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第7章 結 論

7.2 今後の展望

7.2.4 今後の研究への展望

感性に係る以外の分野では,機械学会誌の小特集[15]にある,「VE(Virtual Engineering)

時代の設計/ものづくり」で述べられているように,さまざまな分野でV字型開発プロセス が導入され実践されていることがうかがえる.これは物理的な目標特性が比較的容易に定 めることができるためと考えられる.一方で,感性性能の係る部分においてV 字型開発プ ロセスを実践するには,人間の感覚や感受特性を物理的な定量値に落とし込む必要があり,

さらにその物理的な定量値に基づく目標特性を提示しなければならない.それゆえに,操 舵感はこれまで長く,熟練のテストドライバの主観評価に基づいたチューニングによって 作り上げてきた.それは現在においてもほとんど同じ状況にあるといわれており[1],人間 の感覚や感受特性が係る感性性能などにおける,定量化の困難さを表している.本論文に おいても,操舵感に関するすべての評価を定量化したわけではなく,定量化する操舵領域 の拡大が必要である.そのため,今後も人間特性の研究がおこなわれることは明白である.

7.2.1 において指摘したように,自動運転技術においても,人間の感受特性や人間の操作特

性などの研究が求められる.自動運転から手動運転への切り替え時の,機械と人間との相 互作用(コンフリクト)の問題や,人間の特性に応じた自動運転のさせ方,さらに,本研 究で得られたような,操舵トルク特性の基本は守りつつ,高齢化社会への移行に伴う高齢 ドライバに適した操舵特性の最適化,より個人に最適化した操舵特性など,研究課題は広 がっている.ここで解析した結果や,得られた知見,感性の定量化プロセスや,検証実験 の方法,全体のV字型開発プロセスが,これらの課題の解決の一助となるものと考える.

参考文献

[1]Manfred Harrer and Peter Pfeffer:“Steering Handbook”,Springer,p.149,2016.

[2]公益社団法人 自動車技術会:“ITSの標準化2015”,ISSN 2189-5643,pp.5-6,2015.

www.jsae.or.jp/01info/its/2015_bro_j.pdf

[3]谷口正信:“自動運転の国際基準調和活動”,自動車技術,Vol.69,No.12,pp.12-17,2015.

[4]石原敦,九郎丸善和,仲正美:“自動運転・隊列走行用操舵アクチュエータ”,JTEKT ENGINEERING JOURNAL,No.1009,pp.61-65,2011.

[5]茂木克敏,水貝智洋,桜井良,鈴木伸幸:“新機構ステアバイワイヤ操舵システム”, NTN Technical Review,No.79,pp.42-50,2011.

[6]小船達郎,三木大輔,日比元明,狩野芳郎,安部正人:“ステア–バイ–ワイヤの操舵反 力要素が車両の制御しやすさに及ぼす影響”,自動車技術会学術講演会前刷集,No.63-12,

pp.13-16,2012.

[7]三木大輔,日比元明,新木亮汰,狩野芳郎,安部正人:“ステア–バイ–ワイヤの操舵反 力要素が操舵特性に及ぼす影響”,自動車技術会学術講演会前刷集,No.60-13,pp.1-4,

2013.

[8]平岡敏洋,熊本博光:“操舵反力提示による車両状態の判別性向上がステアバイワイヤ 車両の運転行動に与える影響”,ヒューマンインターフェース学会論文集,Vol.9,No.4,

2007.

[9]Yixin Yao:“Vehicle Steer-by-Wire System Control”,SAE Technical Paper 2006-01-1175, 2006.

[10] Zhaozhong Zhang and Dongpu Cao:“Performance Analyses of Driver-Vehicle-Steer-By-Wire Systems Considering Driver Neuromuscular Dynamics”,SAE Technical Paper 2016-01-0456,

2016.

[11] Jaepoong Lee,Sehyun Chang,Kwangil Kim,Bongchoon Jang,Dongpil Lee,Byungrim Lee and Kyongsu Yi:“Steering Wheel Torque Control of Steer-by-Wire System for Steering Feel”, SAE Technical Paper 2017-01-1567,2017.

[12] M. Selçuk Arslan:“A Hysteresis-Based Steering Feel Model for Steer-by-Wire Systems”, Mathematical Problems in Engineering,Vol. 2017,Article ID 2313529,2017.

[13] 山田大介,久代育生,村岸裕治,小野英一:“操舵系のヒステリシス特性が操舵に与え る影響の解析”,自動車技術会学術講演会前刷集,No.91-10,pp.7-12,2015.

[14] 山田大介,久代育生,村岸裕治:“操舵トルクの特性が人間-自動車系に及ぼす影響”, 自動車技術会論文集,Vol.44,No.2,pp.459-465,2013.

[15] 日本機械学会:“VE(Virtual Engineering)時代の設計/ものづくり~設計工学・システ ム部門講演会ワークショップからの報告と提言~”, 日本機械学会誌,Vol.120,No.1184,

pp.28-41,2017.

本研究に関する主論文及び研究発表一覧

(主論文)

題 目 ジャーク最小モデルを基にする熟練運転者の操舵パターンの数学モ デル

著 者 名 久代育生,鈴木桂輔

学術雑誌目 自動車技術会論文集, Vol.47, No.5, pp.1103-1110 発行年月日 2016年9月

題 目 操舵トルクのサイン波入力による操舵感の定量化指標の提案 著 者 名 久代育生,鈴木桂輔

学術雑誌目 日本機械学会論文集 Vol.83, No.849,16p.

DOI: 10.1299/transjsme.16-00437 発行年月日 2017年5月

題 目 A Study of the Effect of Steering Force Characteristics on Steering Feel 著 者 名 Ikuo Kushiro, Keisuke Suzuki

学術雑誌目 Proceeding of The 2nd Asian Conference on Ergonomics and Design 2017, 人間工学 Vol.53, pp.676-679

発行年月日 2017年6月