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て震度曝露人口を用いた影響規模指数で定義し,これに応じて復旧所要期間を補正することにし た.国内で発生した主要な地震の被災事例に適用したところ,従来モデルと比べて改善される傾 向にあることを確認した.さらに,開発した予測モデルを簡便に利用できるように,システム化 を行った.評価例として,南海トラフ巨大地震(基本ケース)を示し,出力結果(供給支障人口 や供給率)をGISにエクスポートすれば被害・復旧状況を俯瞰的に把握できることを示した.ま た,予測モデルの応用例として,断水に伴う避難者・給水量の推計や供給系ライフラインを対象 とした途絶リスク評価を示した.
3) 4.では,3.で開発した予測手法を交通系ライフラインに応用する前段階として,地震後の高速 道路の交通機能に着目して被害・復旧状況の定量的な評価を試みた.1995 年兵庫県南部地震・
2011 年東北地方太平洋沖地震・2016 年熊本地震の被災事例を対象として,地震前後の自動車交 通量を用いて,その時系列推移を可視化した.いずれの地震においても,地震直後の通行止めに 伴って交通量が激減している.その後,1995年兵庫県南部地震の事例では,阪神高速道路3号神 戸線における東西交通の分断が解消されるまで交通機能が大きく損なわれた.一方で,2011年東 北地方太平洋沖地震や 2016 年熊本地震の事例では,交通規制の解除により交通量が迅速に回復 し,震災前の水準まで回復していることを確認した.交通機能の定量的な評価を行うため,ネッ トワーク施設指標・機能指標を用いて震災間比較を行った.いずれの地震においても,施設水準 に対して機能水準が一貫して下回っており,ネットワーク復旧の完結後にようやく地震前の水準 に回復することを明らかにした.こうした地震直後における交通機能の低下と,その後の回復過 程は,供給系ライフラインの機能的被害・復旧過程と共通しており,1.で示したレジリエンスモ デルの図式とよく当てはまることを確認した.
4) 5.では,高速道路を対象とした地震時機能的フラジリティ関数を構築し,震災間比較を行った.
3.で開発したアプローチ方法のうち機能停止の有無に焦点を当てて,高速道路の通行止めの有 無の予測に応用したものである.国内における主要4地震の被災事例を対象として,通行止め状 況と震度との関係を分析した.主に高震度領域に「通行止めあり」が分布しており,供給系ライ フラインの被災事例と類似していることを確認した.震度と通行止め発生確率との関係をロジッ トモデルでモデル化し,機能的フラジリティ関数を構築した.フラジリティ関数を構築する際の 一般的な留意事項として,低震度領域における「被害なし」のデータを十分に加えることの重要 性を明らかにした.また,機能的フラジリティ関数の震災間比較を行ったところ,一部の例外は あるものの,通行止め発生確率が急増する震度と各事業者の地震時通行止め規制基準がほぼ対応 していることが分かった.
5) 6.では,鉄道を対象として運休の有無と運休期間を予測するモデルの構築に向けた基礎的な検 討を行った.3.と同様のアプローチ方法で,国内における主要 4 地震の被災事例を対象とした 分析を行った.震度情報と運休の有無との関係を分析した.高震度領域で「運休あり」が分布し ており,供給系ライフラインや高速道路の被災事例と類似した傾向が見られることを確認した.
これらの分析に基づいて,震度と運休発生率との関係に関する機能的フラジリティ関数を構築し た.また,5.で示した高速道路の機能的フラジリティ関数との比較を行い,機能停止確率が規制
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基準値の付近で急増する点が類似していることを確認した.さらに,2011年東北地方太平洋沖地 震を対象とし,震度と運休期間に関する分析から,震度5.0~6.0の間で明確に運休期間が増加す る傾向がみられた.これらの結果に基づいて,運休期間を予測するモデルを試作した.
主な課題として,以下の5点の項目が挙げられる.
1) 2.では,ライフラインの新聞報道(地方紙・全国紙)を対象とした分析を行った.現状では,基 礎的な分析にとどまっており,ライフラインに関する震災後の情報ニーズを把握するためにも記 事の文脈により立ち入った分析が必要だと思われる.また,自助・共助の支援・促進に向けて適 時・適切なライフライン情報の提供を行うため,分析対象を複数の媒体に拡張して,それらの特 徴を考察する必要があると思われる.
2) 3.では,供給系ライフラインを対象とした地震時機能的・被害復旧予測手法の開発を行った.い ずれのシステムにおいても,予測モデルでは明示的に考慮されていない要因によると考えられる 推定誤差が認められた.具体的には,地震動のほかに,液状化,津波,システム相互連関,拠点・
基幹施設被害などに起因する被害である.精緻化のためには,これらの個別の状況を踏まえたモ デル化が必要である.関連して,概略的な予測結果に対して,その後の実被害情報に基づいて逐 次更新する方法1)が提案されており,推定精度の向上を図る余地があると思われる.
3) 5.および6.では,高速道路の通行止め・鉄道の運休を対象とした機能的被害・復旧予測手法の 開発を行った.5.および6.では,3.で開発した手法のうち,機能停止(高速道路の通行止め,
鉄道の運休)の有無の予測にとどまっている.このため,これらの復旧所要期間についても分析・
モデル化を行う必要がある.
4) 国内では様々な地震による被災事例が蓄積されつつあるが,全般的に高震度領域におけるデータ が十分ではないのが現状である.このため,今後もライフラインの機能的な被害・復旧過程に関 する事例を継続的に蓄積していくことが必要である.
5) 2), 3)で開発した予測モデルは,個別のライフラインの機能的被害・復旧過程を対象としたもので
ある.一方,都市機能は複数のライフラインの依存関係の上に成り立っていることから,本研究 で対象外としたライフラインの相互連関2)を考慮した分析およびモデル化が必要である.これら の検討にあたり,本研究で開発した予測手法および得られた成果が基礎資料として活用できるも のと思われる.
参考文献
1) 能島暢呂・杉戸真太・金澤伸治:地震動情報と実被害情報の統合処理による緊急対応支援の数理 モデル,土木学会論文集,No.724/I-62,pp.187-200,2003.1.
2) 能島暢呂:ライフライン機能停止と相互連関,福井震災50周年記念事業「世界震災都市会議」予 稿集,福井市,pp.105-108,1998.6.
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謝辞
本論文は,筆者が岐阜大学大学院工学研究科博士課程在籍中に,岐阜大学工学部教授・能島暢呂先 生のご指導のもとで行った研究をまとめた成果です.
能島先生には,地震工学研究室に配属されて以来,学部生時代から10年以上にわたって懇切丁寧 なご指導いただきました.修士課程修了後は研究員として雇用していただいたばかりでなく,博士課 程への進学を勧めていただいたことに感謝しております.研究の遂行にあたっては,大変ご多忙の中,
テーマの選び方・計画の立て方,研究の方向性の示し方,研究者としての軸の持ち方,グループでの 課題に取り組み方などを教えていただきました.また,稚拙な文章にもかかわらず辛抱強くご助言・
ご指導いただき,未熟ながらもなんとか論文として形にすることができました.さらに,研究以外の 場面においても,社会常識を教えていただいたほか,幅広い分野に対する好奇心や情報に対するアン テナの張り方,効率的な時間の使い方など,日々の姿勢からも多くのことを学ばせていただきました.
これまでのご指導に深く感謝いたします.
岐阜大学特任教授,清流の国ぎふ防災・減災センター長・杉戸真太先生には,ゼミで多くのご指摘・
ご助言をいただきました.また,講義や講演会では研究内容に加えて,ご自身の貴重な体験談を伺っ たことが印象に残っております.厚くお礼申し上げます.
岐阜大学流域圏科学研究センター准教授・小山真紀先生には,副指導教員を引き受けていただきま した.また,ゼミにて多くのご指摘・ご助言をいただき,エビデンスに基づいた主張やクリティカル・
シンキングの必要性・重要性を学ばせていただきました.特に,第2章の分析では,社会情勢を踏ま えて研究課題を発見・抽出する方法から分析ツールの使い方までご教示いただきました.厚くお礼申 し上げます.
岐阜大学流域圏科学研究センター准教授・久世益充先生には,ゼミや学会でご指摘・ご助言やフォ ローアップをしていただきました.また,日常生活において気にかけていただいただけでなく,コン ピュータや周辺機器の知識についてご教示いただきました.厚くお礼申し上げます.
ライフライン防災に関するプロジェクトや 5 大学・高専合同ゼミに参加させていただく機会に恵 まれたことに感謝しております.
・文部科学省「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト」(2012~2016年度)
・文部科学省「平成30年北海道胆振東部地震とその災害に関する総合調査」(2018年度)
・(国研)防災科学技術研究所「首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト」(2017 年度~)
これらのプロジェクトを通じて,防災科学技術研究所 災害過程研究部門 主幹研究員・山崎文雄氏,
同主幹研究員・永田茂氏,千葉大学大学院工学研究院教授・丸山喜久先生,筑波大学システム情報系 教授・庄司学先生からご助言・ご指導・ご激励をいただきました.このような先生方と議論する機会 を得られたことを深く感謝しております.