した。加熱では、C2H6や C2H4などの炭化水素ガスの生成
に伴って多量のCOやCO2が生成することが特徴であった。このことからCOや CO2と炭化水素系ガスの比率は、過熱と部分放電を判別することに利用できる可 能性がある。
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図2. 43 油中部分放電による生成ガス(20℃1atm時の体積[μl])
続いて生成ガスの比率を図2. 44に示す。CO、CO2については、空気からの混 入の可能性が高いことから、比率の算出ではこれらのガスを除いた。比率でみ ると部分放電によってH2とC2H2が生成するパターンがより明確になった。C2H2
が全ての油種で発生しているが、その比率は、油種によって様々で、特に FR3 ではその発生比率が他のエステル油に比べた低かった。エステル油においても 鉱油同様に H2と C2H2が部分放電において特徴的なガスであることが確認でき た。しかし、その発生比率やガスパターンの特徴は、油種により多少異なって いる。
0.0E+00 1.0E-03 2.0E-03 3.0E-03 4.0E-03 5.0E-03 6.0E-03 7.0E-03 8.0E-03 9.0E-03 1.0E-02
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆ CO CO₂
Gas volume [μl] 1018-1
1212-2 1105-1 1029-1 1009-1 PFAE
0.0E+00 5.0E-04 1.0E-03 1.5E-03 2.0E-03 2.5E-03 3.0E-03 3.5E-03 4.0E-03
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆ CO CO₂
GasVolume [μl] 1210-1
1212-1 1203-1 1210-2 1205-1 1203-2 Envirotemp FR3
0.0E+00 2.0E-04 4.0E-04 6.0E-04 8.0E-04 1.0E-03 1.2E-03
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆ CO CO₂
Gasvolume [μl]
1216-2 1219-2 1213-1 MIDEL7131
0.0E+00 1.0E-02 2.0E-02 3.0E-02 4.0E-02 5.0E-02 6.0E-02 7.0E-02 8.0E-02
H₂ CH₄ C₂H₆ C₂H₄ C₂H₂ C₃H₈ C₃H₆ CO CO₂
Gasvolume [μl]
1126-2 1119-1 1126-1 1121-2 1119-2 1021-1 1015-2 0823-1 鉱油
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図2. 44 部分放電により生成するガスの比率(CO、CO2を除いた比率)