• 検索結果がありません。

第3章 感性の定量化

3.1 人間の操舵パターンの解析と数学モデルの提案

3.1.3 車両を含むモデルでの検証

(4)近似ジャーク最小モデルの一般化

ここで,式(3.8)~式(3.11)を図3-4のような開始時間をτ,周期をT,始点をAs,終 点をAeとして一般化モデルに変換する.そして,t=(t–τ)/T と置き換えて整理すると,

式(3.15)~式(3.18)を得る.

図3-4 一般化した近似ジャーク最小モデルの応答

(

e s

) ( ) ( )

s

s A

T t n

n T

t n

T A t A

D +



 

 −

− +



 

 

 −

− +

⋅ −

= π τ

π π τ

π

τ sin 4

2 2 4

2 sin 1

2 2 2

(3.15)

( )

 

 

 −

−

 

 −

− + +

= −

T n t

T n t

n T

A

Vs Ae s 2 2cos 2π τ cos 4π τ

2 2 2 2 (3.16)

( )

( )

 

 

 −

+

 

 −

+

= −

T n t

T t n

T

A Ae s

s

π τ π τ

α π sin 2 sin 4

2 4

2 2

2 (3.17)

( )

( )

 

 

 −

+

 

 −

+

= −

T n t

T t n

T

A

Js π Ae s π τ π τ

4 cos 2 2

2 cos 8

2 2

3 2

(3.18)

図3-5 走行コース変更による応答波形

なお,図3-5中SA:Steering angle,SV:Steering velocity,YR:Yaw velocity(Rate),LA:

Lateral accelerationとする.

各パラメータのτ,T,Ae,As,は図中に記載する.

さらに,近似ジャーク最小モデルの一般式からAe=As=0,として直進状態,Ae=As=任意の 値,として操舵角Asの保舵状態が作り出せるため,図3-6のようにUターン,S字カーブ,

コース変更などの,さまざまな走行軌跡を作り出すことができる.なお,車両モデルには 線形2輪モデルを用いた.

Yawvelocity[°/s] Lateralacceleration[m/s2 ]Ydisplacement[m]Steeringangle[°] Steeringvelocity[°/s]

図3-6 近似ジャーク最小モデルによる走行コースの生成

(2)車両を含む近似ジャーク最小モデルの検証

検証として,操舵のパターン 1 周期分の操舵入力をおこない,この時コスト関数である 車両横ジャークの 2 乗積分を計算し,オリジナルのジャーク最小モデルと近似ジャーク最 小モデルを比較する.前節と同様に線形 2 輪モデルを用い,車両パラメータは,自動車諸 元表[7]から,ひとつの通称名に対し,1型式を無作為に抽出し,乗用車(軽自動車25車型 を含む)77車型,車両諸元としてホイールベース2.4~3.09 m,車両総重量930~2645 kgの 車両を選定し,車両パラメータがホイールベースのみで変更できるよう,選定した車両デ ータから,ホイールベースに対する車両総重量m,前後荷重配分Dwfの1次回帰により係数 を求めた.車両ヨー慣性モーメントIzは,無次元化ヨー慣性モーメン[8]IzNを導入し,IzN=0.9 として,Iz =IzNm Dwf(1-Dwf)l2で算出した.コーナリングパワーはKf=Cfm Dwfg,Kr=Cr m (1-Dwf)gとし,無次元化したコーナリングパワーをCf=10,Cr=20とした.なお,この無次 元化は,第 4 章で述べる方法と同様である.この時,スタビリティファクタは 0.00165~

0.00212 となり,実際の車両と同等である.(l :ホイールベース g:重力加速度)以上のよう

にして車両諸元をホイールベースの関数とし,操舵周期に応じた評価をおこなうため,0.1

~5.0 Hzの操舵周波数を想定し,Tを10~0.2秒変化させた.結果を図3-7に示す.ホイー

ルベース2.4,2.7,3.09 について表示した.いずれもT=10でコストの比が最大となり,悪

化代は1.8%程度となった.以上の結果から,十分実用レベルにあると判断する.

Steeringangle]Ydisplacemant[m]

図3-7 近似ジャーク最小モデルとジャーク最小モデルとのコスト比較

3.1.4 熟練運転者の操舵操作解析

前節,式(3.15),式(3.16)を用いて,熟練テストドライバの操舵の解析を試みる.こ こで述べる熟練テストドライバとは,自動車製造会社の開発関係に所属し,車両評価やテ ストコース走行の教育を受け,10 年以上の走行評価経験を積んだ職業的運転者であり,一 般運転者と比較して十分に熟練したドライバと考えてよい.これらの熟練テストドライバ による走行の時系列データから操舵区間を取り出し,操舵角を最小二乗法で近似ジャーク 最小モデルにフィッティングする.この時,係数 n2はジャーク評価のコスト関数を最小と するn2=1/8に設定した.図3-8~図3-10に例を示す.図中でfittingと表示したものは,近 似ジャーク最小モデルでパラメータを同定したフィッティング波形である.図 3-8 は車線 変更,図3-9は一般的な道路走行,図3-10は多少荒れた道路である.いずれのケースも大 きな操舵途中の細かな修正操舵や振動成分を除いて,近似ジャーク最小モデルによく当て はまる操舵角, 操舵速度を示している.特に操舵角-操舵速度の位相平面で見ると,よく 一致しており,図3-9の一般走行での10~12秒にある修正操舵もよく再現されている.操 舵速度はベル形となり,操舵開始点と操舵終了点で操舵速度が徐々に変化していることが 見て取れる.また車速の変化にかかわらず,操舵のパターンに大きな変動はなく,車速に よる依存性がないことがわかる.これらの操舵パターンを操舵角-操舵速度の位相平面でみ ると,操舵の切り込み時と,切り戻し時の操舵速度に大きな差がみられない.熟練テスト ドライバは,切り戻し時の操舵が,切り込み時の操舵と概ね対称性を持っていることがわ かる.そこで,長時間の運転データから,操舵角-操舵速度を描いてみる.図3-11に示すよ うに,全体を通してみても,切り込みと,戻し側の操舵が横軸に対して,大まかに対称性 を持った操舵になっていることが見て取れる.さらに,同様な一般道路における,2300 秒 間の操舵角-操舵速度の特性を図 3-12 に示す.一般道路環境においては,緩和曲線を持っ て道路が作られており,それに対応する操舵がおこなわれているともいえる.しかし,車

線変更や修正操舵にみられるような,コース規定がない操舵においても,この対称性やジ ャーク最小モデルで近似できる操舵がみられることから,熟練テストドライバはジャーク を最小にし,車両の動きを滑らかにするような操舵操作をおこなっていると考えられる.

図3-8 車線変更による操舵応答 Vehiclespeed [km/h]Yawvelocity[°/s] Lateralacceleration[m/s2 ]Steeringvelocity[°/s]Steeringangle[°] Steeringvelocity[°/s]

図3-9 一般道路における操舵応答 Time [s]

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

20 40 60 80

Time [s]

0 2 4 6 8 10 12 14 16

-40 -20 0 20 40

YR LA

Steering angle [°]

-100 -50 0 50 100 150

-200 -150 -100 -50 0 50 100

Raw Raw fitting

Time [s]

0 2 4 6 8 10 12 14 16

-200 -100 0 100

200 SA

SA fitting SV SV fitting

図3-10 荒れた道路における操舵応答 Steering angle [°]

-60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20

Steeringvelocity[°/s]

-60 -40 -20 0 20 40

Raw Raw fitting

Time [s]

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Vehiclespeed[km/h]

40 60 80

Time [s]

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Yawvelocity[°/s] Lateralacceleration[m/s2 ]

-15 -10 -5 0 5

YR LA

Time [s]

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Steeringangle[°] Steeringvelocity[°/s]

-80 -60 -40 -20 0 20 40

SA SA fitting SV SV fitting

図3-11 長時間の一般道路における操舵角-操舵速度応答

図3-12 一般道路における操舵角-操舵速度応答

3.1.5 人間の操舵パターンの解析と数学モデルの提案のまとめ

人間の操作から導き出されたジャーク最小モデルをもとに,扱いやすい三角関数を基本 とする近似ジャーク最小モデルを導出した.この操舵操作モデルと車両モデルを組み合わ せ, パラメータを変えた操作モデルの組み合わせにより,車線変更,S字カーブ,U ター ンなど,さまざまな走行軌跡をつくり出せることや,車両運動を含めたジャーク最小モデ

ルとの比較により,近似ジャーク最小モデルは実用上十分なジャーク最小モデルの近似で あることを示した.さらに,この操舵操作モデルを用いて,熟練テストドライバの実走行 の操舵パターンを解析し,熟練テストドライバは基本的な操舵として,車速変化に関わら ずジャークを最小とするような操舵をおこなっており,その操舵パターンは操舵角-操舵速 度の位相平面に特徴が表れ,操舵の切り込みと切り戻しが,概ね対称的な操舵である.

さらに,この近似ジャーク最小モデルは,時間の高次べき関数である,オリジナルのジ ャーク最小モデルでは扱いが困難であった制御にも容易に用いることができるため,熟練 テストドライバの滑らかな操舵を実現しながら,さまざまな走行軌跡モデルの構築,車線 維持制御への適用が可能である.

附録

本文では速度関数が左右対称となる三角関数のみによる操舵モデルを考えた.しかし,

さまざまな場面を考える時,左右非対称の速度関数を考える必要も出てくると考えられる.

これには対応可能な指数関数と三角関数とを組み合わせた操作モデルを考える.ベル形の 速度応答である式(3.19)をもとに,本文と同様の処理をおこなう.すなわち,式(3.19)

を積分し,時間t=0で変位0,t=1で変位 1 となるよう,積分定数やゲインの調整をおこな い,一般式にまとめると式(3.20)~式(3.33)のようになる.

( e e

( )

) ( ( t ) )

V

es

=

n1t

+

n21t

1 − cos 2 π ⋅

(3.19)

s s

e

es c A

T b t

T a t

d A

D A +

 

 +

 

 −

+

 

 −

− ⋅

= 0 cos 2π τ 0sin 2π τ 0 (3.20)

( ) 1 ( 1 )

1 4 1

4

2 1

2 2 2 2

2 2 1

2 1

1

 −

 

 +

− + +

 −

 

 +

− +

=

n

e

n

n n e n

n n d n

π

π

(3.21)

2 2 1

1 2 2

2 1 2

0 4 4

1 2

π π

τ τ

− +

= +

 −

n e n n

e a n

T n t T

n t

(3.22)

2 2 1 2 2

2 1

0 4

2 4

2 2 1

π π π

π

τ τ

+

− ⋅ +

− ⋅

=

 −

n e n

b e

T n t T

n t

(3.23)

2 1 2 2

2 2 2 2

1 1 2

1

1 0

2 2 2

1 1

4

4 n

e n n

e n n

n n

e n c e

n n

T n t T n t

+ + −

+ − +

=

 −

π π

τ τ

(3.24)

( )



 

 

 

 −

 −

 

 +

= − +

T e t

T e d

A

V A T

t n T T nt s es e

π τ

τ τ

2 cos

2 1

1 (3.25)



 

 +

 

 −

+

 

 −

⋅ ⋅

= − 2 1 cos 2 1sin 2 c1

T b t

T a t

T d

A Ae s

es

π τ π τ

α (3.26)

 −

+

= T

n t T

n t

e n e

n a

τ

τ 1

2 1

1

2

1 (3.27)

 −

⋅ +

= T

n t T

n t

e e

b

τ τ

π

π

1

1

2

1 2

2 (3.28)

 −

= T

n t T

n t

e n e

n c

τ

τ 1

2 1

1

2

1 (3.29)



 

 +

 

 −

+

 

 −

⋅ ⋅

= − 3 2 cos 2 2sin 2 c2

T b t

T a t

T d

A

Jes Ae s π τ π τ (3.30)

(

)(

+

)

 − +

(

)(

+

)

= T

n t T

n t

e n n

e n n

a

τ τ

π π

π

π

1 1 2 2 1

2

2

1 2 2

2

2 (3.31)

 −

= T

n t T

n t

e n e

n b

τ τ

π

π

1 2 1

2

2

1 4

4 (3.32)

 −

+

= T

n t T

n t

e n e

n c

τ

τ 1

2 2 2

1 2

2

1 (3.33)

各係数は一見複雑であるが,指数関数と三角関数の組み合わせであり,制御との親和性も 高いといえる.このモデルではn1=n2= nとして,左右対称速度関数とするとき,ジャーク 二乗の積分和であるコスト関数は,nにより図3-13のように変化し,2.0付近で最小値とな り,その値は720.45となる.ジャーク最小モデルに対して約0.07%程度の増加である.変 位,速度,加速度,ジャークそれぞれの応答特性を比較すると図3-14のようになる.各特 性の差分を取ると図中のerror波形となり,ほぼ重なることがわかるため,準ジャーク最小 モデルとする.さらに,速度関数モデルとして式(3.25)からn2=0またはn1=0で式を整理 し,n1=3,n2=0あるいは n1=0,n2=3とすると,図 3-15に示すように速度の左右非対称モ デルが構築でき,汎用性が広がる.

図3-13 準ジャーク最小モデルによるコスト関数

図3-14 準ジャーク最小モデルとジャーク最小モデルの応答比較

図3-15 速度左右非対称モデルによる応答波形

なお,オリジナルのジャーク最小モデルの一般式は,以下の式(3.34)~式(3.37)のよ うに記述できる. 比較計算には必要に応じ,この一般式を用いた.

( ) ( ) ( ) ( )

s s

e

mj A

T t T

t T

A t A

D +



 − − − + −

= 3

3 4

4 5

5 15 10

6 τ τ τ (3.34)

( ) ( ) ( ) ( )





 − − − + −

= 3

2 4

3 5

4 2

30 T

t T

t T

A t A

Vmj e s τ τ τ (3.35)

( ) ( ) ( )





 − − − + −

= 4 3

2 5

3 3

60 2

T t T t T

A t Ae s

mj

τ τ

α τ (3.36)

( ) ( ) ( )





 − − − +

= 5 4 3

2 6 1

60 6

T T

t T

A t A

Jmj e s τ τ (3.37)