5.4. 知識構成システム論による地域再生システム論の分析
5.4.6. 地域再生システム論での議論(2011 年度)
2011年度のシステム論は2011年10月8日,22日,11月12日,12月3日で開講 された(山下ら 2012).加賀市バイオマスグループは,行政,事業者,NPO,農家,
114 市民,学生,講師の合計 13 名が参加しグループディスカッションを行った.途中で 市民の参加者が加入し全体の参加者数は18名で議論となった.2011年度のディスカ ッションのポイントは2点あり,1点目は昨年度議論をした加賀市バイオマスタウン での農地の活用とバイオエネルギーセンターの活用方法について,2 点目はそれに携 わる人材を如何にして育成していくのか,である.今回のディスカッションでは2つ のグループに分かれて,それぞれ人材育成グループと下水道グループに分かれた議論 が為された.議論ではそれぞれが別の場所に分かれて議論を行ったり,両者の進捗状 況について共有したりした.次に議論内容の共有の様子を示す.
図 44 バイオマスグループと下水道グループの議論成果の報告と共有
メインの議題はバイオマスであるが,最初に下水道グループについて簡単に説明す る.加賀市で展開しているバイオマスタウンでは下水道設備からの下水汚泥,屎尿・
浄化槽汚泥の一部はバイオマスタウンを公表する前からセメント等の原材料として使 われていた.下水道グループは,下水道の設備維持や管理費用は行政が負担しており,
ガス発電やメタン発酵などの設備を導入することで行政の負担の軽減とバイオマス資 源の循環を検討するグループである.講師には財団法人から下水等環境整備の専門家 が参加して,バイオマスグループとは別のグループで経済性などの試算を行っていた.
さて,バイオマスグループでは,バイオエネルギーセンターの立ち上げ構想があり,
施設の整備状況は整いつつある.そこで今後の加賀市バイオマスタウンを継続的な事 業として運営するためには何が必要なのか,といった点が議論の焦点になった.厨芥 類の収集と堆肥化を行っている事業者は,バイオマスタウンで事業を立ち上げてから 新入社員を8名雇用したということが伝えられた.さらに,農業者では,大規模農地 を稼働させることで,販売額が倍増したという.参加者のほとんどは継続的にシステ ム論の参加しており,また,加賀からの参加者は地域の実態をよく理解しており,こ
115 の地域再生システム論に参加することで多様なものの見方を学んできたという.また,
行政は,バイオマスタウンは市民,再資源化を行う事業者,農業者そして流通業者に よる「食」に関する資源循環が形成されており,住民と事業者をつなぐ信頼関係が構 築されているのではないかと,所感を示した.
そこで,加賀市のバイオマスタウンを持続的に進展させるためにはバイオエネルギ ーセンターが一つのキーポイントになり,そこには,バイオマスタウンを専従とする 専門的な人材が重要であるだろうという提案があり,事業者,農業者,行政を中心と して今回のGWの議題とした.コーディネーターとして,このような視点は,地域再 生システム論でも地域を活性化できる人材を育てることを目的としており,この4年 間で学んできたことを加賀市のバイオマスタウンにも活用することができないかと着 想した.そこで,どういう人材が必要なのか,どういう人材であれば加賀市でのバイ オマスの取り組みに持続性を持たすことができるのか,さらに進展させることができ るのか,といった視点で議論を深めていった.この議論の過程を,知識構成システム
論i-Systemで次のようにまとめた.
1. Intervention:地域資源の循環を推進するためには,どのような必要な人材が必 要であり,そしてどのように育成するのか?という問いを明らかにする.
その解決には,
2. Intelligence:アクターにはどのような基礎的素養が必要なのか 3. Involvement:アクターにはどのようなリーダー能力が必要なのか 4. Imagination:アクターには他にどのような能力が必要なのか を用いる.そして,
5. Integration:各結果を統合し,人材育成のスキームを構築する ことで結果を統合する.
1. Intervention:地域資源の循環を推進するための人材はどういった人材が 必要であり,どのように育成するのか
議論ではこれまでの加賀市での取り組みの経緯について再度,認識を共有した.
そして,昨年度は,加賀市バイオマス政策を具体的に進展させるためにバイオエネル ギーセンター構想を立ち上げた.この加賀市の取り組みを石川県や全国へと広げてい くことは加賀市の活動を再度,関係者自身で評価し,内省化することでもある.GW では,事業者から加賀市の取り組みを全国的に発信できないだろうか,と意見が出さ れた.そして,他地域に情報発信をするとともに,立ち上がったばかりのバイオエネ ルギーセンターを成功させるためにも新たな人物の必要性を主張している.今後の加 賀市での取り組みを持続したいという全国展開や他地域での展開を考慮した場合,ど の地域ごとの特徴や特性に対して柔軟に対応することが必要である.そういった状況
116 に対応できる人材を育成していくことが今後,重要になってくると考えられる.そこ で,加賀市で取り組んできた地域資源循環システムを構築して拡大するためには,必 要な人材の条件にはどういったものがあるのか,また,その人材をどのように育成す るのかを問題設定とする.
2. Intelligence:アクターにはどのような基礎的素養が必要なのか
まず,バイオエネルギーセンターで活躍できる人材を加賀アクターと便宜上,呼称 する.コーディネーターが参加者の意見をとりまとめると,その加賀アクターは地域 資源循環型生産システムに係わるすべての対象に関わる人物であると定義した.例え ば,バイオマス資源の排出者または提供者である市民や事業者/事業主体,そして,
資源の収集運搬に係わる人々,資源を資源化することに係わる人々,再資源化された 資源を利用/活用する農業者等生産に係わる人々,さらには生産物の流通に係わる 人々などがあげられる.
これら各アクターの共通するような「基礎的素養」としてどういったものがあるの か,または有しているのがよいのか,必要なのかといった問いに対しては,社会的観 点から,地域社会と個人の係わりを重視できる人物,自らの置かれている立場や役割 について学ぶことができる人物,それらに気づく点に人物素養があるとした.さらに,
物事を「自分ごと」として捉えることができること,次世代の将来展望を,自らの言 葉で語ることができることも重要な素養とした.例えば,今,何故,何のために地域 資源循環が必要なのか?といった問いや,地方自治(市町村)と市民の役割とは?社 会を支える「税」とは?に自らの言葉で答えることができる人物である.すぐには,
答えることができなくても,答えるために努力ができる人物である.
人としての社会的責任という観点から,自分の言葉で語り行動することは地域資源 の循環システムという各アクターが地域で存在して活動している状況において大切な 要素である.この,素養の研鑽には,多面的なディスカッション(意見交換)を用い て,各人の問題意識や気づきを促していくことが検討される.そうすることで,自分 の言葉で語り行動し,様々な人々と議論を交わすことが素養の研鑽に生きてくるはず である.
これらの素養を実際の議論では.企業の社会的責任であるCSRに対して,HSR(ヒ ューマン・ソーシャル・レスポンシビリティ)またはPSR(パーソン・ソーシャル・
レスポンシビリティ)とでも呼べるものであると捉えた.
3. Involvement:アクターにはどのようなリーダー能力が必要なのか 地域資源循環型生産システムを事業として執り行い,また,リーダーとしてまとめ るためには次の3点の能力が重要であるとした.ファシリテーター能力,マーケティ ング能力,プランニング能力である.
117 ファシリテーター能力は,事業全体を牽引し取り纏めていくリーダーとしての能力 のことを指す.さらに,その能力の下地には,プロデュース力(組み立て)・コーディ ネート力(誘導)・コミュニケーション力(調整)・マネジメント力(運営)が必要で あると議論した.マーケティング能力では,事業全体を,市場開拓し,成長・拡大さ せていく能力であり,ブランディング力やプロモート力とも呼ぶことが出来る.プラ ンニング能力は,事業のビジョン,戦略,戦術の立案力・企画力・表現力を持って,
事業全体の理念を提示し,具体的な方向性を描く能力のこととした.
さらに,基礎的素養とも関連して積極性と自己研鑽力が求められるとした.
4. Imagination:アクターには他にどのような能力が必要なのか
アクターの基礎的素養やリーダーとしての能力以外にも地域資源循環システムを構 築して拡大するには必要な能力があるはずである.その能力には.農業(地域資源循 環型農業)に対する知識・知見を学ぶこと,経験・体験することが重要である.加賀 市での「地域資源循環型農業」とは,豊穣な堆肥を用いて土壌(土)を健康にするこ とで,食物を健康にして,人を健康にする農業と定義する.そうすることで,土壌(土)
を健康にするための食品リサイクルという位置づけを行い,見過ごされていた廃棄物 を価値化することが肝要であるとしていく.そのため,地域資源循環システムとは,
地域資源循環型農業の構築の取り組みでもあるとする.
これと関連して,農業技術,生産と販売,廃棄物(生ごみ)リサイクル,各種法 制度等といった学際的な知識がいる.
5. Integration:各結果を統合し,人材育成のスキームを構築する
各能力を身につけるためには,知識・知見を座学でもって学び,実践(ワークプレ イス・グループワーク)を通じて,経験・体験して,実践力・実行力を修得していく ものとする.運営主体は客観的な立場で地域に関与できる大学間の連携組織を考える.
そして,各能力を 3 つのパート(Phase)に分けてそれぞれ,座学.ワークプレイス・
ラーニング,共創的グループワークとする.
Phase1 の座学では,実践的教養の獲得を目指す.地域循環型社会に必要な知識・
知見を主体的に学ぶ場とする.また,新市場・社会の構築への主導的人材として分野 横断的な知識獲得を目指す.ここでは,各アクター共通の基礎的素養,リーダーとし ての「能力」,知識・知見,経験,実践力・指導力等を身につける.
Phase2 のワークプレイス・ラーニングでは,座学での知見を基にして加賀地域で
実践を行うものとする.獲得した知識を実務で有用なものへと昇華する(知識を知恵 に変換)することを目指す.実地研修先としては,再資源化事業,農林漁業,行政研 修である.
Phase3 である共創的グループワークでは,関係者と連携して,地域全体で相互理