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第6章 感性性能設計の実践と開発プロセスの提案

6.3 感性性能の開発プロセスの提案

6.3.1 性能イメージから定量目標

ここでは,全体の感性性能V字型開発プロセスにおいて,図6-13に示すように感性性能 イメージから車両定量目標までのプロセスを詳細に述べ,感性性能の定量化プロセスを明 確にする.

図6-13 V字型開発プロセスにおける感性性能定量化プロセス

感性性能イメージから車両目標設定に至るには,定量的な評価指標の構築が必要である.

ここでの感性性能イメージは,2.2.4で述べた,以下の特性となる.

① オンセンタ特性(On-Center Handling):中点の明確さ,微修正のしやすさなど

② オフセンタ特性(Off-Center Handling or Increasing):手ごたえ,舵の決めやすさなど

③ 保舵(Holding):保舵しやすさ,舵の決めやすさなど

④ 切り戻し(Decreasing or Return):戻し側のコントロールのしやすさなど

⑤ 切り増し(Increasing):手応え,舵の決めやすさ,舵の正確性,トレース性など

⑥ 操舵の線形性(Linearity):線形感,非線形感,舵の正確性,トレース性など 3.2.5,表3-2に示した定量評価指標との関連を表6-3にまとめる.

表6-3 評価項目と定量化指標の関係

No. Evaluation items Objective evaluation criteria

① On-Center Handling Increasing coefficient acceleration: up to lateral 1.0m/s2

② Off-Center Handling or Increasing

Increasing coefficient.

acceleration: up to lateral 4.0m/s2or more

③ Holding Holding effort, tolerable range of torque fluctuation and steering effort

④ Decreasing

or Return

Decreasing coefficient gradient and intercept by 1st order approximation

⑤ Increasing Holding effort, steering effort

and Increasing

⑥ Linearity Evaluation value

with coefficients of the Fourier series

表6-3により,感性性能イメージと,先に示した試験方法による定量評価指標との関連付 けがおこなわれたことになる.この後,関連付けられた定量評価指標に基づく物理的特性と,

主観的評価により目標特性を定め,提示する.

定量評価指標の妥当性を検証する上で,人間特性の研究が必要である.操舵感において は人間-自動車系のクローズドループ特性が議論されるが,系の中に人間の様に複雑で不確 定な要素が内在すると,特性を構成するメカニズム解明が困難であり,できる限りオープ ンループによる系での評価指標が求められる.したがって,評価指標の構築と試験法の構 築は一体であり,人間の操作に基づいた試験法から評価指標に落とし込む必要がある.そ のため,人間の操作特性や人間の感受特性の把握などの人間特性研究が必要となる.人間 の感受特性は,すでにウェーバ・フェヒナーの法則やスティーブンスの法則など,人間特 性と機械特性との関係を表したものがあり,人間は,機械的な線形特性を非線形と感じた り,反対に非線形特性を線形と感じる場合がある.たとえば,主観評価においてドライバ が,線形であると評価した場合,機械的にはどの程度の非線形性を有しているかなどを,

研究する必要がある.オープンループによる系での定量的な目標特性を設定した場合,次 には,人間-自動車系のクローズドループでの評価によって,オープンループによる定量目 標特性の妥当性を検証し,正式な定量目標特性とすることが肝要である.この車両定量目 標は,定量指標,試験法開発と並行して人間特性研究が支援する流れを要すると考える.

また初めから幅広い感性性能を扱うのではなく,その適用範囲や目標を限定して取り組む べきであり,限定した定量目標が定まったなら,次に適用範囲や評価領域の拡大を図る.

たとえば,本論文おける操舵感の適用範囲を拡大する場合,高い周波数領域や,高い横加 速度までの範囲など,さらには粘性感や慣性感,ドライビングプレジャーなどの微妙で複 雑な感性性能への拡大が想定される.以上のプロセスを模式的に図6-14に示す.

図6-14 感性性能定量化プロセス

先に述べた人間特性研究は,本論文において第2章,第5 章にあたる.第2章では人間 の操舵操作について解析し,第 5 章では好ましい操舵特性について,車両運動や生体信号 測定,主観評価で検証したことで,第2章で述べた人間の操作法の検証もおこなわれる.

さらにその特性から,粘性感や慣性感などの感性性能へ広げられる可能性もある.

人間特性の研究や,人間-自動車系での検証,目標特性の設定などには,実車による試験 の他に,ドライビングシミュレータの活用が有効であり,数多くの研究がなされ[13], [14],

実際に成果も出ている.実車では時間を要するパラメータの変更や異なる走行環境が,比 較的簡単に安全に設定できるため,今後も活用の範囲が広がるものと思われる.しかし,

実走行とは全く同一であるとはいえず,適用範囲を見極めて利用することが望ましい.