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地震時の鉄道運休に関する確率・統計的分析

6. 鉄道の運休状況に関する分析と運休期間予測モデルの構築に向けた基礎的な検討

6.3. 地震時の鉄道運休に関する確率・統計的分析

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162

5.と同様の観点から,高震度領域におけるデータ不足に伴う分析結果の不安定さを回避するため ことを狙いとして,各地震の被災事例を統合した場合(全4地震と表記)を示す.図 6.10の結果に は各地震の特徴が混在しているため,参考値の扱いではあるが,近年の地震における全体的な運休の 傾向を表すベンチマークとしての意味を持たせている.

上記の検討結果を踏まえて,低震度領域における「運休なし」のデータを十分に考慮したCase1の 機能的フラジリティ関数を採用する.図 6.12は,各地震のCase 1の機能的フラジリティ関数を震災 間で比較したものである.概ね震度 3.5~4.0 付近で運休発生率が急激に増加している点が共通して いる.各事業者の運転規制基準と機能的フラジリティ関数との対応関係をみると,運転規制基準値よ りも低い震度で曲線が立ち上がる傾向が見られる.この理由として,(a) 路線内の一部の基準超過が 路線全体の運休波及すること(規制が路線単位の場合),(b) 津波警報の発令に伴う安全側の措置や エネルギー不足(停電および非電化区間での燃料不足),路線の相互接続によって運休になる場合が あること,などが挙げられる.

(a)はどの地震でも必ず起きていることである.(b)の影響が現れたのは,以下の被災事例である.

2011 年東北については,北海道や静岡県の沿岸部を中心として津波警戒のため実施されたことが影 響していると思われる.2018 年北海道については,停電に伴って鉄道の運行に必要な関連設備の利 用が困難だったため52)である.

図 6.12 運休発生率と震度との関係(シンボル:実測値,実線:ロジットモデル (Case 1),

実測値:2011年東北地方太平洋沖地震(▲),2016年熊本地震(*),2018年大阪府北部の地震(■),

2018年北海道胆振東部地震(◆),全4地震(+))

モデル:2011年東北地方太平洋沖地震(―),2016年熊本地震(―),2018年大阪府北部の地震(―),

2018年北海道胆振東部地震(―),全4地震(―))

obs:2011 Tohoku obs:2016 Kumamoto obs:2018 Osaka obs:2018 Hokkaido obs:All 4 earthquakes model:2011 Tohoku model:2016 Kumamoto model:2018 Osaka model:2018 Hokkaido model:All 4 earthquakes

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0

Suspension ratio

JMA seismic intensity

163

6.3.2. 鉄道と高速道路の機能的フラジリティ関数の比較1)

2018 年大阪府北部の地震においては,鉄道の運休に加えて,高速道路の通行止めもまた交通シス テムの混乱の一因となった.両システムの利用可能性に関する社会的な情報ニーズは非常に大きく,

都市交通システム全体の地震直後の状況を予測することや,両システムの特徴・傾向を明らかにする ことは重要である.そこで,鉄道と高速道路の機能的フラジリティ関数を比較する.

2011 年東北,2016 年熊本,2018 年大阪,2018年北海道における高速道路の被災事例を対象とし て,Case 1の機能的フラジリティ関数を図 6.13に青線で示す(図 6.6(b)~図 6.9(b)で示した鉄道の

Case1 の結果も緑線で併記).データ総数は,鉄道のほうが高速道路よりも多い.機能停止の有無に

ついては,「機能停止なし」よりも「機能停止あり」のほうが高震度側に分布する傾向は類似してい る.

機能的フラジリティ関数と規制基準値とを比較する.高速道路の分析対象の主体は2011年東北・

2018年北海道においてはNEXCO東日本管内,2016年熊本・2018年大阪においてはNEXCO西日 本管内であり,その規制基準値は5.2.2.で述べたようにそれぞれ計測震度4.5以上,震度4以上であ る.鉄道については,6.2.2.で述べた通りである.

機能停止確率が規制基準値の付近で急増する点は共通している.一方で,機能停止が出始める震 度,機能停止確率が50%となる震度,高速道路のほうが鉄道よりも最大で0.3~1.6程度高い.機能 停止確率が高くなるにつれて高速道路と鉄道の差は小さくなり,同100%となる震度は,ほぼ同じ である.

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(a) 2011年東北地方太平洋沖地震1) (b) 2016年熊本地震

(c) 2018年大阪府北部の地震 (d) 2018年北海道胆振東部地震

(e) 全4地震

図 6.13 鉄道と高速道路の機能停止確率と震度との関係

(青丸:高速道路の実測値(Case 1),緑丸:鉄道の実測値(Case 1),

青線:高速道路のロジットモデル(Case 1),緑線:鉄道のロジットモデル(Case 1))

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Suspension ratio

JMA seismic intensity Obs: highway

Obs: railway Model: highway Model: railway

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Suspension ratio

JMA seismic intensity Obs: highway

Obs: railway Model: highway Model: railway

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Suspension ratio

JMA seismic intensity Obs: highway

Obs: railway Model: highway Model: railway

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Suspension ratio

JMA seismic intensity

Obs: highway Obs: railway Model: highway Model: railway

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Suspension ratio

JMA seismic intensity Obs: highway Obs: railway Model: highway Model: railway

165

6.3.3. 運休期間に関する分析(第2段階)

予測モデル42), 43)の第2段階は,計測震度Iで機能停止という条件下での停止期間tを予測する条 件付復旧曲線を求めるものである.2011年東北の被災事例のうち,Case 1とCase 3を対象とした結 果を示す.まず図 6.11(b)に示した運休期間(表示外となっている80日以上のデータを含む)と計測 震度Iのデータに対して,供給系ライフラインを対象とした先行研究42)にならって,震度幅±0.2の ウィンドウを設け,その0.4の区間内での移動平均と移動標準偏差を算出して運休期間の傾向変動と ばらつきを求めたところ,図 6.14が得られた.

図 6.14(a)はCase 1に関して津波被災区間を除く全データを対象としたものである.運休日数の移 動平均は震度 5.0~6.0 の間で明確な増加傾向を示している.震度 3.0~4.5 においても数日間の運休 となっているのは,北海道の沿岸部と東北地方日本海側の運休の影響である.一方,震度5.0周辺で 極小値となっているのは,図 6.11(c)に示したように,首都圏の短時間の運休データが多く含まれる ためと考えられる.移動標準偏差は移動平均に匹敵する値もしくはそれ以上となっており,全体的に ばらつきは大きい.

図 6.14(b)はCase 3に関するものであり,図 6.11(c)に示す1日以内の運休データを除外し,2日以 上のデータのみを対象としている.このため移動平均値は図 6.14(a)よりも大きな値となっているが,

震度に対しては系統的な漸増傾向が見て取れる.ここでも移動標準偏差はほぼ移動平均に近い値を とることから,変動係数100%に近いばらつきとなっている.

いずれにしても被災事例の復旧データは大きくばらつくが,本章では,その不確定性をも定量化し てモデルに取り入れ,確率・統計的予測を行うことに主眼を置くものである.そこで,モーメント法 を適用して式(6.2)のように 2 つのパラメータ α(I),β(I)を求め,式(6.3)のガンマ分布の確率密度関数 に代入し,その累積分布である式(6.4)によって運休期間の非超過確率 F(t|I)を求め,これを条件付復 旧曲線とする.

) (

) ) (

( ) ,

( ) ) (

( 2

2

I I I

I I I

 

   

 

 (6.2)

)) ( ( ) (

) exp (

)

|

( ( )

1 ) (

I I

I t t

I t

f I

I



 



(6.3)

I d f I t

F( | )

0t ( | ) (6.4)

復旧曲線は上に凸の形状と S 字形状が混在する場合が多いが,累積確率分布によるモデル化にあ たっては,両形状を表現可能であるガンマ分布が有用であることの検討結果 55)が得られていること から,ここではその判断を踏襲してガンマ分布を採用した.

以上により得られたモデルについて,所与の震度に対して運休期間の非超過確率 10~90%のライ ンを求めたものを図 6.15に示す.運休1日以内の多数のデータを含めた図 6.15(a)よりも,それらを 除外した図 6.15(b)の方が,視覚的には図 6.11(b)の全体的な傾向を反映している.いずれにおいても 低震度で数日の運休期間になっている点や,移動平均および移動標準偏差の変動が大きい点などに ついては,改良の余地がある.

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(a) Case 1 (b) Case 3

図 6.14 所与の震度に対する運休期間の移動平均と移動標準偏差

(2011年東北地方太平洋沖地震)

(a) Case 1 (b) Case 3

図 6.15 運休期間の確率分布(ガンマ分布,2011年東北地方太平洋沖地震)

0 10 20 30 40 50 60 70 80

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Duration of suspension(in day)

JMA seismic intensity Moving average(obs)

Moving std.dev(obs)

0 10 20 30 40 50 60 70 80

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Duration of suspension(in day)

JMA seismic intensity Moving average(obs)

Moving std.dev(obs)

0 10 20 30 40 50 60 70 80

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Duration of suspension(in day)

JMA seismic intensity

Non exceedance 90%

Non exceedance 70%

Non exceedance 50%

Non exceedance 30%

Non exceedance 10%

0 10 20 30 40 50 60 70 80

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0

Duration of suspension(in day)

JMA seismic intensity

Non exceedance 90%

Non exceedance 70%

Non exceedance 50%

Non exceedance 30%

Non exceedance 10%

167

6.3.4. 運行可能率曲線の試算

式(6.1)と式(6.4),すなわち図 6.6(b)と図 6.15を組み合わせると,計測震度I,地震後経過期間tの 運行可能率曲線P(I, t)が得られる.

       

( , ) 1

P I t  p Ip I F t I(6.5)

図 6.16は,2011年東北のCase 1とCase 3を対象として,震度3.0~6.5まで0.5刻みで表示したも のである.任意の時間断面における運行可能率を示している.図 6.15のデータ変動のため,やや不 規則な傾向を示している.本章では,津波被災区間のみを除く全データを対象として分析したが,運 休要因としては,エネルギー不足(停電および非電化区間での燃料不足)やその他の影響要因(津波 警戒,乗客避難誘導方法,施設点検・復旧方法,路線の相互接続,路線としての運行判断,積雪など の自然要因)なども考えられる.

今後,対象路線を分割した上で,運休理由に応じて必要な説明変数を追加するとともに,図 6.14 をモデル化表現してデータ変動の影響を取り除き運休期間予測モデルの構築を進める方針である.

(a) Case 1 (b) Case 3

図 6.16 運行可能率曲線の試算結果(2011年東北地方太平洋沖地震)

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

Probability of service availability

Time after earthquake (in day) 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

Probability of service availability

Time after earthquake (in day) 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5

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