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ネットワーク施設指標と機能指標による震災間比較

4. 高速道路網の自動車交通量を用いた時空間分析とネットワーク指標に基づいた震災間比較

4.5. ネットワーク施設指標と機能指標による震災間比較

4.5.1. ネットワーク施設指標と機能指標20)

施設の復旧状況と自動車交通量のデータに基づいて,以下の3種類の指標20)によってネットワーク全体 の施設水準と機能水準を算出して比較を行う.

(1) 通行開放区間数N(区間):通行可能な区間数

(2) 通行開放区間の延長距離L(km):通行可能な区間の距離の総和

(3) 区間自動車交通量×区間距離の総和V(台km):区間自動車交通量とその区間距離の積の総和

通行開放区間数Nおよび通行開放区間の延長距離Lは,いずれも施設の状態のみに基づくもので,

施設水準を表す指標としている.これに対して区間自動車交通量×区間距離の総和Vは延べ自動車輸 送キロに相当し,高速道路の機能を反映していることから,機能水準としている.各震災ではデータ が月平均交通量と日交通量で異なることと,ネットワーク対象範囲の設定次第で指標の値は変化す るため,単純な比較はできないことに注意が必要である.この点に留意しつつ,以下,各震災の比較 を行う.

4.5.2. 1995年兵庫県南部地震を対象とした評価結果21)

図 4.21に,1995年兵庫県南部地震と2011年東北地方太平洋沖地震の発生前後における高速道路 網の施設・機能水準の推移 21)を示す.自動車交通量は,1995年兵庫県南部地震では月平均日交通量 であるが,2011年東北地方太平洋沖地震および2016年熊本地震では日平均交通量である点が異なる

補注(2)

図 4.21(a)は,1995年兵庫県南部地震を対象として,4.5.1.の指標を1994年10月~1996年10月の 25 カ月間において算出し,地震前の3 カ月間の平均値で正規化したものである.ただし,対象とし た道路ネットワークの範囲は,文献21)の対象路線のうち,阪神高速道路(3号神戸線・5号湾岸線・

7号北神戸線・16号大阪港線の各全線),中国自動車道(吹田JCT~吉川JCT),名神高速道路(吹田

JCT~西宮IC)に限定した.NLは,地震後に大きく低下した後,復旧の停滞時期が1年間以上続

いている.一方,Vは1995年7月まではNおよびLを大きく下回っており,断片的な復旧が必ずし も機能的回復に結びつかなかったことを反映している.しかしその後,5号湾岸線と7号北神戸線へ の迂回交通が漸増したことに呼応するようにVは漸増傾向を示し,1996年3月以降は,NおよびL にほぼ近い値となっている.

4.5.3. 2011年東北地方太平洋沖地震を対象とした評価結果21)

図 4.21(b)は,2011年東北地方太平洋沖地震を対象として,4.5.1.の指標を2011年3月1日~4月 15日の1.5カ月において算出し,地震前の10日間の平均値で正規化したものである.対象とした道 路ネットワークの範囲は,東北自動車道,常盤自動車道,磐越自動車道,東関東自動車道,北関東自 動車道,仙台北部道路,仙台東部道路,三陸自動車道,青森・八戸・秋田・山形自動車道などの計42 路線21)である.N,LVは,見かけ上,1995年兵庫県南部地震とほぼ同様の傾向を示す補注(3).しか し交通量の回復は早く,わずか約2週間でほぼ震災前の水準に達している.復旧に長期間を要するよ

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うな高架橋の甚大な被害がなかったこと,交通開放が断片的ではなく,高速道路網のほぼ全体にわた って迅速に進められたことが挙げられる.この 2点が,1995 年兵庫県南部地震の事例との最大の相 違点であるといえよう.また余震・誘発地震による影響は,N,Lの一時的な低下として表れている が,ごく短時間の交通規制であったため,Vについては大幅な減少は見られない.

4.5.4. 2016年熊本地震を対象とした評価結果22)

図 4.22はそれぞれ施設指標N,Lと機能指標Vについて地震前後を含む2ヵ月間について算出し,

地震前の104日間の平均値で正規化して0~1(平常時)で表したものである.4月29日~5月5日 の大型連休期間については,図 4.17,図 4.18と同様に灰色のハッチを掛けている.

図 4.22(a)は,九州自動車道(鳥栖JCT~加治木JCT間)の評価結果である.前震と本震に伴い,

N,Lが大きく低下した.翌17日にはN,Lが地震前の80%前後まで回復した.その後は,横ばいの 状態が続き,約3週間後に地震前の水準まで回復した.一方,機能水準Vは,前震翌日に大きく低下 した補注(3).その後Vは4月29日に全区間が復旧するまで,N,Lを大きく下回っており,施設水準 と比較して回復が遅い.

図 4.22(b)は,大分自動車道(鳥栖JCT~大分米良IC間)の評価結果である.九州自動車道とは異 なり,前震による被害はなかったため,本震直後に各指標とも急激に低下した.N,Lは,一部の期 間を除き,本震後の九州自動車道と同様の傾向を示している.Vについては,前震翌日に増加したが,

本震の発生に伴い急激に減少し,4月29日までN,Lを大きく下回っている.また,大型連休期間を 除くと,5月9日22時40分に全区間開通するまでVは平常時の水準を下回っている.

図 4.22(c)は,図 4.22(a)と図 4.22(b)の区間を合計した道路ネットワークとしての評価結果である.

N,Lは,前震と本震でそれぞれ平常時に比べて約40~90%低下した.本震翌日には,平常時の約80%

まで回復したものの,対象区間が同100%になったのは前震から25日後であった.前震当日の Vは 平常時とほぼ変わらず,本震当日に平常時と比べて約60%減少した補注(4).その後は,図 4.22(a), (b)と 同様にVの回復はN,Lの回復に比べて遅れており,大型連休に伴う一時的な交通需要増加の影響を 除くと地震前の水準となるまで約3週間を要した.

前震では,通行止めとなった路線数・区間数が少なく,迅速に復旧したことと走行可能な路線で交 通量が増えたことから V はあまり低下しなかった.一方,本震では多数の路線で通行止めが発生し たが,N,Lは比較的早期に回復した.一方で,連続で通行可能な区間が少なかったためVが低下し た状態が続き,交通機能の回復が遅れたと考えられる.ここから,見かけ上N,Lが回復してもそれ が断片的であった場合,Vの回復に繋がらないことが明らかとなった.

4.5.5. 事例間比較

図 4.21 と図 4.22 を比較すると,機能水準Vが地震前の水準まで回復するのに要した期間(1995 年兵庫県南部地震が,約1年8カ月,2011年東北地方太平洋沖地震が約2週間,2016年熊本地震が 約3週間)は異なるものの,Vの回復速度がN,Lより遅い点が類似している.つまり,3地震を比 較すると,機能水準Vは施設水準N,Lをほぼ一貫して下回っており,ネットワーク復旧の完結後に ようやく地震前の水準に回復することが明らかとなった.

以上のことから,機能水準 V を用いて事前の復旧予測や事後の復旧戦略策定を行う場合には種々 の要因(被災前後の交通需要の変化,交通規制状況,交通ネットワーク機能としての回復状況,その

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他の社会的要因など)を考慮する必要があると考えられる.

(a) 1995年兵庫県南部地震

(月平均日交通量に基づく)

(b) 2011年東北地方太平洋沖地震

(日平均交通量に基づく)

図 4.21 震災下における高速道路網の 施設・機能水準の推移の比較21)

(a) 九州自動車道(鳥栖JCT~加治木JCT)

(b) 大分自動車道(鳥栖JCT~大分米良IC)

(c) 九州自動車道と大分自動車道の合計 図 4.22 2016年熊本地震における高速道路網の 施設・機能水準の推移(日平均交通量に基づく)22)

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

10/94 11/94 12/94 01/95 02/95 03/95 04/95 05/95 06/95 07/95 08/95 09/95 10/95 11/95 12/95 01/96 02/96 03/96 04/96 05/96 06/96 07/96 08/96 09/96 10/96

施設能水準(平常)

N L V

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

3/01 3/03 3/05 3/07 3/09 3/11 3/13 3/15 3/17 3/19 3/21 3/23 3/25 3/27 3/29 3/31 4/02 4/04 4/06 4/08 4/10 4/12 4/14

施設能水(平常)

N L V

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

41 43 45 47 49 411 413 415 417 419 421 423 425 427 429 51 53 55 57 59 511 513 515 517 519 521 523 525 527 529 531

施設・機能水準(常時比

N L V

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

41 43 45 47 49 411 413 415 417 419 421 423 425 427 429 51 53 55 57 59 511 513 515 517 519 521 523 525 527 529 531

施設・機能水準(常時比

N L V

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

41 43 45 47 49 411 413 415 417 419 421 423 425 427 429 51 53 55 57 59 511 513 515 517 519 521 523 525 527 529 531

施設・機能水準(常時比

N L V

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