• 検索結果がありません。

4. 高速道路網の自動車交通量を用いた時空間分析とネットワーク指標に基づいた震災間比較

4.6. まとめ

130

131

~南関 IC 以北では地震前とほぼ変化していない.通行止めが解除されると,車線規制が行われ ていた一部区間を除いて地震前の水準まで回復した.一方,大分自動車道では,日平均走行速度 がほぼ変化しなかった.交通容量の余裕の有無が日平均走行速度の変化の有無をもたらしたと推 察される.

(10) 高速道路網の施設水準と機能水準を表す3種類の指標20)を1995年兵庫県南部地震と2011年東北

地方太平洋沖地震で比較した.いずれの地震においても,機能水準は施設水準を下回る水準であ ったことが確認された.1995年兵庫県南部地震では,地震後半年間の断片的な復旧が機能回復に 直結しなかったことを反映する結果が得られた.またその後の復旧停滞は1年以上続いた.これ に対して2011年東北地方太平洋沖地震においては,高速道路機能の低下は短期間に留まった.

(11) 2016 年熊本地震を対象として,高速道路のネットワーク施設水準・機能水準 20)を用いた評価を

行った.施設水準N,Lは,九州自動車道では前震と本震によって,大分自動車道では本震によ って,平常時に比べて約60~100%低下した.一方,機能水準Vは両自動車道とも本震後に同約

50~80%低下した.その後,各指標は交通規制が解除されるにつれて回復し,約2~3週間で地震

前の水準近くまで回復した.両自動車道とも機能水準Vが,施設水準N,Lと比較して下回って いることが共通している.

(12) 1995年兵庫県南部地震及び2011年東北地方太平洋沖地震の事例21)と2016年熊本地震22)との事

例間比較を行った.いずれの地震においても,機能水準は施設水準をほぼ一貫して下回っており,

ネットワーク復旧の完結後にようやく地震前の水準に回復することが明らかとなった.地震に伴 う通行止めによって,高速道路の機能が一旦低下し,その後回復していることを示した.こうし た高速道路の機能的な被害・復旧過程は,図 1.3で示したレジリエンスモデルの図式に当てはま るといえる.

今後,多様な交通モード(鉄道・航空路線)の運行状況や一般道の交通動態との関連に注目した分 析を行うとともに,高速道路の通行止め状況と計測震度との関係について分析を行う方針である.

補注

(1) 図示は省略するが,交通量の長期的な傾向を述べる.6月下旬から7月中旬にかけて,九州自動車 道「被災地近傍」の区間[1]~[4]や大分自動車道「被災地への主要アクセス道路」の区間[7][8]で突 発的に日平均交通量が減少した.これは,梅雨前線や平成29年7月九州北部豪雨などの影響と推察 される.8月中旬の急激な交通量の増加は,お盆前後の夏季休暇による影響と考えられる.また,

大分自動車道では,すべての区間で交通量の増加が見られた.これは,九州観光周遊ドライブパ スによる影響32)と推察される.このサービスは,西日本高速道路株式会社九州支社が九州地方の 観光支援を目的として,同社が管理する高速道路が定額で乗り放題となるものである.2016年7月 15日(金)~12月18日(日)まで実施された.この他にも,東九州道日出線の椎田南IC~豊前IC 間(いずれのICも福岡県)が2016年4月24日に新しく開通した.地震前後2ヶ月間は,前述の区間 が開通した影響は限定的であった.しかし,長期的には交通ネットワークが連結された効果によ り,大分自動車道における「被災地近傍」の自動車交通量の増加に寄与したものと推察される.

(2) 2011年東北地方太平洋沖地震の発生前後における日交通量データ21)については,2016年熊本地震

のものと同等であり1台単位で集計されている.一方で,1995年兵庫県南部地震の発生前後におけ

132

る日交通量データ20)については,月平均値である点と阪神高速道路の集計が100台単位で行われて いる点が異なる.

(3) 地震当日の機能水準Vの値には,地震発生時刻(2011年東北地方太平洋沖地震は14時46分,2016年 熊本地震の前震は21時26分)までの交通量を含むため,見かけの低下度合いが小さい.

(4) ただし機能水準Vに関しては,対象区間において交通量が最も多い九州自動車道の植木IC~八代 IC間が地震による通行止めの影響(注:提供データの備考によるものであり,同IC区間において 交通量が観測された期間もあるため欠測の可能性がある)を受けていた.このため,図4.22(c)で 示した結果は実際よりもVが低下しているように見える可能性がある.

参考文献

1) 柘植章英:阪神・淡路大震災からの阪神高速道路の復旧,交通工学,Vol.30,pp.132-139,1995.

2) 宮内昭征:都市間高速道路の交通の確保について,交通工学,Vol.30,pp.140-146,1995.

3) 江口喜信・梶川俊二:阪神・淡路大震災が高速道路の交通に与えた影響およびそれに伴う経済的 損失,高速道路と自動車,第38巻第9号,pp.43-48,1995.

4) 田中真一郎・米川英雄:高速道路の交通量にみる震災復旧状況,阪神・淡路大震災土木計画学調 査研究論文集,pp.255-258,1997.

5) 山村清・米倉徹・石崎保信:阪神地域の交通状況の推移から見た被災と復旧の分析,阪神・淡路大 震災土木計画学調査研究論文集,pp.267-272,1997.

6) 国土交通省:東日本大震災(第 1 報~第 131 報),http://www.mlit.go.jp/saigai/saigai_110311.html

(2017.7.3 閲覧)

7) NEXCO東日本管理事業本部:平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震高速道路の被災状況と復

旧対応(スライド資料),2011.9.2.

8) 国土交通省東北地方整備局:東日本大震災関連情報,「くしの歯作戦について」,

http://www.thr.mlit.go.jp/Bumon/B00097/k00360/taiheiyouokijishinn/newindex.htm(2012.5.1 閲覧)

9) 国土交通省道路局:東北地方太平洋沖地震による道路交通への影響(地震発生後 3週間の状況)

http://www.mlit.go.jp/road/bosai/1103tohoku/three_week.pdf(2012.5.1 閲覧)

10) 国土交通省道路局:東北地方太平洋沖地震 道路復旧状況等について,2011.5.19 Am10:00現在.

11) 国土交通省:被災者支援及び復旧・復興支援のための東北地方の高速道路の無料開放について,

http://www.mlit.go.jp/common/000146806.pdf(2012.5.1 閲覧)

12) 藤島勝利:東日本大震災における高速道路の被災状況と復旧対応,第3回相互連関を考慮したラ イフライン減災対策に関するシンポジウム,(社)土木学会地震工学委員会,相互連関を考慮した ライフライン減災対策に関する研究小委員会,pp.54-58,2011.

13) 東日本高速道路(株) 管理事業統括課:東日本大震災による高速道路の被災状況と応急復旧概要,

道路,Vol.845,2011.

14) 気象庁:平成28年(2016年)熊本地震,

http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/2016_04_14_kumamoto/yoshin.pdf(2017.2.6 閲覧)

15) 内 閣 府 : 「 熊 本 県 熊 本 地 方 を 震 源 と す る 地 震 に 係 る 被 害 状 況 等 に つ い て 」 , http://www.bousai.go.jp/updates/h280414jishin/pdf/h280414jishin_37.pdf(2016.12.14 閲覧)

133

16) 国 土 交 通 省 : 平 成 28 年 (2016 年 ) 熊 本 地 震 に よ る 被 災 及 び 復 旧 状 況 に つ い て , http://www.mlit.go.jp/common/001129766.pdf(2017.2.10 閲覧)

17) 国土交通省:災害・防災状況,「熊本県熊本地方を震源とする地震について(第1報~第51報)」,

http://www.mlit.go.jp/saigai/saigai_160416.html(2016.12.14 閲覧)

18) NEXCO西日本:お知らせ・ニュースリリース一覧,「平成28年(2016年)熊本地震による高速

道 路 の 通 行 止 め ・ 災 害 状 況 等 に つ い て ( 第 1 報 ~ 第 13 報 ) 」 , http://corp.w-from_Year=2016&from_Month=03&to_Year=2016&to_Month=04&cate9=1&kyushu=1(2017.2.10 閲覧)

19) 能島暢呂:地震時における道路網の機能評価法の開発とその活用について-flow-independent /

dependentな各種の評価指標-,関西大学学術フロンティアセンター講演資料,10p.,2000.3.

20) 能島暢呂:高速道路網の地震被害による交通機能への影響評価,第2回都市直下型地震災害総合 シンポジウム論文集,文部省科学研究費補助金特定領域研究「都市直下型地震」総括班,pp.431-434,1997.

21) 能島暢呂・加藤宏紀:自動車交通量にみる高速道路機能の時空間的分析―東日本大震災と阪神・

淡路大震災の事例比較―,土木学会論文集A1,Vol.69,No.4,pp.121-133,2013.2.

22) 加藤宏紀・能島暢呂・佐藤多恵:2016年熊本地震における高速道路網の機能的被害・復旧の時空 間的分析,土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.74,No.4,地震工学論文集第37巻, pp.I_168-I_178,2018.

23) 国土交通省国土政策局国土情報課:国土数値情報ダウンロードサービス,「高速道路時系列(デ ータ時点:平成26年度)」,http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/gml_datalist.html(2016.7.12 閲覧)

24) 国土交通省八代河川国道事務所:南九州西回り自動車道 芦北出水道路 芦北IC~津奈木ICが開 通,http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/news/h27/20160120kisha.pdf(2016.8.25 閲覧)

25) 国土交通省九州地方整備局:東九州自動車道佐伯IC-蒲江IC開通のお知らせ~大分市と宮崎市が 高速道路でつながります!!,http://www.qsr.mlit.go.jp/saiki/press/h27-01-15/h27-01-15.pdf(2017.1 閲 覧)

26) 西日本高速道路株式会社:西日本高速道路株式会社 HP,東九州自動車道(豊前(ぶぜん)IC~

宇佐(うさ)IC間)が平成27年3月1日(日曜)に開通します―早期開通割引を期間限定で実 施―,2015.1,http://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/hq/h27/0121/(2016.11.21 閲覧)

27) NEXCO 西 日 本 : 東 九 州 自 動 車 道 つ い に , 北 九 州 市 ~ 宮 崎 市 が 直 結 ,http://www.w- nexco.co.jp/higashi_kyushu-expwy/(2017.2.3 閲覧)

28) NEXCO西日本:九州自動車道(熊本IC~嘉島JCT)の通行制限・通過所要時間及び大分自動車

(湯布院IC~日出JCT)の通行規制について,九州自動車道(熊本IC~嘉島JCT)の通行制限及

び 大 分 自 動 車 道 ( 湯 布 院 IC~ 日 出 JCT) の 通 行 規 制 に つ い て , http://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/kyushu/h28/0509a/(2017.2.9 閲覧)

29) NEXCO西日本:お知らせ・ニュースリリース一覧,「平成28年熊本地震による九州自動車道(益

城 熊 本 空 港 IC ~ 松 橋 IC 間 ) の 4 車 線 復 旧 に つ い て 」 , http://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/kyushu/h29/0425/(2018.1.9 閲覧)

30) NEXCO 西日本:東九州自動車道のストック効果,―熊本地震の救援活動や物流代替路として機

能―, 別 添 . ス ト ッ ク 効 果(1) 九 州 南 北 軸 の 物 流 を 支 援 ほ か , http://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/kyushu/h28/1108/(2017.2.9 閲覧)

134

31) NEXCO西日本:九州自動車道(益城熊本空港IC~松橋IC)の通行制限・通過所要時間について,

平成28(2016)年熊本地震による九州自動車道(嘉島JCT~松橋 IC間)の終日車線規制につい

て,http://corp.w- nexco.co.jp/corporate/release/kyushu/h28/1117/(2016.11.17閲覧)

32) NEXCO 西日本:高速道路定額乗り放題割引が観光復興を支援 ストック効果(3),http://corp.w-

nexco.co.jp/corporate/release/kyushu/h28/1108/pdfs/03.pdf(2017.2.9 閲覧)

135

5. 高速道路を対象とした地震時機能的フラジリティ関数の構築と震災間