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バイオマスタウンの公表に向けた評価

2.3. バイオマス政策に関する研究

2.3.1. バイオマスタウンの公表に向けた評価

22 総務省の勧告の実施では,各省庁に対して対策を講じて是正ずることを求めている.

こうした点からも国の政策がうまく進んでいないことが分かる.こうした状況にある ため,バイオマス・ニッポン総合戦略を実現する上での各地域での取り組みであるバ イオマス政策の実在モデルが存在していないと指摘している.

23 体・関係事業者・NPO・地域の有識者などの幅広い関係者も参加することができる.

多様な参加者が知恵と創意工夫を出し,総合的かつ効率的で,実現性の高い,みんな に喜ばれるバイオマスタウン構想計画を策定すべきであると述べている(今井 2010).

そのためには,今井(2010)は構想の作成には特にバイオマスの賦存量や利活用量な どを十全に把握することがまずは必要であると述べている.例えば,バイオマスの公 表に際してバイオマスタウンの事業性を検討するものとし Bespyatko ら(2009)の 研究や井上ら(2009)の研究がある.井上ら(2009)の研究では,二渡ら(2009)

も指摘しているように,多数のバイオマスタウンが公表されているが,実際にはバイ オマスを利活用して事業化されている事例が少ないと指摘しており,バイオマスタウ ンのモデルといえる事業もないと述べている.そのため,これからバイオマスタウン の公表の検討をしている自治体を対象に構想を具体的な事業とすべく事前検討ツール として特に経済性に注力をしたシステム開発を実施している.同様に.バイオマスの 賦存量や利活用量を事前に把握したり評価したりするためのモデル研究も為されてい る(柚山 2004).

バイオマス利活用に関する評価モデルとして,農林水産省のバイオリサイクル研究

「システム化サブチーム」が 2006 年に開発したバイオマス循環利用診断というもの がある(農林水産バイオリサイクル研究「システム化サブチーム」, 2005).これは各 地域でバイオマス資源を循環して利用するバイオマス計画の策定を行うために利用さ れること目的として開発されている(農林水産技術会議事務局 2008).バイオマス資 源が賦存する量やそれらを処理するためのマテリアルフローを推計するモデルであり,

これから地域でバイオマスタウンの計画立案をする際の賦存量,仕向量,変換割合,

利活用率を知ることが出来るソフトウェアツールである.この評価モデルでの推計値 の算出には既存の統計データを基にしてバイオマス資源の賦存量,発生量,資源の移 動量を算出している.しかし,既存の統計データには正確性の問題点もあり実際に使 用するためには地域固有のデータを追加調査し,専門家による物資フローの評価が必 要であるとしている(柚山 2005).このバイオマス循環利用診断モデルは「農林業物 質循環モデル」という名称に改められて引き続き開発が進められている(柚山ら 2010).

バイオマス循環利用診断モデルがどこのバイオマスタウンで利用されているかに関 しては先行研究から得ることができなかったが,奈良市大和川流域内における窒素フ ローを推計する事例研究がある(松野ら 2006).この研究では同モデルの活用と実際 にモニタリングを行うことで窒素負荷を推計し,その対策について言及している.農 業で田畑に肥料をまくことは作物の生育に大きく貢献をしているが,同時に過剰な栄 養素が土壌や地下水脈等に流出して環境に負荷を与えることが知られており,河川流 域の窒素含有量のモニタリング結果とモデルの推計値を比較では,4月から9月にか けて推定値と実測値が乖離しており,原因として実測値のサンプリング数が少ない点

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(月 1 回),統計情報利用時の係数など算出過程に問題があるとしている.窒素の流 入の原因として,域内の公共流域下水道設備が導入されていない家庭(流域人工の

12%)からの負荷量が全窒素負荷量の78%を占めており,その対策として生活排水の

処理施設の変更,河川水の非灌漑期での水田への導入(窒素の吸着),厨芥類(生ゴミ)

の堆肥化施設の導入といったことで窒素負荷削減を行えると述べている.このように,

モデルを適切に活用することでバイオマスに関する政策等での施設を建設することで の事前の環境影響表へと発展的に用いることも可能であることが分かる.

しかし,このバイオマス循環利用診断モデルに対して様々な地域の状況には対応で きずにモデルとしては不十分であると指摘されている(森本ら 2009a, 2009b).問題 点として,(1)バイオマス資源の物質循環に関する情報のみである点,(2)バイオマ ス資源の活用先として堆肥化・メタン発酵以外の利活用方法がない点に言及している.

そこで,新しく地域のバイオマスを把握するための評価モデルとして,バイオマス資 源の物質循環(マテリアルフロー)に加えて,経済性・エネルギー・温室効果ガスの 要素を含めた評価モデルを提案している.同評価モデルは単一地域の状態を定量的に 分析するのではなく,複数の地域に対して定量分析を行うことで複数のバイオマスタ ウン全体の傾向を明らかにしている.研究では,バイオマス政策を公表している 38 市町村を対象として公開されているバイオマスタウン構想公表書内のデータを基に分 析している.そして,それぞれ,資源が有効に活用されているかの指標としてのバイ オマス資源の炭素利用率,資源の廃棄量,経済収支,CO2排出削減量,化石燃料消費 量の観点から分析したところ,38 地域中,28 の地域で経済性は赤字となり,炭素利 用率は増加傾向としてバイオマス資源が多く消費またはリサイクルされるとしている.

しかし,林地残材を有効に活用することで経済性を向上させることが出来るとしてい る.CO2に関しても排出量は増加するが,全体としてバイオスの利活用により抑制す る方向へ働く点も見られるとしている.この結果から,バイオマスタウンを進める上 での各地域の目的は,バイオマス利用率を上げていくことではあるが,単に利用率を 上げるだけに注目をすると,同評価モデルの他の要素が悪化する場合もあり,それを 回避するためにはバイオマスタウンの公表や実施計画には,経営的観点,エネルギー の利用,温室効果ガスに留意すべきと指摘している.なお,この分析では各バイオマ スタウンの地域名称はマスキングされており,その優劣は判断できない.

さらに森本ら(2011)は,公表されているバイオマスタウンの経営の効率性に着目 をして,物質循環の効率,温暖化防止効率,経済効率の3点を分析している.この研 究で分析に使用しているデータは各地域で公開されているバイオマスタウンによる.

この研究では,分析対象としたバイオマスタウンの傾向として,全国のバイオマス政 策は全般的に物質循環の効率性だけにこだわって実施または計画されていることを明 らかにし,政策の運営には温暖化防止効果や事業収益に関する視点も加えるべきであ り,そのためにはバイオマス資源から堆肥等のマテリアルを生産するだけでなく,メ

25 タン発酵等による熱や電力のエネルギー生産へ移行することで温暖化防止と事業収益 向上につながると述べている.さらに,事業規模の効率性に注目をすると,規模を縮 小することでより効率的な運営が望める可能性があることと指摘している.この点を 補足すると,市町村の合併により人口が増加し,森林資源や畜産資源等で利用可能な 土地の面積も拡大しているために賦存するバイオマス資源量は単純に増加している.

そこで,利活用目標を 100%に近づけることを目的とした構想では,合併によりさら に広く・薄く分布(土地あたりのバイオマス分布密度)している資源をより効率よく 収集する必要がある.ほとんどの自治体では事業の効率性を考えた規模の大きいバイ オマス資源の活用施設の建設を検討や実施をしており,収集コストの増大などで経営 を圧迫している要因である.そのために,域内での合併以前のコミュニティーレベル に着目して,それらで運営が可能な小規模施設を複数利用することで効率性は増大可 能であるという指摘である.