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知識構成システム論の統合プロセス

知識構成システム論の統合プロセスについて,どのようにして導出されたのか,

地域再生システム論における加賀バイオマスグループのグループワーク(GW)での 取り組みから2008年,2009年,2010年,2011年の事例を対象にして,順に述べる.

6.2.1. 2008年度の知識構成システム論の統合プロセス

最初に,2008年度の地域再生システム論に対する知識構成システム論での統合プロ セスについて述べる.また,グループワーク(GW)に参加する各アクターはSSMの 様に方法論に対する専門性は要求しないため,断りのない限り,知識構成システム論 での分析過程はコーディネーターが実施している.2008年度の地域再生システム論で の加賀バイオマスグループでの議論は,2007年度に加賀市バイオマスタウンが公表さ れて,今後も継続していきたい,という共通した思いがあった.しかし,それらは必 ずしも共有化されていない状態であった.さらに,今後の事業継続にはどうするのが いいのか,何をするのか,各参加者はそれぞれの分野において曖昧にイメージしてい る状態であった.そこで,コーディネーターを通じて,共通の目標としてそれぞれが 実施しているバイオマス事業を今後も継続的に展開するための資源の好循環を構築し ていくのをテーマに設定すればどうかと提案した.この共通目標の設定に反対意見は なく,了承された.

そこでまずは,自分自身を知ることを目的に SWOT 分析を実施した.それぞれの アクターに対するヒアリングとGWでの議論から強み,弱み,脅威,機会といった要 素を抽出して,コーディネーターが取り纏めた.このとき各アクターはそれぞれの分 野にて専門的な知識を持っているが,漠然とした状態であり顕在化されていなかった.

これは,潜在的な知識を顕在化するプロセスである.厨芥堆肥化事業のスキームでは,

共通目標を設定と,議論でのビジョンを明確化することを目的にコーディネーターが 3 章,4 章の研究から得た知見と,GW での議論の結果を基にして,形式知化した.

SWOT分析の結果を基にしたTOWS分析(クロスSWOT分析)の導出過程は,各ア クターの議論を通じて実行可能な事業推進案として意見や考えを組み合わせたもので ある.これは,専門的知識の組み合わせによる事業案を構築するという知識の統合で ある.このままでは,推進案を構築しても全体としてどのように事業を機能的にマネ ジメントするのか,といった指針を得ることはできない.そこで,知識構成システム 論の専門的知識の統合という特色を活用することで,顕在化した事業スキームに事業 改善案を統合することで,加賀市バイオマスタウンを効率的に運営するための事業ス キームを構築した.次に図示する.

133 図 54 2008年度の知識の統合プロセス

2008年度の知識構成システム論における統合プロセスは,最初は介入の次元にて,

共通の目標を設定した.その後,科学の次元にて各アクターが有している知識を顕在 化し,社会の次元にて事業スキームを形式知化した.そして,TOWSという分析手法 により各アクターの専門的知識を構築して,再び事業スキームに落とし込むことで統 合するというプロセスであった.また,知識構成システム論は社会実践論的立場とし て用いるために,Intervention を介入,行と表記する.Intelligence を集成,理とす る.Involvement は連携,縁と表記する.Imagination は想像,想と表記する.

Integration は統合,知と表記する.なお,このときの矢印上の番号は,統合プロセ

スの順番を示している.点線はそれぞれの次元間の関係性を示す.一見,繋がりが弱 いようであるが,相互の次元を参照したり,GWで議論を深めたりするプロセスは得 ている.

6.2.2. 2009年度の知識構成システム論の統合プロセス

2009年度では,トレードオフの関係にある量と質の問題に関する問題解決を扱った.

最初に介入の次元として,共通の目標の設定には,そもそもの進展を阻害している問 題は何かをGWで議論し,このプロセスの社会の次元で明らかとなった量と質の問題 を設定した.介入の次元で,科学の次元に対して事業者から本質的な問題は何かとい うことに関して提案が為されたように,実際にGWで議論を深めるためには,それぞ れのアクターの意見を抽出し,問題点の本質追究を得る点を要求した.そして,社会 の次元で,市民,市民団体,事業者,農家それぞれにヒアリングを行い,共通した問 題を明らかにした.これが,量と質というバイオマス進展に関するコンセプトモデル である.これを再度,共通した問題設定で解決すべき目標に据え置いた.GW では,

これをどのように解決するのか議論し,それぞれのアクターで実行可能な策を考えた.

それぞれの案には,事業者の量と質の解決には事業者と行政の組み合わせで,新規事 業の立ち上げの検討し,市民の量と質の解決に関しては,市民団体,NPO,事業者,

行政の組み合わせで,エコスクールの実施を検討し,農家の量と質の解決に関しては,

134 土作り部境界の実施を検討した.さらに,将来的にはアグロメディカルといった農産 物と予防医療という新しい取り組みの実施も検討した.それぞれはコーディネーター を交えて議論を行い,取り組みに関して詳細をつめて,2008年度に検討した事業スキ ームに統合する形で知識構成システム論の統合プロセスを実施した.これは,昨年度 と同様に,専門的知識の統合に関する事例を扱っており,さらに,各アクターに共通 する問題のコンセプトモデルを構築して,常に,問題の本質を念頭において,この解 決を目指した.各参加者は一度,専門的知識の統合プロセスを経験しているために合 意が得られやすいという特徴があった.

次に統合プロセスについて示す.2008年度と同様に専門的知識の統合プロセスと同 様の過程を得る.

図 55 2009年度の知識の統合プロセス

2009年度の知識構成システム論における統合プロセスは,最初は介入の次元にて,

共通の目標を設定した.その後,さらに介入の次元にて,事業の問題点を顕在化し,

科学の次元にてコンセプトモデルを描いた.また,社会の次元にて専門的知識の発見 と活用案を構築して,コンセプトモデルに落とし込むことで,統合プロセスを得た.

6.2.3. 2010年度の知識構成システム論の統合プロセス

2010年度の地域再生システム論では,これまでの取り組みを振り返り,各アクター の連携について見直しの議論を実施した.そのために,問題点を同定するために共通 の認識として連携が不足していたことを議論から明らかにした.そして,科学の次元 では,これまでの取り組みと農家側が一人歩きをしてしまった状況の説明を議論した.

主要なアクターとして市民,市民団体は厨芥類の収集に関して啓発活動や不純物が混 入しないような指導はできるが,それ以外の取り組みに関しては関与していないこと がわかった.事業者も同様に厨芥類の収集と堆肥化に関しては関与できるが,それ以 外の取り組みにまでは手が回らないということがわかった.農家はバイオマスタウン

135 としての連携というよりも,堆肥を使用して農産物を出荷するという事業が注目を集 めており,市場の要求に適切に応えたいという思いが強くあり,突出してしまってい ることが議論と聞き取りから明らかとなった.行政は,市民からの要望を聞いたり,

それに応えたり,意見を集めたりしている.バイオマス政策として事業者等に対して は厨芥由来堆肥の収集に関して業務委託をしている関係で法令に基づき行政指導の実 施は行えるが,個別のアクターに対して,その事業内容に影響を与えることはできな いこともわかった.

次に,コーディネーターが中心となり,ヒアリングと現地調査を交えて,各アクタ ーの取り組みや担うことのできる役割について社会の次元として表出化して,全員で 共通の認識を得るための議論をした.さらに,得られて結果を基にして,各アクター の連携体制について科学の次元に戻り,連携するためのコンセプトを描いた.想像の 次元では,各アクターに役割を与えて連携して多様化するための六次産業化を目指し たコンセプトモデルを描いた.このコンセプトモデルと各アクターの役割を統合して,

製品に付加価値を与えて,連携するバイオマス事業案をまとめた.

図 56 2010年度の知識の統合プロセス

2010年度の知識構成システム論における統合プロセスは,最初は介入の次元にて,

共通の目標を設定した.その後,科学の次元にて問題構造の同定を行った.そして,

社会の次元にてアクターの役割を探求し,想像の次元ではコンセプトモデルを描いた.

描かれたコンセプトモデルを社会の次元で得たアクターの役割と統合するというプロ セスにて事業スキームという結論を導出した.

6.2.4. 2011年度の知識構成システム論の統合プロセス

2011年度の地域再生システム論では,加賀市のバイオマスタウンを進めるための人 材をどのようにして育成するのか,に関して議論した.この問いは,事業者と行政側 から提案された問いである.GWではこれまでの加賀市のバイオマスタウンに関する