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地域再生システム論での議論(2008 年度)

5.4. 知識構成システム論による地域再生システム論の分析

5.4.3. 地域再生システム論での議論(2008 年度)

2008年度の地域再生システム論は2008年10月11日,25日,11月8日,22日の 隔週土曜日で開講された.受講者数は84名であり学外参加者は73名,学内参加者は 11名であった.2008年度の受講生は次の7グループにそれぞれ分かれてグループデ ィスカッションを行う.中山間地活性化グループ,温泉活性化グループ,バイオマス タウングループ,地域医療グループ,人材育成グループ,伝統産業グループ,留学生 グループである(北陸先端科学技術大学院大学 2009).この2008年度地域再生シス

87 テム論から知識構成システム論にて分析を行う.

まず,地域再生システム論の座学の様子を参考に示す.座学では,先端大学の大講 義室にて行われる.そして,午後からは,それぞれのグループに分かれて大学内の講 義室の一部を利用して,グループワークやグループディスカッションを行う.

図 26 北陸先端科学技術大学院大学における地域再生システム論2008年度の座学風景

(筆者撮影)

2008年度の地域再生システム論の加賀グループの参加者は,行政,事業者(収集事 業者,再資源化事業者),NPO,農家,九谷焼伝統工芸師,市民,学生,講師の合計 10名が集まった.なお講師は,地域再生システム論での座学を担当し,バイオマス政 策に明るい人物である.グループディスカッションの一コマを次に示す.

図 27 地域再生システム論2008年度のグループディスカッション風景(筆者撮影)

グループワークでは,最初に,講師が中心となり,昨年度までの地域再生システム 論での取り組みやこれまでの加賀市のバイオマスに関する取り組みに関して振り返り

88 が行われた.そして,今後のバイオマスタウンを進めていくためにはどうすればいい のか,それぞれの立場で考えを述べていった.また,途中で,講師から排出権取引に 関する話題提供があった.これは,バイオマス資源を活用して,温室効果ガスを削減 し,それを担保に CO2 排出権取引を活用して,加賀市のバイオマス政策の原資とし たらどうかというものである.参加者にとっては,やや話が飛躍しすぎているのでは ないかといった発言が為された.そこで,事業者から,まずは,加賀市のバイオマス タウンに関してもう一度振り返ることで,現状で何が問題となっているのかを共有す べきという発言が為された.

それぞれの立場からバイオマスタウンに関して次の指摘があった.収集事業者は,現 場レベルでの問題を指摘した.例えば,収集する厨芥類に不純物が混入しており,不 純物が混入していることで機械や設備の破損につながるだけでなく,堆肥を製造して 出荷する時も検査等で手間がかかる点を問題視している.農家側は,加賀市のバイオ マスタウンという取り組みに賛同して堆肥を納入し,政策に参加しているが,どうい った品質の堆肥を再資源化事業者がもってくるのか問題視している.さらに,行政側 はバイオマスタウンを公表して一年と半年がたち,各事業者や市民団体からも日常の 様子や問題点などを多く聞いており,事業を円滑に進めるにはどうすればよいのか課 題を抱えている.加賀市グループを観察していると,加賀市のバイオマスタウンの事 業主は加賀市行政であるが,実際にバイオマス資源の収集を行っているのは,業務委 託を受けた民間事業者である.さらに,市民団体の会員数は 2000 名弱であり加賀市 でも大きなグループではあるが自立心と,ボランタリー精神が強くあり,自分たちの 活動に自信を持っているようである.つまり,単なる市民活動だった活動が行政全体 の政策になったという自負のような市民団体は事業に対して協力はするが必ずしも何 らかの強制力を受けての活動をするものではないという思いを観察することができた.

グループディスカッションでは加賀市は事業を円滑に進めたい,事業者はより多くの 資源を収集したい,市民団体は厨芥類の収集を自分たちの手で継続して育てていきた い,というそれぞれが異なった思いを有していることがわかった.

そこで,加賀市バイオマスグループでの発言を基にして問題点を共有して,解決策 を検討するために,SWOT分析手法を提案した.なお,議論はホワイトボードを活用 して,それぞれの発言を書き留めるなどし,それとともに議事録を作成した.

89 図 28 グループディスカッションでの議論に使用したホワイトボード(筆者撮影)

次に,議論で現状のバイオマス政策の取り組みを一度,捉え直して,提案したSWOT 分析を有効に活用するためにも知識構成システム論である i-System を用いて 2007 年度の地域再生システム論での加賀バイオマスグループでの進展策の構築を試みる.

そのために,1. Intervention で問題設定と介入を行う.次に 2. Intelligence,3.

Involvement, 4. Imagination の 各 サ ブ シ ス テ ム で 分 析 を 行 う . 最 後 に ,5.

Integrationで結果の統合を行う.

問題設定として,

1. Intervention:どのようにしてバイオマス資源の好循環をつくっていくのか という問いを立てて,各サブシステムにて分析することでそれを明らかにする.

その解決には,

2. Intelligence:加賀市バイオマス政策の強み,弱み,機会,脅威を知る 3. Involvement:厨芥堆肥化事業の取り組みスキームを明確にする 4. Imagination:政策の強み,弱み,機会,脅威から対策案を考える を用いる.そして,

5. Integrationで,結果の統合を行う.

1. Intervention:どのようにしてバイオマス資源の好循環をつくっていくの か

2007 年に公表された加賀市バイオマス政策を今後もバイオマス資源のリサイクル とその活用を継続的に進めていく必要があり,これは関係者も望んでいる.そのため に,加賀バイオマスグループでのグループワークのテーマとして,どのようにしてバ イオマス資源の好循環を作っていくのか,または,構築していくのかを明らかにする ことをコーディネーターから提案を行い了承された.ここで表現する好循環とは,バ イオマス資源の入力と資源がバイオマス資源の変換後の出力に注目をしてバイオマス 利活用事業のスキームを運営していくこととした.そのため,科学の次元,社会の次

90 元,想像の次元にてシステム分析を行う.

3. Involvement:厨芥堆肥化事業の取り組みスキームを明確にする

ここでは,バイオマス資源の好循環を考えるために,加賀市での厨芥堆肥化事業の 取り組みスキームを明確にする.スキームを明確にして関係者と問題意識と共有する ことは事業改善案においても円滑な議論の発展に繋がると着想した.4 章でのスキー ムを基に参加者と話し合うことで厨芥堆肥化事業スキームとしてまとめた.

図29 厨芥堆肥化事業スキーム

厨芥堆肥化事業のスキームでは,行政は厨芥堆肥化事業に対して責任を持ち事業を 運営している.具体的には厨芥類の処理は厨芥類処理事業者へ 2007 年度に業務委託 を実施した.処理事業者は市民,学校・保育園及び飲食店等の排出事業者から厨芥類 の提供を受けている.この厨芥類は発酵処理が実施された後に堆肥が製造される.製 造された堆肥は農業団体へと販売される.農業団体は農作物を市場に出荷する.そし て,地域の小売店等に流通されて,加賀市民がそれらを購入する.市民に対しては,

市民団体が啓発活動を実施する.また,市民団体は,家庭用生ゴミ処理器の購入窓口 となっており市民が購入した容器の助成業務を担っている.

2. Intelligence:加賀市バイオマス政策の強み,弱み,機会,脅威を知る 加賀でのバイオマス政策にはどういった課題があるのか,という点をしるためには,

現状を正確に把握することが必要であると議論が為された.そこで,SWOT分析とい う手法を基に議論を行う.これは,対象の内的な要素として,強み:(S)strengths,弱

91 み:(W)weaknesses, 対象の外的な要素として機会:(O)opportunities,脅威:

(T)threatsの頭文字をとってSWOT分析と呼ばれる手法である(Pickton et al 1998)

(表3).

SWOT 分析は周囲の状況や置かれている立場という意味での環境分析という面や 自分たちの状況や周囲の状況を簡便に知るためのフレームワーク,マーケティング,

意思決定支援という様々な事業分析などに役立てられている(Novicevic 2004).

表3 SWOT分析

各項目について加賀バイオマスグループでの議論から抽出して結果として次にまと める(表4).

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表4 SWOT分析結果

要点を次に述べる.バイオマス政策での「強み」では,<環境>においては事業に よる効果的な側面と市民主体の活動がある点などがある.「強み」<産業>では今後の 事業の発展的な展開が強みである.

反対に「弱み」では,<環境>では地産地消を考えたときに県外出荷をしてしまう ことは地域の繋がりが弱くなってしまうことがある.「弱み」<産業>では農産物のブ ランド化を考えているが事業との繋がりなど十分に議論が為されていない点がある.

「機会」では,<環境>では地域再生システム論への期待と関係者が集い話し合う ことで事業を推進していきたいという思いがある,「機会」<産業>では,地産地消に よる食の安全やバイオマス政策を一つの契機にしていきたいという点が指摘された.

「脅威」では,<環境>では,厨芥類への堆肥不適物の混入のおそれが指摘された.