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第5章 性能確認・操舵トルク特性がドライバの操舵に及ぼす影響

5.2 実験方法

でコースに沿って操舵するよう教示した.生体信号の解析,物理的特性である操舵応答の 解析,主観的評価の3種から,操舵角に対する車両応答は変えずに,操舵角-操舵トルク特 性の影響を解析した.

5.2.1 実験装置

実験装置は図 5-1 に示す,定置型のドライビングシミュレータを用いた.システムの構 成は図5-2に示す.

図5-1 定置型ドライビングシミュレータ

図5-2 ドライビングシミュレータ システム構成

ドライビングシミュレータは4台のパーソナルコンピュータ(PC1,PC2,PC3,PC4)に より構成されている.PC1はロータリーエンコーダから取得した操舵角をもとに,車両運動 計算ソフトであるCarSimを用い車両運動の計算をおこなう.操舵角と車両のセルフアライ ニングトルクを操舵軸周りに変換した値を,Matlab/Simulink で構築した電動パワーステア リング(EPS)のモデルに入力して操舵トルク値を出力し,DC モータにて操舵トルクを生 成する.PC2,PC3,PC4 は描画用PC として使用し,プロジェクタを介して中央,右面,

左面のスクリーンにシミュレーション中の風景を映し出す.EPSのモデルを図5-3に示す.

図5-3 EPSのモデル化

入力としてポート1が操舵角,ポート2が操舵システム周りのSAT,出力としてポート1 が操舵トルク,ポート 2 が車両モデルへの操舵角である.なお,人間が操舵する時の力と して操舵力という言葉を用いるが,操舵系で考える場合は操舵トルクを用いる.

操舵トルクのヒステリシスの生成は,図 5-4 に示す,剛性と摩擦が直列につながる弾性 摩擦モデルを複数個並列に配したモデルを用いた.この構成により,摩擦感を感じない滑 らかな操舵が可能となる[11].なお,ここでは5個の弾性摩擦で構成された摩擦モデルを用 いた.摩擦要素は式(5.1)~式(5.3)で表す.

図5-4 弾性摩擦のモデル化 s

fn:各弾性摩擦要素の摩擦力 kn:各弾性摩擦要素の剛性

fn.max:各弾性摩擦要素から計算される摩擦力の総和

) (

n n.max

n

n

k x k x f

f = ≦

(5.1)

)

(

.max

max

. n n

n

n

f k x f

f = >

(5.2)

=

= 5

1 n

n

sum f

f (5.3)

5.2.2 操舵トルク特性

操舵トルク特性は,操舵角-操舵トルクのリサジュー波形で表される.検証実験に用いた 操舵トルク特性は,次の4種を用いた.

1)Case#1:操舵トルクのヒステリシスを持つ,線形操舵トルク特性 2)Case#2:操舵トルクのヒステリシスを持つ,非線形操舵トルク特性

3)Case#3:操舵トルクのヒステリシスを持つ,緩やかな非線形性を有する操舵トルク特性

4)Case#4:ヒステリシスを持たない,緩やかな非線形性を有する操舵トルク特性 図5-5にその特性を示す.

図5-5 操舵角-操舵トルク特性

5.2.3 走行コースと条件 走行コースは2種類設定した.

1)コース#1:連続S字コースとし,図5-6に示すように,計測区間を限定した.

2)コース#2:L字コースとして,いずれも旋回区間の半径Rは70 mとし,操舵に集中さ せるため,アクセル操作はおこなわず,一定速度60 km/hでコースを走行した.

図5-6 走行コース

実験参加者には練習走行で 4種の操舵トルク特性全てを 1 度走行し,操舵トルク特性ご との違いを認識してもらった.その後,本番走行において1条件につき5走行し,4条件の 計20走行を実施した.

5.2.4 実験参加者

実験参加者はインフォームドコンセントを得た,通学で自動車を運転している男子学生 10名(平均22.8±1.66歳)である.また,実験参加者には事前に操舵トルク特性の違いを 把握しているかの確認を口頭でおこない,全員が違いを認識していることを確認した.

5.2.5 計測装置

筋電位の計測には (有)追坂電子機器製のP-EMG plusを使用した.サンプリング周期 は1msとし,フィルタのカットオフ周波数は,ローパスフィルタ100 Hz,ハイパスフィル タ20 Hzに設定し,バンドパスフィルタの特性とした.電極にはAmbuのBlue Sensor Mを 使用した.