SRQ4 の加賀市が実施しているバイオマスタウンの進展のプロセスを通じて,知識 構成システム論の統合プロセスはどのように合理的に説明されるか,に対しては上記 で述べたように,年度ごとに統合プロセスを説明した.
理論的な含意として,特に2008年度,2009年度の統合事例からは,知識構成シス テム論での分析過程では各アクターの専門的知識の統合であったが,GW全体を通じ
138 ては,多様なアクター間の意見や考えを抽出し,合意形成を図る段階においては文化 横断的知識の統合プロセスの土台となるもの統合過程であった.
さらに,2009年度の量と質に関する問題を扱った事例では,専門的知識の統合の側 面を有しているが,土作り研究会とアグロメディカルは実際に運営し,効果を得てい くためには,外部の有識者や他分野の専門家の知見を活用するだけでなく,他分野の アクターも交えて議論を重ねていき学際的知識の統合への発展させることが必要にな る.本論文では,2009年度の事例に対して,実際にどのようにして学際的知識を統合 していくかに関しては言及していないが,知識構成システム論という一つのプロセス を通じて専門的知識の統合と学際的知識の統合に言及可能であり,問題が構造化され るに従い専門的知識の統合から学際的知識の統合へと複雑さの次元が上がることが明 らかとなった.この点は,専門的知識,学際的知識,文化横断的知識という扱う問題 の複雑さにのみ依存するのではなく,参加するアクターの多様性に依存するのである.
つまり,ある社会問題の解決を扱った場合,専門的知識を統合しても言及可能であり,
学際的知識や文化横断的知識の統合でも言及が可能であり,この場合,最適な解を求 めるのではなく,どれもが正解であり,最終的にはその結論に対して参加している主 体間にアコモデーションが可能かどうか,という点が重要になるといえる.
2010年度,2011年度の地域再生システム論は文化横断的知識の統合の側面を有す る.例えば,一次産業である農業と漁業は同じ一次産業に分類されるが,それぞれの 文化的側面が異なっており,知識通訳者やコーディネーターを通じないとコミュニケ ーション不全や意識が共有できない可能性がある.しかし,産業の状態としては高齢 化や担い手の不足など共通した問題があり,文脈を共有するテーマはある.そこで,
加賀市のバイオマスタウンという視点で見た場合,統合された結果を一つの共通する 文脈が生まれたとし,漁業者は収集事業者を介して農業者に廃棄水産資源を提供する 立場で関係性が生まれる.そうして,加賀市のバイオマスタウンの進展において,新 しい資源の循環とその利用が誕生するという点は,循環型社会の構築にも資する成果 の一つである.さらに,知識構成システム論は単に問題解決だけでなく,そのプロセ スを通じて相互の文化を理解や協力体制の構築にも貢献しており,相互に理解するこ とで合意形成を基礎ができ,文化横断的知識の統合へと至ると考えられる.こうした 相互理解の向上や異なる文化間のコミュニケーションを促進するという点は,文化横 断的知識の統合という知識構成システム論の統合プロセスを通じて得られる副次的な 効果であり,これまで言及されてこなかった.
他方,介入の次元は科学,社会,想像の次元に知識の収集を依頼する役割がある.
そのとき,科学,社会,想像といった次元の間では,知識構成システム論が示すよう に,それぞれが独立したサブシステムではなく,それぞれが繋がり関係性を有してい る.そして,知識や情報の授受をサブシステム間で行う.具体的にどのようにサブシ ステム間でやりとりが行われるのかといった点に関して示すことができた.文化横断
139 的知識の統合では,多数のアクターが関わっており,コーディネーターを通じた統合 ではあるが,合意形成を行うためには,可視化された事業スキームやコンセプトモデ ルといった点をもとにして,統合する際のベースとすることが実務的には有利である といえる.また,2010年度の地域再生システム論では,新しいアクターを既存事業に 組み込むためには,単にこれまでの事業の延長線上で議論を実施するよりも,新しい 仕組み作りとして本論文で示した六次産業化といった特に想像の次元と社会の次元で それぞれ相互参照が行われて統合のプロセスに進むことが重要であり,が実際の議論 では合意形成が促進されやすいことがわかった.これは,既存の事業に付加または総 合するのでは,政策に参加している事業者間での連携が十分に行われずに,2010年度 で示した失敗の概念図と同様になるためである.そのような視点でも,知識構成シス テム論では,各次元間での繋がりが重要であることを示している.
さらに,知識構成システム論の専門的知識の統合というプロセスにおいても,分析 対象が多様な背景,知識,経験などを有している集団やそれらが関わる政策といった 事業を扱う場合は,各次元での分析では文化横断的知識を扱う必要があることがわか った.
また,GWに参加する各アクターは,自分たちの事業や活動に関しては深い知識を 有しているが,バイオマスタウンの全体に対する認識としては曖昧なまま把握してい る状態であった.そこから知識構成システム論を通じて,潜在化している知識を方法 論の運用においてコーディネーターが形式知化することは,知識の構築と各アクター の役割や活動を表出化し,事業スキーム内での取り組みを明示的に示すことが可能に なる.これは,事業マネジメントの下地となる基礎的フレームワークの構築に資する 実務的な含意である.さらに,コンセプトモデルを示すことは,議論を可視化するも のであり,各アクターが暗黙的に捉えていた事業のビジュアル化というプロセスを得 て再認識するものである.そして,議論を進めるときに,どの部分の事柄に関して議 論をしていて,我々は何を知りたいのか,何を行うのかといった具体的な議論への発 展を促す.知識構成システム論は必ずしも SSM の含意として学習を目指す物ではな いが,知識構成システム論というプロセスを通じて,各アクターは自分たちの置かれ ている状況や目指す姿を捉え直し,学んでいるということがわかった.この学びに関 しては,2011年度の人材育成に現れている.各アクターたちが歩んできたバイオマス の進展過程や地域再生システム論という公開講座を通じた座学での学びと,グループ ワークでの学びを,次の世代や,他の人々にも伝えようとする積極性でもある.
一方で,文化横断的知識の統合には,コーディネーターの重要性が指摘されている.
SSMの様に,参加者に方法論の習熟を必ずしも求めない知識構成システム論では,シ ステムを運用するアクターとしてコーディネーターが参画しなければならない.また,
単にコーディネーターが場に介入するだけでは,知識の統合に至るわけではない.先 ほど,文脈を共有することが重要であると述べたが,どのような場がよいのかといっ
140 た点に関して,組織的知識創造のSECIモデルでは,知識の創造における良い場につ いて言及している.加賀バイオマスグループは多様な背景をもつ集団ではあるが,場 という概念は共通するものでありNonaka et al(2000)の“よい場”の条件と本論文の 関係を述べる.「1.独自の意図,目的,方向性,使命などをもった自己組織化された場 所であること」に対して,地域再生システム論という公開講座は前提として地域活性 化を目指しており,加賀バイオマスグループの使命・ミッションは加賀市バイオマス 政策を推進させることである.使命の達成には当然,各アクターのインセンティブが 発生し,参加者が自主的かつ主体的に参加しており,集団として自己組織化されてい ると捉えることが可能である.「2.参加者のコミットメントがあること」では,各アク ターは,それぞれに関わり合いを持っており,地域再生システム論という場に積極的 に参加しており,これを満たしている.「3.内部と外部からの二つの視点を同時にもた らすこと」では,参加者は多様な集団であり議論を交わし,協働しており,コーディ ネーターという外部の人間が参加しており両方の視点がもたらされているといえる.
さらに,人材育成では,これまでの自分たちの活動を客観視して,内省化に繋がって いた.「4.参加者が直接経験することができること」では,参加者のほとんどが自分た ちの事業や活動の中での感じていた疑問はグループワークを通じて共有したり,議題 として提案したりしていたが,直接経験できる場合もあるが,それぞれの事業に携わ るわけではなく,当てはまらないケースもある.「5.物事の本質に関する対話が行われ ること」では,本質とは何かというのは,問題点がどこにあるのかを議論することで もあり,コーディネーターを介して対話・議論が行われた.「6.境界が開かれている こと」では,市民や市民団体が参加したり講師が新しい話題を提供したりと境界は常 に開かれていた.「7.形式知を実践を通じて自己に体化することができること」では,
進展方策を各参加者や各アクターが実践することで,必然的に自分たち自身で体化が 可能である.「8.異種混合が行われること」は地域再生システム論の目的にも合致して おり,異業種間として行政,事業者,NPO など複数のステークホルダーが参加して おり条件を満たしている.「9.即興的な相互作用が行われること」は,少し難しくお互 いに訓練が必要な項目である.講師や知のコーディネーターがスキームを見せること や議論を牽引することも可能であるが,その意図を理解することが必要であり,かな らずしも即興的な相互作用は十分に為されているとはいえない.
このように,地域再生システム論での議論は,よい場に該当する項目も多くあり,
コーディネーターが介入することでよい場を促進することが可能であり,知識の創造 を促しているといえる.そして,多様な背景を持つアクターは議論を通じて,共通す る目標を設定することで,ある種の目的や目標を共有する組織的振る舞いをする利害 関係者の集団であるとみることができる.そうすると,SSMという手法で,それぞれ のアクターが手法に関して詳しい知見を有するかどうか,という問題は別として,バ イオマス政策の事例は分析が可能であるように思われる.しかし,2009年の市民,事