本研究では,MRQ(メジャーリサーチクエスチョン)の加賀市バイオマスタウン構 想を対象にしたバイオマスタウンを進展させる要因とはなにか,に答えるためにSRQ
(サブシディアリークエスチョン)それぞれに解答する.
7.1.1. SRQ1 加賀市が公表したバイオマスタウンはどういった政策
であるのか,また,その政策の実態はどういったものであるのか この問いに対しては,加賀市のバイオマスタウンは,地域のバイオマスを有効に活 用し,地域振興と循環型の社会を目指す政策であるが,実態は,市民団体の活動はき っかけとなり市民団体と市民が中心となって進められているバイオマス資源の循環政 策であり,食のリサイクルループを形成している.加賀市の実態調査では,いくつか の事業を計画しているが,実際は,厨芥堆肥化事業のみである.一部の事業者がバイ オエタノールやバイオディーゼルの実証実験を行っているが,全市的な事業とはなっ ていない.また,市民団体が無償で事業に協力し,市民団体が中心となり市民向けに も説明会を開催するなど広報活動と啓発活動の一部を担っており,さらに,ボランテ ィアの参加により収集に関わる費用を大きく圧縮していることがわかった.
7.1.2. SRQ2 加賀市が実施しているバイオマスタウンにはどういっ
た問題または課題があるのか
この問いに対しては,加賀市が実施しているバイオマスタウンには,バイオマス資 源とその循環に対して「量」と「質」の問題があることが明らかとなった.4 章のバ イオマスタウンを構造化では「社会の推進力は人々の声である」「目的を達成するため には覚悟が必要である」「バイオマス政策は新たな農業のあり方を創造する」「市場の 開拓者の気持ちで挑む」「バイオマス政策は都市計画でもある」「市民全体で共有して 勉強しよう」という結果を導出した.これは,バイオマスタウンという政策が有する 構造である.しかし,5 章で,4 年間にわたる実践的な研究では加賀市バイオマスタ ウン構想の進展の障害になっている問題は「量」と「質」に関する点であることが分 かった.多くのバイオマス資源を集めるためには市民の協力が不可欠である.そのた めには,バイオマスタウン政策での成果物である農作物を供給して市民にバイオマス 資源の循環を周知し,厨芥類という廃棄物の循環を実際に体験することが大切である.
よりよい農作物を安定的に供給するには,農家が使用する高品質な厨芥由来堆肥を積 極的に使用することが求められる.厨芥由来堆肥を安定的に供給するためには収集事
154 業者が多くの原材料となる厨芥類を収集せねばならないこのように加賀市のバイオマ スタウンでの本質的な問題点は量と質に集約することができる.
7.1.3. SRQ3 加賀市が実践しているバイオマスタウンの事業では進
展に向けてどのような取り組みをしているのか.
バイオマスタウンの公表後は一気に厨芥類の収集量は増加した.たくさんの量を市 民から集めることができれば,先行研究で示している広く薄く分布しているバイオマ スの収集に関する課題を解決することができる.しかし,実際には,不純物の混入や 厨芥の水分が多いなどの新たな問題が生じた.事業者を中心に行政も協力をしてバイ オマスタウンへの啓発活動や農作物のブランド化を図ることで,こうした問題に対応 し,さらには,食品のリサイクルループの拡大を目指してコンビニやスーパーなどか らも厨芥類の仕入れをするなどし,リスクの分散と多元化を図っている.そして,農 業団体は株式会社化し,広大な農地で,自社内でなるべく多くの堆肥を使用できる体 制作りを行っていることがわかった.
さらに,加賀市のバイオマスタウンでは,進展に向けてバイオマス資源のリサイク ルループまたは食品のリサイクルループの構築とそのループに利害関係者を積極的に 巻き込んでいった.2007 年度に公表されたバイオマスタウンを進展させるために 2008年度はバイオマス資源のよりよい循環を目指して,広報や加賀地域の温泉観光行 や伝統工芸と連携する対策を構築した.2009年度は市民,市民団体,事業者,農家の それぞれの内容は異なるが,同形性のある問題が量と質にあることを明らかにし,そ れを可決するために,エコスクール事業,土作り研究会,新規事業の立ち上げ,医療 と農業の連携事業を計画した.2010年度は各アクターの連携に向けた取り組みと加工 業として六次産業化を目指すコンセプトを構築した,2011年度は今後の加賀市バイオ マスタウンを将来にわたり継続するための人材の素養とそれをどのように育てるのか 計画した.
7.1.4. SRQ4 加賀市が実施しているバイオマスタウンの進展のプロ セスを通じて,知識構成システム論の統合プロセスはどのように合理 的に説明されるか,
この問いに対しては,各年度の地域再生システム論を対象にそのプロセスを示した.
知識構成システム論では統合プロセスやシステムの運用に関して細かい点は言及して いない.これは,対象とする問題により実行されるプロセスがそれぞれ異なるためで あり,システムがそもそも個別の問題の解決を目指したものではなく,問題構造の同 形性に注目しているためである.しかし,本論文ではこれまで言及されてこなかった このプロセスを統合に至る過程を説明することで研究の含意を得た.多様なアクター 間が関わる問題に対しては,いずれのシステム分析も最初に共通の目標を設定するた
155 めの介入の次元から入る.この介入の次元は何について話し合うのか,何を解決した いのか,また,我々はどういった問題を抱えているのか,という点に関して議論し,
合意を図り,介入の次元を同定する.そうすることで,問題解決を要求する他のサブ システムに対してグループで議論や問題を解ける形に構造化するのである.問題設定 において問いを具体化せねば,他のサブシステムに明確な知識の収集を要求すること ができない.その意味において,一番重要な次元であるといえる.良い問いは良い答 えを生むために,ここでは知識構成システム論の連続再構成モデルの側面にて介入の 次元を同定するために何度か知識構成システム論を実行する必要がある.この時の分 析には,サブシステムすべてに対して実施する必要はなく,問題設定を得られればそ こで最初の介入の次元に戻ればよい.そして,分析してみても,またうまくいかない 場合がある.そのときはまた,システムを回すのである.この問題設定は,ソフトシ ステムズ方法論の根底定義に近い概念である.根底定義とは異なるのは,根底定義は 問題を解くために他のシステムに要求しない点がある.また,特に,ハードシステム 的に線形的なアプローチができないような社会問題や多様なアクターが関わる問題は 非構造化された問題であり,問題の同定には各アクターとの議論や問題構造に対する 深い洞察や認識が必要である.介入の次元が同定されれば,サブシステムに知識の収 集に関して要求し,科学,社会,想像というサブシステムにて問題の分析と解決を行 う.それぞれのサブシステムはリンクされており相互に知識や情報の流れがあり,ど の次元から初めても問題はない.さらに,サブシステムで問題解決ができない場合は,
一度,介入の次元に戻るべきである.これは,研究を進めると,今まで発見できなか った問題や要点が明らかとなり,問題構造の同定の次元が上がるためであり,より具 体的な言葉でシステムを表現することができるためである.各次元の結果を統合する プロセスに関しては,コーディネーターが実施するが,グループで議論する場合にお いては各参加者からの合意を得る必要がある.システムには通信と制御のプロセスが あり,統合プロセスからは科学的な妥当性とともに問題解決が文化的に実行可能かど うかという,外部の状況に依存する.グループでの問題解決では科学的な裏付けのあ る問題解決結果,または,そのための方策と認識できる.どのように合意やアコモデ ーションを得るのかという点に関してはソフトシステムズ方法論の概念モデルを描い たりし,意識の共有を図ることができる.そうした点から,合理的な統合プロセスを 得るにはコーディネーターの持つ人間としての統合システムに依存する部分があり,
知識構成システム論は参加型のシステム論である.
7.1.5. MRQ バイオマスタウンを進展させる要因とは何か
この問い対しては,バイオマスタウンの進展には,それぞれのアクターは異なること に言及しているが共通したバイオマス資源の「量」と「質」に関する問題として物質 循環という要因があり,これを解決することが政策を進展させるために必要である.