3. 供給系ライフラインを対象とした地震時機能的被害・復旧予測手法の開発
3.7. まとめ
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を定義した.5地震の評価結果によると,震災規模が小さい場合は推定値が実測値よりも過大評 価となる傾向にあった.こうした違いを反映したモデルパラメータを予測モデルに組み込むため,
震度曝露人口9)を用いた影響規模指数を定義した.累積供給支障人口の比率と影響規模指数が整 合するよう,非線形最適化手法を用いて震度階に応じた電力・水道への影響度合いを表すパラメ ータの同定を行った.その結果,累積供給支障人口の比率と影響規模指数の間には,ばらつきが 大きいものの相関関係が見られるようになった.
7) 予測モデルの推定精度向上のため,電力と水道の従来モデルについて,震災規模に応じて復旧所 要期間を伸縮させることで補正した.具体的には,従来モデルによる復旧所要期間の平均値と標 準偏差に影響規模指数を乗じて調整を行うものである.この結果,停電・断水の解消過程につい ては従来モデルに比べて改良モデルのほうが実測値に近くなるケースが多く,改善傾向が確認さ れた.
8) 予測モデルを簡便に利用するため,供給系ライフラインの機能的被害・復旧予測モデルの市区町 村別簡易評価法を提案し,その機能をExcel / VBAで実装した評価システムを開発した.事前・
直後・事後の震度情報に基づく市町村別評価を任意の行政単位(市区町村・都道府県・ブロック・
全国)で集計し,供給支障人口および供給率曲線を出力するものである.
9) 想定地震への適用例として,南海トラフ巨大地震(基本ケース)を対象とした評価を行った.広 域的な供給支障人口の解消過程と供給率の復旧過程を求め,愛知県と静岡県を中心として特徴を 比較した.またGISにエクスポートして供給率の復旧過程をマップ化し,復旧進捗を俯瞰的に捉 えることができることを示した.
10) 9)で得られた供給支障人口の評価結果を,その他の被害想定項目に対する入力情報として用いた
場合の例として,断水人口の解消過程に基づく応急給水量および避難人口の時系列的な推計例を 示した.これらの概算結果は,応急給水体制や避難所運用体制などの現状把握・改善策の検討に 有用と考えられる.
11) 10)とは異なる観点から,発生確率・地震規模・その影響度などの面で異なる特徴を持つ多数の地
震群のリスクを考慮した例として,全地震活動モデルを用いた供給系ライフラインの途絶リスク 評価を行った.電気・水道・都市ガスのシステム別に震度階ごとの曝露人口を求め,供給系ライ フラインを対象とした地震時機能的被害・復旧予測モデルを適用して,地震直後,3 日間,1 週 間,1ヶ月間の途絶リスクカーブを算出した.各システムの普及率,震度別の初期機能停止確率,
復旧確率の違いによって,リスクカーブは特徴的な様相を示し,短期・中期・長期的にみたライ フライン途絶リスクの概略を定量的に明らかにした.また,都道府県あるいは市町村レベルに限 定した人口データや個別のライフライン事業者の供給人口データを適用して同様の評価を行う ことにより,それぞれのレベルにおける地震リスク対応策の検討に活用できると思われる.
今後も,様々な規模の地震災害に関する供給系ライフライン被害・復旧状況に関するデータを蓄積 して,モデル検証を継続して行う必要がある.3.4.で改良の対象外とした都市ガスの供給支障人口の 推定においては,実測値における初期被害と大きな乖離が生じている.この点に関して,経済産業省 により供給ブロックの第 1 次緊急停止判断基準の変更 49)が進められていることから,それによる遮 断システムの変更状況を踏まえて,予測モデルの改良を行う方針である.
3.5.で開発した市町村別評価ツールは公開中 50)であり,行政対応などに活用されることが期待さ
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れる.またBCP策定の基礎資料を提供できるため,本章で示したような面的評価のみならず,個別 地点あるいは複数地点における簡易評価のニーズも高い.その「地点別簡易評価ツール51)」について はシステム実装を終え,既に公開中50)であることを付記しておく.
補注
以下では,3.4.4.で示した5地震における供給系ライフラインの初期被害・復旧過程について,留意 すべき特記事項を述べる.
[1] 2004年新潟県中越地震6), 52):停電の復旧に時間を要したのは,送電設備の被害や道路閉塞による
ものと思われる.断水が早期に復旧したのは,埋設管路の被害率が低かったためである.都市ガ ス停止の初期被害に関して,長岡市や見附市で局所的に強い揺れを観測したことで供給ブロッ ク停止に至った.一方,復旧過程に関しては供給ブロック内全体で強い揺れを観測して供給停止 に至った小千谷市の影響が支配的である.
[2] 2011年東北地方太平洋沖地震2):停電の復旧に長期間を要したのは,発電所の被災に伴う電源喪
失や津波被災地域における復旧作業が難航したためと考えられる.断水については,広域水道
(仙南・仙塩広域水道用水供給事業および大崎広域水道用水供給事業)の大口径送水管に被害が 生じ,それらが復旧するまで通水が遅れたとされる.都市ガス停止については,都市ガスを製造 する港工場が津波で被災し,ガス送出が停止したことで供給支障が拡大したとされる.
[3] 2007年新潟県中越沖地震53), 54):停電の復旧については,液状化による設備被害の拡大・道路の
陥没や地割れにより復旧作業が難航したとされるが,近隣の電力会社の支援により迅速に行わ れた.断水に関しては,送水管や幹線配水管などの大口径管の被害がみられたものの,耐震性を 有する管路では被害が発生しなかった,加えて,2004年中越の経験を踏まえて応援体制が機能し たことが早期復旧につながったとされている.都市ガス停止に関しては,柏崎市で水道管路の破 損による漏水や地下水の侵入によりガス管内に差し水が入り排水に時間を要したとされている.
[4] 2016年熊本地震32), 55):停電・都市ガス停止に関しては,復旧要員など復旧資源の投入状況から
震災規模に対して支援体制が従来よりも強化されたことが早期復旧につながったとされる.一 方,断水に関しては被害の大部分を占める熊本市において2016年に4月21日に通水が完了したと されているが,実際の断水解消は同月30日までずれ込んでいた.
[5] 2018年大阪府北部の地震33):停電・断水については,基幹施設やその関連設備で支障もしくは被
害が発生した.しかし,地震の規模が小さく,被害も比較的軽微であったため短時間で解消され た.都市ガス停止に関しては,基幹設備や中圧導管の被害が無く,低圧導管の被害もわずかであ ったにも関わらず,第1次緊急停止判断により2ブロックで供給停止が行われた.
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参考文献
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