4.4. 分析結果
4.4.2. 結果とその解釈
本調査と分析から得られた結果は,図のように6つの島(事柄)へと構造化された.
得られた結果をもう一度確認すると,「社会の推進力は人々の声である」「目的を達成 するためには覚悟が必要である」「バイオマス政策は新たな農業のあり方を創造する」
「市場の開拓者の気持ちで挑む」「バイオマス政策は都市計画でもある」「市民全体で 共有して勉強しよう」である.これらの結果(シンボル)は,KJ 法を用いて下の階 層にあるラベルや表札から導出したものである.導出された結果を詳しく述べる.
これらの導出とその結果(シンボル)が述べている具体的な内容として,「島」ごと にバイオマス政策の課題とその解釈について順に述べる.
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4.4.2.1. 「社会の推進力は人々の声である」
「社会の推進力は人々の声である」というシンボルは,「地域貢献やバイオマス政策 の推進を考えている企業・団体に意識の高い人々の声が届けば,社会に一石を投じる ことが可能である」というラベル(表札)から導出した.このラベルの下層には同政 策の今後の進捗課題として堆肥由来野菜を扱う場所が限定されていること,小売店に 市民の購買意欲が十分に伝わっていないこと,企業や団体は地域貢献に対して意欲は あるが具体的な方法が不明瞭であることが含まれている.この課題に対して同シンボ ルは,市民の声と地域やバイオマス政策の推進に貢献したいという企業や団体を結ぶ ことがその解決策のひとつとなることを示している.
実際の調査からも,企業や団体が何らかの形で地域貢献や同政策の推進を行いたい と思っても,実際にどのような行動をとることが,それらにつながるのか具体的にわ からないということを聴くことが出来た.さらに,小売店や食料品店などに設置され ている顧客が直接記入する要望または改善提案書(所謂お客様カード)は,顧客の生 の声を直接企業に届ける重要なツールとして活用できることが分かった.例えば,お 客様カードを使用して市民の声として企業に環境に配慮した農作物をより購入したい という要望を出せば,企業側は何らかの回答をせねばならない.実際の店頭に当該商 品が並ぶかどうかという視点ではなく,こうした市民の声は,何らかの形で「地域貢 献」したいと考えていた企業等への行動のヒントへ繋がると考えられる.
4.4.2.2. 「目的を達成するためには覚悟が必要である」
「目的を達成するためには覚悟が必要である」というシンボルは,「事業化において 少しでも『安心・安全』を向上させるためには,さらなる情報公開と多少の経済負担 も許容することが大事である」というラベル(表札)から導出した.
このラベルの下層には同政策の今後の進捗課題として,堆肥に関する事業の安全性 の情報発信が重要であることを示している.同政策では堆肥由来野菜を購入者・使用 者に積極的に利用するためには堆肥の安全性を公表すること,それに関連して堆肥の 製造工程や使用過程を公開すること,それらに関する情報公開に関しての費用は積極 的に負担をしていくことが必要である.
調査からも「食の安全」は非常に重要であるという指摘を受けた.信頼を獲得する ためには,当然ながら堆肥の使用者やそれから生まれた商品を購入する顧客が何を望 んでいるのかということを念頭に置く必要がある.また,農家や市民の一部からは,
堆肥の品質に関して第三者機関からの品質保証表示があっても100%の信頼すること は難しいということ聞いた.そのために,同政策で推進される事業において「安心・
安全」の確固たる信頼を獲得するためには,関係がその中身についてしっかりとした 責任をもち,情報を積極的に公開していくことが必要である.
同事業は始まったばかりであり,堆肥がどのようにして作られているのか,また,
74 それを農地に使うことで生育に対してどのような効果があるのが十分に知られていな いこともあり,安全性に対しての知的欲求が生まれたと考えられる.なお,本調査期 間中である平成20年1 月30日に,中国産の冷凍ギョウザが原因と疑われる健康被害 が発生している(厚生労働省食品安全部 2008a)(厚生労働省食品安全部 2008b).
第三者機関からの安全表示に関して100%信頼できないというのも,毒物が購入され るおそれなどの不測の事態を考慮指定のことであると推察される.
4.4.2.3. 「バイオマス政策は新たな農業のあり方を創造する」
「バイオマス政策は新たな農業のあり方を創造する」というシンボルは,「関係各者 による連携で農業(循環型も含め)のソフト面・ハード面での指導・支援は重要であ り彼ら(農家)にも望まれている」というラベル(表札)から導出した.
本調査では多くの農家が抱える問題点として,現代農業に対して行き詰まり・閉塞 を感じており,それを打破したり支援したりする制度作りを望んでいることがわかっ た.この対策は農業問題全般にあたり本章を逸脱するが,加賀市のバイオマス政策に 関係する農家に限定すれば,厨芥由来堆肥を使用することで農作物に付加価値が生じ れば,循環型農業の推進に繋がる.
なお,化学肥料は対象となる農作物毎に必要な特定の栄養素が含まれているが,一 般的な堆肥は肥料よりも土壌改良材として用いられることが多い(小山雄生 1990).
谷(2013)は「どのような有機質資材(構成成分,生分解性,機能性)を,いつ(施 用時期),どのくらい(施用量),どのような方法(施用方法や混合深度)で土壌に投 入するかなどの因子に基づき,どのような機能や土壌改良効果を期待するのかを明確 にすることが必要である」と述べている.また,堆肥を使用するか使用しないかとい うことに関して,谷川ら(2006),「農家が化学肥料を利用して堆肥を利用しない第一の 理由は堆肥原料への不安,第二の理由は堆肥利用に伴う労力,第三の理由は堆肥利用 効果の不明瞭さである」と指摘している.さらに,堆肥を将来利用しようとする場合 には,農家は,家畜糞尿のように信頼できる原料から他の人が製造した堆肥を極力労 力をかけずに安価で利用したい意向を持っている」と指摘している.本調査からも谷 川らが指摘する内容は農家から聞くことが出来た.農家も高齢化が進んでおり,従来 のやり方を変えることへの不安や,労力をかけることが出来なくなっていることも背 景にあると思われる.そこで,同政策で堆肥を積極的に使用してもらうためには,農 地の各土壌や生産物に適した効果的な指導が必要であり,良い土壌,良い作物を農家 と適切な指導者と共に実施することが望まれる.さらに労力の補助として堆肥散布器
(スプレッダー等)を貸し出や助成などの支援も考えられる.これらを含めて関係各 所が連携しソフト,ハードとも充実させていく必要がある.
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4.4.2.4. 「市場の開拓者の気持ちで挑む」
「市場の開拓者の気持ちで挑む」というシンボルは,「事業での市場優位性を高める ために,エコ農法団体や新規流通経路の開拓の努力が必要である」というラベル(表 札)から導出した.
このラベルの下層には,バイオマス政策での農産物の課題として販路選択の難しさ を示している.堆肥由来農産物が購入されるには,購入者がその特徴を理解してその 商品価値に見合うだけの対価を支払ってもらう必要がある.また,市場の重要と供給 のバランスも重要である.本調査時点では,需要に対する供給量が不足していること が分かった.例えば,小売店に納入する場合には,短期的な取引では入荷または出荷 日時と数量を予め取り決めることが必要であり,長期的な取引では安定的な農産物の 供給ができることが前提となっている.堆肥由来農作物の生産者にはまだそれに十分 対応するだけの体力も十分ではないことも分かった.つまり,安定した供給先として スーパーマーケット等の小売店に出荷するためには堆肥を使用して生産される農作物 をより多く生産する農業従事者を確保することが必要である.スーパーマーケット以 外の農産物の供給先としては,直接販売や農業協同組合である JA を利用するケース がある.JA では自身の流通ルートを持っているために販売業務に自助努力は必要で はない.出荷に関してはJA の基準に適応させることが必要であり共同販売になるた めに堆肥由来農産物の独自性を商品に活かすことが難しくなると言う問題がある.そ こで,バイオマス政策で生産される農産物とその生産者は堆肥由来農産物という新し い商品を供給するために新規事業者という立場である.また,市場に対してのこれら の取り組みを十分に説明する必要があるし,農家自身も自助努力が必要であることが 明らかとなった.
4.4.2.5. 「バイオマス政策は都市計画でもある」
「市民全体で共有して勉強しよう」というシンボルは,「(バイオマス)政策の「見 えにくさ」,利益還元の困難さは,消費者や生産者も含めて市民全体で共有しあい勉強 していこう」というラベル(表札)から導出した.
このラベルの下層にはバイオマス政策の課題として,政策が地域に十分に周知され ていない点と政策の推進には消費者や生産者も政策を知るための努力が必要な点を指 摘している.
指摘した点と同様に本調査からもバイオマス政策は十分に周知されていないことが 分かった.調査対象である市民,団体,農家も政策名称である加賀市バイオマスタウ ン構想という名前は聞いたことがあるが,その具体的な内容までは正確には把握して いなかった.同政策は市民からの厨芥類の提供を受けて実施されているために政策を 進めるためには,市民に対して十分な広報活動が必要である.また,政策を分かりや すく説明するためにが「誰に」「どのような形で」「利益を還元していく」のか明示す