第4章 感性性能設計技術
4.2 操舵トルク入力の定量化指標に基づく性能設計
4.2.5 車両運動が操舵応答に及ぼす影響
前節4.1において,車両運動を操舵系への剛性と減衰に置き換えて解析をおこなった.そ こでは剛性,減衰とも1次近似式を用いた.これは操舵角入力を想定し,0.2 Hzの単一周波 数応答に限定したためである.操舵トルク入力では前項で示したように,トルクの単一周 波数入力であっても,高調波成分が入るため,より広い周波数領域をみる必要があり,こ こでは厳密な周波数応答で解析を試みる.
4.1.2 の式(4.4)~式(4.13)までの車両運動に関する式をラプラス変換して解き,ヨー
角速度rと車体横滑り角β,横加速度Ay,操舵系へのトルクTsatを求め,剛性項Ksatを式(4.97), 減衰項Csatを式(4.98)と定義して求める.この時,式の見通しをよくするため,IzN=1とし て整理すると式(4.99)~式(4.103)のように求まる.
( )
sat n sat sat
D T
K T Re
2
Re =
= θ (4.97)
( )
sat n sat sat
D T
C T Im
2
Im =
= ⋅ θ
ω (4.98)
−
+
+
−
− +
⋅
= l
C C V
C gC l
C g l
C C V
g gC G
Tn Tq r r f r r2 f f r
2 2 2
4 2 2 Re Re
2 ω
ω
θ (4.99)
−
+
⋅
= V l
g gC V C
Tn GTq r r 2
2 2 2
Im
Im θ ω
(4.100)
( ) ( ) ( ( ) )
− + +
−
+ + +
= 2 4
2 2 2
2 2
2 2 4
2 2
V l
C C V l C gC g l
C C V
l C C g g N
Dsat s ω f f f r ω f r r f (4.101)
g D m C
GTqRe =ξ f wf (4.102)
2 2
Im C mD g
GTq =ξ f wf (4.103)
操舵系へのSATであるTsat,車速ごとの周波数特性は,式(4.99),式(4.100)~式(4.103)
に対応するIzN≠1の厳密解より求め,車速100 km/hの場合,図4–20となる.基準のパラ
メータは表4-1による.また,図4-20,図4-21にSATの周波数特性に対する後輪Cpの影 響を,図4-22にSATの周波数特性に対する車速の影響を示す.
図4-20 SATの剛性項と減衰項の周波数特性(後輪 Cp の影響)車速 100km/h
図4-21 SATの剛性項と減衰項の周波数特性(後輪 Cp の影響)車速 40km/h Frequency [Hz]
0.1 1 1.4 2 5
K sat[Nm/rad]
0 10 20 30
Cr=20 Cr=25 Cr=30
Frequency [Hz]
0.1 1 1.4 2 5
C sat[Nms/rad]
0 0.5 1 1.5 K sat[Nm/rad]C sat[Nms/rad]
図4-22 SATの周波数特性に対する車速の影響 Cr=20
図4-20~図4-22が示すように,SATの剛性項,減衰項は車速,操舵周波数,Cpにより 大きく変化する.これらの影響は,式(4.99),式(4.100)~式(4.103)からも考察ができ るように,周波数によりSATが大きく変化する.そのため,操舵入力が単一の周波数入力 となる操舵角のサイン入力の応答では,その一面を解析したことになる.操舵トルク入力 においては,入力周波数以外の高調波が操舵角の入力となり,SAT の剛性項と減衰項の周 波数軸上で異なった応答が重畳される.80 km/h 以上の車速では,剛性項の周波数特性は,
1.4 Hz付近で大きく落ち込み,減衰項では,0.7 Hz以下では比較的大きな負の減衰となるが,
2.0 Hz近辺では小さな正の減衰となる.これらはパワーアシストや,通常の減衰制御では補
償できないことを示している.図4-22が示すように,60 km/h以下では,SAT減衰項が正 となり,図4-21が示すように,後輪Cpが高くなるに従い減衰が大きくなる.しかし,表 4-2や図4-20が示すように,SATの減衰項の影響が後輪Cpにより変化するため,それに応 じた減衰の補償をEPSでおこなう必要がある.
Frequency [Hz]
0.1 1 1.4 2 5
-4 -2 0 2
Frequency [Hz]
0.1 1 1.4 2 5
0 10 20 30 40
20 km/h 40 km/h 60 km/h 80 km/h 100 km/h 120 km/h 140 km/h