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地域バイオマス利活用に関する評価指針

6.4. 知識構成システム論を活用した地域評価

6.4.1. 地域バイオマス利活用に関する評価指針

これまでのバイオマスに関する研究では,技術的,工学的といったハードシステム アプローチが主流であった.いずれの研究でもバイオマスタウンやバイオマス・ニッ ポン総合戦略を推進させることの重要性は指摘しているものの,具体的な方策に関し ては言及されてこなかった.ここでは,加賀市の事例からバイオマス政策の進展やそ

143 れをマネジメントするための評価指針としての地域モデルの要素を提案する.加賀市 バイオマス政策で関係者と共に議論した内容に対して一貫した流れとして,どのよう な方策をもって厨芥類をより多く集めて,堆肥化し農家や農業団体に供給するのか,

というものであった.そして,農家は農作物を地域に供給すると共に政策関係者が共 に市民に事業をアピールして,事業の意義を伝えて,さらに,多くの厨芥類を供給し てもらうものである.そうした視点では,2008年度のバイオマス資源の好循環はバイ オマス資源の流れを促進させることを目指しており,2009年度は各アクターで本質的 に共有している問題として量と質を解決するための資源の流れに注目をしている.

2010年度は,アクターが連携して事業の付加価値を高める推進策を検討しており,こ こでは水産資源も含めた物質循環を考えた.2011年度の循環システムの構築と拡大に 関する人材も,事業を継続的にし,市民から排出される厨芥類を農作物という形で還 元する循環型事業であるといえる.本論文では,比較的うまくいっているバイオマス 政策の事例として加賀市としており,そこから得られた知見をもとにし,どのような 指針が考えられるのか考察をする.

政府はバイオマス政策を展開するために留意すべき点として,「地域住民,関係団体,

地域産業等の意見への配慮と,関係者が協力して安定的かつ適正なバイオマス利活用 を進めること」,「関係する法制度を遵守すること」,「.バイオマスの利活用において安 全が確保されている」としている.

そして,政府が示すバイオマス政策に対する指針として,1.地域の実情を把握す ること,2.事業の環境性を明らかにすること,3.効果的で経済合理な事業にするこ とと,4.実情に即した実在モデルを構築すること,5.政策に蓄積された知見を有効 に活用すること,を提示しており,これに準じたモデルを考える.

加賀市を例にとると本論文では,1.地域の実情を把握することに対しては3章,4 章,5章にて言及した.2.事業の環境性を明らかにすることに対しては5章の加賀市 バイオマスタウンに対する環境影響評価で明らかにした.3.効果的で経済合理な事 業にすること,に関しては事業者側から十分分析に耐えうる一次資料の収集が難しい ために明示できなかったが,事業者側は厨芥類収集に関しては市から委託を受けて継 続的な事業性が確保できている.行政も市営の廃棄物焼却施設を一機休止するなど経 済には好影響を与えている.4.実情に即した実在モデルを構築すること,に関して は本節にて言及する.5.政策に蓄積された知見を有効に活用すること,では大学と いう学術研究機関にて加賀市の関係者が集い,共に学ぶこと,実際にコーディネータ ーも参画して問題解決に当たることで当事者以外の知見も活用して政策の推進に寄与 した.

4.実情に即した実在モデルを構築すること,といった時の実在モデルとは,経済 産業省のバイオマスの報告書を参照すると実際に政策として機能しているバイオマス 政策に対する事業モデル,または,ビジネスモデルのことを指している.加賀市の実

144 在モデルとしての地域バイオマス利活用に関する事業モデルでは,地域再生システム 論を知識構成システム論にて分析することで明らかにした.例えば,バイオマス資源 の好循環モデルや,量と質に関するコンセプトモデル,六次産業化ビジネスモデルで ある.

そこで,地域モデルとして,物質循環,環境影響,推進体制の3点を分析指針の要 素として提案する.

一点目は,バイオマス資源の物質循環に関する要素である.加賀市の事例では,バ イオマス政策をバイオマスという資源をきっかけに地域内で資源の循環が起こってい た.これは,入力として市民が厨芥類を排出し,それを堆肥に変換するプロセス,変 換された堆肥が農作物の育成を促進させて,それを市場に供給するプロセス,市民が それを受け取り,厨芥を提供するプロセスである.厨芥類と堆肥の変換プロセスは,

入力の大きさに従い出力も増加する関係にある.堆肥と農作物の変換プロセス,市民 の農作物と厨芥の変換プロセスは直接的な変換ではなく,間接的な変換プロセスであ る.この二つのプロセスは,人と自然が介するために必ずしも入力の大きさと出力の 大きさは必ずしも一致しないが,入力がなければ出力は生まれない.

そうした点から,物質循環において重要な点は,バイオマス政策での資源の入力は 何であり,出力は何か,そしてバランスを阻害する要因はあるのか,という資源の収 集と供給に関する点である.加賀市の場合は,厨芥類がインプットされることで始ま る物質の循環モデルである.この時の入力資源はすべて農地にて還元され,入出力の バランスはとれている.また,物質循環のインプットでは,同時に事業性として,収 集コストと変換コスト,供給コストのバランスにも着目する.総務省の勧告では,物 質循環に関しては,特に家畜糞尿の堆肥は供給過多にあると指摘している.例えば,

石川県の県内最大の酪農・農業地帯でも家畜由来堆肥を製造しているが関係者へのヒ アリングでは十分な需要と供給バランスがとれているとは言い難い部分もあることが わかっている.

さらに,政府が示すバイオマス利活用に関して達成目標が示されており,域内に賦 存する廃棄物系バイオマスの90%以上,または,未利用バイオマスの40%以上の活用 を掲げている.これは一つの政策進展の判断指標であり,各地域のバイオマスタウン が掲げている利活用率と利活用目標を比較することで,進展に関するマイルストーン の設計に利用可能である.このときの注意点として,例えば,バイオマス由来の燃料 化に関しては,先行研究でも指摘されていたように,資源化作物と食用作物のバラン スを考えた事業計画が必要である.単に利活用率を向上させることを目的とし,人の 食用農産物をバイオ燃料の原料としてしまうと,農産物の価格上昇や食用農産物生産 から燃料向け農産物へのシフトを誘発したり,食糧資源と競合したりする恐れがある.

また,木質系バイオマスに注目すると,木材の輸送量や輸送距離が拡大されると資源 の多投や環境負荷の増大に繋がると指摘されている(嶋瀬ら 2006).このように,物

145 質の循環に注目し,資源が循環している場合でも,域外から資源の流入が多くあると 環境負荷に影響を与えている恐れがある.そこで次の要素を提案する.

二点目の要素として,環境影響である.地域で実施しているバイオマス政策でバイ オマス資源を利活用することの目標の一つは,循環型社会と低炭素社会の推進と化石 燃料への依存を低減することである.そのためにはバイオマス政策が環境に与える影 響を明らかにする必要があり,特に,地球環境に与える影響として温室効果ガスの排 出量を対象とする.温室効果ガスの排出量を明らかにするためには,バイオマス政策 で実施されている事業に関して定量化が可能であるかどうか,まずは知る必要がある.

その意味は,総務省がバイオマス政策に対する勧告では,ほとんどの自治体で決算や 利活用率等を把握していないと指摘されており,そもそも事業に関する実態が把握さ れておらず,環境負荷は定量化することはできない.その場合は,実際の事業でバイ オマスの利活用量,リサイクルに関する事業実態,利用されている燃料,電力,水や その他の資源,そして,リサイクルによって影響を受ける系を調査し明らかにする必 要がある.同時に,エネルギー効率に関しても定量化することが望ましい.これは,

バイオマス政策を通じた得られたバイオマス資源のリサイクルと製品化に関わるエネ ルギー効率を明示化できれば,代替される製品との性能を比較することが可能になり,

製品化された商品に関する重要な環境情報となる.例えば,低炭素社会化に向けては 社会インフラやライフスタイルをそれの目的に沿うように変化させると共に省エネ技 術の開発や推進の必要性が指摘されている(藤野ら 2007).さらに,低炭素社会に向 けてEUではバイオマス由来のエネルギーの導入だけでなくエネルギー効率も向上さ せることでそれらを目指す仕組み作りを行っている(田中 2007).バイオマス製品に おいても単に環境負荷量を明らかにするだけでなく,エネルギー効率も向上させるこ との重要性を認識することが重要である.

一方で,環境影響に関しては,環境アセスメントという考え方がある.これは,「人 間の行為が環境に及ぼす影響を予測し,それをできるだけ緩和するための社会的な手 段である」とされている(原科 2011).環境アセスメントでは,事業の立地といった 条件を考慮した分析であり,リスクに関するアセスメントを重要視する物である(松 野ら 1998).そのため,比較的大きな規模の事業であるダムや鉄道,高速道路などを 行う際に事前に環境に与える影響を調べることを目的に事前調査の意味合いで実施さ れることが多い.また,事前に環境に与える負荷(自然環境や生物多様性の観点)が 大きいと判断される場合は環境影響評価の環境アセスメントを実施せねばならず,本 事例(バイオマス政策)で地域自然環境へ大きな影響を与える恐れがある場合はすで に実施されており,事業化がなされているはずであり,この場合は事前に考慮されて いるとみることができる.

三点目の要素として推進体制がある.バイオマス政策に関して実在モデルを作るた めには,その組織と組織体制に着目した要素を考える必要がある.加賀市の事例では,